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短編の缶詰

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【1話完結型】短いおはなしを詰め込んでいます。
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記事一覧

自らの心を覗く万華鏡

 小さな駅に降り立つ。  二両編成の列車は去り、プラットホームにはひとり。  さあ、どこへ…

弓月雪夜
3年前
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覚めない夜のオルゴール

 小さな駅に降り立つ。  二両編成の列車は去り、プラットホームにはひとり。  さあ、どこへ…

弓月雪夜
3年前
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あおの音信

 今もどこにいるかはわからない。  声を聴いたもの、思いを馳せたもの、数多くいた。けれど…

弓月雪夜
3年前
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鉱石の翼を持つ子

矩形の湖のほとりに 枯れない薔薇が咲いていると云う。 砂嵐のようなめぐりあいのあとに のこ…

弓月雪夜
3年前
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月に曼珠沙華

 そして今、わたしはあなたの前にいる。  わたしはあなたほど切実ではなかった。  あなた…

弓月雪夜
3年前
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青藍、君を覚ゆ

 あまり長居はできない。  いつもそう言い聞かせて、病院の自動扉をくぐる。  千沙は花が…

弓月雪夜
2年前
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アメイジング・クッキング

 物語はここから始まる。  どこからか?  それは私が気まぐれに振り絞った勇気から始まる。  最近知った喫茶店で、私は今日もその画面を眺めていた。  壁の高い位置に掛かっている液晶テレビ。映っているのは、パステルカラーの食器棚や鍋、スプーンのたぐい。カメラはよどみなく人の手元を追っている。  その指先は料理をしていた。今日はどうやらお菓子を作っているようだ。このまえ来たときはドリアを焼いていたのだが。  私が食い入るように画面を見つめている間に、ふわりと香りを漂わせて紅茶が

出口のない箱庭

Side out  それは美しく完成された世界だった。すべてが調和した、本物のような偽物。ここに…

弓月雪夜
2年前
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六月六日

 古い絵描き歌をくちずさむ。おぼろな記憶をたぐるように、窓ガラスに直線と曲線をえがいてい…

弓月雪夜
1年前
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春の雷 ーはるのらいー

 無窮の闇を旅している。  何光年、あてどなくめぐり、通り過ぎた。彼方に自分と同じ小惑星…

弓月雪夜
7か月前
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