2022文披31題 ~よみきり~
とある日、どこかの、だれかの夏
Day1「黄昏」
空気さえも紅かった。
ひろがる空は薄青と朱色のグラデーション。まだ熱気を残している道を歩く。
沈みゆく太陽が、さよならを告げるために雲を黄金色に輝かせた。
燃えるような夕陽、影絵のような大樹。
ひきのばされた、まどろみに似たひととき。
やがてそれは、歌人がたたえた夜へと至る。
Day2「金魚」
水のなかを、ひらり、ひらり。金、銀、赤、黒、かろやかに。
風が吹きぬける縁側、青くふちどられたまるいガラスの世界は、それだけで