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【読書】言いにくいことが言えるようになる伝え方
言いたいことがあるけれどぐっと飲み込んだり、あるいは感情的に伝えてしまって相手と衝突してしまったりという経験は誰しもあると思います。
自分の思いを伝えるというのは難しいものですが、アサーションはその解決に一役かってくれるコミュニケーションスキルです。本書はこの分野の第一人者、平木さんによるアサーションの解説書です。平木さんの多数ある書籍の中でも、初学者が手に取りやすい、入門書のような仕立てになっていると思います。
平木さんは、本書の中で繰り返し、自身の意見を伝えようとすることと同時に、「相手が伝えたいことも大切にして理解しようとする」ことが大事だと伝えています。
「どうすれば相手に自分の意見を受け入れてもらえるか?」ばかりで頭がいっぱいだと、相手と分かり合えないと言うのです。
実際、アサーション学んだとしても、「相手に賛成してもらえない」、「反発される」ということは起きます。否定的な反応を返されたときに、「相手は自分に何を伝えようとしているのだろう」と受け止める。そして、やりとりを重ねて双方の共通の意味を探っていく。そんな心構えが本質的に必要であると説きます。
お互いが違う視点を出し、相手の意見がどこから来ているか、背景を理解することは意味があることだと思います。しかし、実際にやるのは非常に難しいものです。
たいてい、(意見が異なっているという)場の居心地の悪さから、なるべく早く話を終わらせようとしてしまいます。ぐっと踏みとどまり、双方の理解を深めるような対話がなされることは稀です。
私自身も、自身と異なる意見や価値観の人に対して、言いたいことを我慢してしまう傾向がありますし、逆にためこんでしまって、急に攻撃的に主張してしまうということがあります。
つい、価値観が似ていて理解し合える人と付き合ってしまいがちで、考えが合わない人とは、距離をとってしまいがちです。
もしも、どのような人に対しても普段から遠慮せずに、そして、いい意味で迎合せずに自分の考えを率直に言えるようになると、関係性もより豊かになるだろうなと思います。
職場においても、最近はハラスメントや若手の離職を気にして自分の意見を率直に伝えることをためらうことが増えたと聞きます。
本音は胸に秘めながら、「しょうがない」と自身を納得させて受け流したり、無理に相手に合わせている人も少なくないのではないでしょうか。
本書を読んで改めて思ったのは、そもそも、人間関係の構築には時間がかかり、めんどくさいものだということです。葛藤や対立を経験することなしに、きれいに他者と相互理解が進み、信頼関係を築くことは現実的ではないのではないでしょうか。
様々なテクノロジーも発展し、スピードと効率が上がる便利さの中で、不快を避けながら、心地よく人間関係を築いていこうとする心理が私たちの中で強くなっている気がします。アナログで身体感覚の伴った非効率なコミュニケーションの場が減っている中で、逆に人間関係の構築は難しくなっているかもしれません。
そういう意味でもアサーションの考え方は、実は今の職場において、必要性が高まっているものではないかと感じます。
本書では、日常ですぐ使える、具体的な心構えとスキルも紹介されています。たとえば以下のような内容です。
・断るときはいきなり「ノー」と言わない
・怒りの前の「困っている」気持ちを伝える
・相手が怒っても、自分を責めない
1,2時間で読める内容ながら、非常に役立つ本だと思います。
ぜひ手に取っていただければと思います。