日本カント研究22
実体はモナドと呼ばれる単一実体と、それらが複合されたものである複合実体とに区別すること ができる。
『ライプニッツがカントの著作でよく語られる所以である。』
複合実体の部分は実体的なものであるか偶有性であるかのいずれかであるが、偶有性は実体的なものの外では存在しない以上、複合実体の部分が偶有性であるならば、それ自体の外に実体的なものが措定されなければならない
実体的な ものは複合体の本質ではない。ゆえに、複合実体はそのものの外にある実体的なものと複合されることなくして現実存在しえないのである。換言すれば、複合実体は「力をもち、ゆえにそれ自体の外に部分に先立って定立された実体をもつ」ような、狭義の複合的な存在者である
『複合実体は、その実体そのものに付帯する形で実体的なものが存在していなければ成り立たないのはきわめて常識的なことである。』
複合実体は偶有性である。しかしながら、偶有性が存在するために内属のための基体、つまり実体的なものが必要であるから、複合実体は「それ自体として自存するようにみえるならば」、互いの外に定立された実体的なものと一緒に取り上げられた総体として現実存在するのである。
『だったら、単一実体といわれるモナドは、どういう構造なのだろうか、原理的枢要的役割を担っているのか。例えば、一が単一実体で二が複合実体だろう。そう見えることなら、仮象的な箇所の判断基準はどこへ委ねればいいのだろう。実体そのものに誤謬があるかどうか。』
現象=物体と実体=モナド
実体の状態が変化する場合に、 その変化の力が当の実体の実体的なものであれば、その実体は能動するといわれ、他方で実体的 なものから区別された力である場合、その実体は受動するといわれる。
私が超越論的反省と呼ぶのは、それにより、私が諸表象一般の比較を比較がなされる認識力 と対照し、諸表象が純粋悟性に属するものとして相互に比較されるのか、それとも感性的直 観に属するものとして相互に比較されるのか、区別する働きである。
比較は第一に〔超越論的〕反省を、すなわち比較される諸物の諸表象が属する場所の決定を、 純粋悟性が諸表象を思考するのか、それとも感性が現象において与えるのかの決定を、必要 とする。
「超越論的反省」とは「諸物の諸表象」を自分自身の「認識力」と対照し、当の諸表象が 純粋悟性により思考されたもの、つまり「ヌーメナ」(ebd.)か、それとも感性による直観を介し与 えられたもの、つまり「フェノメナ」(ebd.)か、決定する働きである。要するに、諸表象が純粋悟性と感性のどちらに属するかを決定する働きである。ただし「多義性」章の他箇所の記述を踏まえ れば、次の二点を説明に加える必要がある。
我々 が諸表象を正しく比較するには、表象の諸特徴の分析だけでは不十分であり 、意識を自分の認 識力へと「後ろに曲げること(reflexio)」(超越論的反省)を「媒介」する必要がある。
「超越論的反省」が自分の認識力へ意識を向けるという契機を含む。
『背進ということだろう。しかしただの反省と超越論的反省の区別がハッキリしないのである。あらゆる表象と自己自身の認識力を類比するのは一般的な反省なのではないだろうか。理念と現存在の自分を類比しても、超越論的ではない。一体どういうことを超越論的反省と定義するのだろうか、この説明を読んでも釈然としない』
我々 は日々、何かを経験している。かかる経験は「私は思考する」という作用と不可分であり、その限 り、我々は自己意識において思考する「私」の「自発性」を表象することができる。しかしかかる 「自発性」は「相対的自発性」(Schulting 2019: 183)とでも言うべきもので経験的な機縁と独立に活 動するものではなく、それゆえ我々の表象にはつねに「自発性」に基づくものとそうでないものが 混在することとなる 。
「超越論的反省」にとり、認識力へ注意を向け、意識 するという契機は不可欠である。もしこれを欠き、ただ表象を何らかの観察行為のように、表象 の外側からその表象の属する認識力を決定するとするなら、決して「超越論的反省」という営みは 成立せず、畢竟「論理的反省」に終始するだろう。それゆえ、かかる「反省」という営みは「全知覚 の諸部分へ連続的に向けられた注意」(バウムガルテンによる「反省」の定義)という表象側に目を 向けるものではなく、「私は思考する」という作用を根底に置いた、徹頭徹尾認識主体内部へ向け られた注意でなくてはならないのである。
『超越論的反省とは比較作用の正しい規定性である。それを欠いて物事は上手く分析するということは難しい。だから我々は意図瀬せず超越論的反省を営んでいるのかもしれない。人生の構想を建設するときには、このような認識力とある対象を類比するのは不可分なことであるから。』
http://japanische-kant-gesellschaft.org/zasshi.html
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