花にかこまれたジュエリー展
金曜日に仕事が終わったあと、地下鉄を乗り継いで代官山へ向かった。わたしの行動エリアからは、ちょっと離れているのだけど、好きな街なので、理由をみつけて足を運ぶことが多い。
今回みつけた理由は、蔦屋書店のあるT-Siteのガーデンギャラリーでの催し。ヴァン・クリーフ&アーペル(Van Cleef & Arpels: VCA)の期間限定エキシビション、”Light of Flowers ハナの光”だ。
以下、イベント公式サイトより。
花々を描いたメゾンのジュエリーから着想を受け、片桐氏がインスタレーションを制作。日本の情趣あふれる幻想的な空間の中で、花々の一瞬の美しさとその輝きをご覧いただけます。
花をモチーフにしたジュエリーが多いVCA、そのジュエリー作品と実際の花の共演になっている。華道家の片桐功敦氏の演出による、花いっぱいの空間。奥の壁面にある9つの小窓に、VCAのジュエリーが展示されている(見出し画像参照)。
まだぎりぎり日没前だったので、窓から外の光が入っていた。窓の全面に花がプリントされていて、ステンドグラスのよう。足元に曲線で囲まれた”池”があり、そのなかに季節の草花が生けられてある。草花と暗い底がつくる、見事なコントラスト。実際の花々に、水面に映り込んだ花のイメージが重なりあって、不思議な感覚になる。
天井にも大きなパネル。上下左右すべての面に花が見える空間というのは、いままでに経験したことがないと思う。
華道家の片桐氏の作品は、いままで縁がなくて、どのような活動をされているのか、わたしは存じあげていなかった。生け花というと、花材の取り合わせと造形による空間芸術。ここでは、実物にくわえて花の写真を活用した演出がされている。ここまでの広い空間の演出というのは、わたしのなかの生け花の認識を超えている。
完全な自然の状態ではないけれど、実物の草花で、自然を再現した床面。側面と天井の花々が水面に映りこむ。折り重なる実像と虚像の草花をながめながら、奥の小窓にディスプレイされたジュエリーを覗き込む。
VCAのジュエリーが、いかに繊細に花の造形をリアルに表現しているのか、いかにしてデフォルメしているのか。ああ、そうか。生けられている花とまわりの写真は、このジュエリーブランドの視点を説明する役割も果たしていたのかな。
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展示されているジュエリーのコレクションは、古くは20世紀前半のものから最近のものまで。どれもVCAらしい個性が光っている。ありがたいことに写真撮影させてもらえた。せっかくなので、いくつか紹介したい。
”オミクジネックレス”という名前がおもしろい。なるほど、松の枝にくくりつけられたオミクジということか。いや、展示のテーマを考えると、松の葉ではなくて、なにか別の花なのかも(実は、最初に見たとき、粘菌かと思った・・・さすがに違うよな)。ピンクサファイアはダイヤモンドほどには輝かないから、主張しすぎていない。
オミクジのグリーンはツァボライト。ツァボライトは、緑色のグロッシュラー・ガーネット。日本のジュエラーのギメルさんが、よくデマントイド(もっと輝きが強い、緑色のアンドラダイト・ガーネット)を使われていたのを思い出した。ツァボライトぐらいだと、全体的に輝きを抑制できるのかも。
赤黄青のブローチ3種。1937〜39年の作。中央がブルーサファイアの大きなブローチ(右上)は、枝葉の造形が気持ち良い。わたしはダイヤモンドとルビーのデイジー2輪の作品(左上)が気にいった。写実的な花びらは、VCAの代名詞ミステリーセッティングの本領発揮だ。
紫色の花びらは、フリーフォームのアメシスト。不定型なのがとてもリアルで、ネックレスもブローチもリズム感が出ている。パープルと金の取り合わせは、相性が良い。ブローチとイヤリングは1938年、ネックレスは1961年との年記があった。
このネックレス、よく見るとチェーン部分が脱着式になっていて、ブレスレットにもなるコンビネーション。チョーカーの長さなので、首につけるとクラスプが隠れて、脱着式とはわからないようになるみたい。それにしても金属の加工がとても細かい。
腕時計もあった。時計の展示によくある10時10分をさしてはいない。よく見れば、中央の時計は動いていて、実際の時間をさしていた。右ふたつの文字盤部分は、ほとんどがエナメルのようだけど、マザー・オブ・パールも使われている。気の遠くなるような、とても細かい造形。
左の時計の文字盤には、石が敷き詰められている。ダイヤモンド、サファイヤ、スピネルとガーネットが使われているらしい。サファイヤはイエローだろうか。オレンジがスペサルティン・ガーネット、グリーンがツァボライトで、スピネルはピンク・・・かな。あり得そうな取り合わせを想像するのが、また楽しい。
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会場でもらったブックレットには、展示されていたジュエリーの一部、展示されてはいないけれど、やはり素敵なVCAのジュエリーがいくつか載っている。なんだかほのかにフローラルな香りがするのも、洒落ている。
この展示は5月9日まで。三度目の緊急事態宣言が出ているけど、しっかり対策をしたうえで、予定どおり続けてくれるようだ(要予約)。世間では外出自粛モードだけど、この展示はオススメしたいので、記憶が鮮明なうちにnoteに書いておくことにした。
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