書評 #72|TACTICAL FRONTIER 進化型サッカー評論
サッカーの奥深き魅力が詰まった一冊だ。「奥深い」という言葉を多用したくない。詳細をはしょり過ぎているように感じ、その一言で終わらせてしまうのがもったいないとも思う。「宇宙的」とでも表現すべきだろうか。正解はないが、尽きることのない、再発見と新発見のサイクルに今日も思いを馳せる。
突き詰めると、サッカーに勝つ最適解を世界中の人々は求めている。探求自体は複雑かもしれないが、行き着く先は往々にして簡潔だ。相手をいかに欺くか。いかにして想定を超えるか。綻びを生むか。その連続であり、その集合体がサッカーではないか。
目的の遂行を運や感覚に任せず、再現性の向上を目指して各チームは日夜取り組んでいる。個々人の技術や身体能力は当然ながら、選手の指導や指揮に携わる者たちは組織を強化し、理想と考える方向へと導く。人間の感情は揺れ動くからこそ、ヒューマン・マネージメントのスキルも問われる。
理を欠くと求心力が下がり、理性のみでは感化させることができない。持続可能であることも肝要だ。打ち手としての「目的の整理」「戦術の共感と浸透」「協調性と自主性の両立」。極端ではあるが、結局はそれらに最適解なるものは存在しないからこそ、世界中の人々はこの競技に魅了されるのだろう。
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