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書評 #98|それでも前を向く

 相手を置き去りにするドリブル。突風のようなスピード感はどこまでも鋭く、宮市亮は日本サッカーに待ち受ける明るい未来の象徴だった。しかし、人々が思い描いたような輝きは現実に差すことはなかった。
 
「くらべる必要のないものまで、くらべてしまっていた」
 
アーセナルでの苦悩に触れ、心が痛んだ。重圧にいかにして向き合うべきか。心身の準備と言えばそれまでだが、サッカー界の頂点に位置する環境を生き、勝ち抜くための難しさ、過酷さが生々しく語られる。
 同時に自分自身の未熟さにも触れた。
 
「当時の僕は、チームスポーツというものの意味をまだ理解できていなかった」
 
チームの勝利ではなく、ゴールやアシストといった自己中心的な結果のためにプレーしていた。それは言い換えれば、アーセナルで躍動するための自信が足りなかったとの言えるのかもしれない。
 待ち望んだ輝きではなかっただろう。しかし、その鮮やかなプレーの記憶も、今も見せ続けるプレーも、その彩りが失われることはない。幾度も負傷に悩まされながら、立ち上がって限界に挑戦し続ける姿は美しく、人々に勇気をもたらした。着飾ることのない、心根から絞り出したような宮市亮の叫びを胸に焼きつけてもらいたい


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