地面にほっぺたをくっつけて世界を眺める①
話してくれればよかったのに。
っていうけど、話したら話したで、
「そんなことぐらいで…」「私なんかもっと…」「いつまで引きずってんの」って軽くあしらうじゃない。
SOSは何かしらの形で出すんだよみんな。助けてくんなかったじゃん。
どうにもならない過去と避けられない未来が、いきなり私の脚をガバッとつかんでひきずりおろそうとする。
自分本意で、矛盾してて支離滅裂で、被害妄想で余裕がなくて、弱くて、甘ったれで苦しい思考回路に陥る
わかってるんだよ。わかってるの。
この理論が、幼い子供でもわかるような正論ですぐ論破されることくらい。
もっと苦しい人はいるんだってことも。
だから話せない。
でも、
正論だけ言ってれば人を救えるわけじゃない。
許したんじゃないよ。どうでもよくなっただけ。忘れてただけ。
思い出してしまえば、やっぱり許せない。
こんなにバカで幼稚な考え方をしている人なんていないだろう。
絶対に誰にもわかってもらえないだろう。
いやむしろ
わかってもらおうなんて、思わない。
わかられてたまるか。
この思考回路は、宝箱にしまう。
そして、誰も気づかないような、狭くて汚い入口から、洞窟に入って、泥道を通って、途中虫とか獣とか出てきて、くねくね曲がって、ラスボスをやっつけた先のところに、その宝箱を置いとく。
私の聖域を、そこらへんの奴に荒らされたくない。
とっておきの秘密なんだ。寄るなさわるな。
宝の地図は、駅前のビラ配りみたいに、誰にでも配るもんじゃないだろう。
私には、ささやかな夢があるの。恥ずかしいから誰にも言わないけど
それが叶うまでは引きずりおろさないで。
洞窟の中の秘宝は、もう見ないフリ。
あるのは知ってる。どう行けば手に入るのかもよくわかってる、私が隠した宝箱だから。
でも
私は、地上の秘宝を探しに行く。
今は絵の具に黒を混ぜたくない。虹色がいい。
地上で自由に踊ったり、空を飛んだりしたい。
世の中、そんなに悪くはないんだぜ。
わかってるよ。
思い出さないように
思い出さないように
忙しく働かなきゃ。
これはべつに願ってることではないんだけど、
もし万が一
いつか、宝箱までの道順がわかるよって人が現れたら。
地図を渡して、入口を案内して、狭い洞窟をくぐりぬけ、どろんちょ傷だらけになって、こうげき力とぼうぎょ力があがって、一緒にラスボスをやっつけて、
宝箱を開けて、泣きながら笑ってホクホクしよう。
そして宝を元に戻して来た道を引き返し、
地上に帰ってきて、
次の日は何事もなかったかのようにふつうに暮らしたい。