<白血病くらし>健康のための毎日の習慣:自分にゆとりを作る方法
普段から健康に気をつけて、食べるもの、肌に触れるもの、ひいては心に触れるものにも、自分なりにこだわって生きてきたのですが、ちょうど一年程前、突然白血病と診断を受けました。(皮肉なもので、「健康的な暮らし方」のワークショップの講師をする予定だった数日前・・・)
しかしながら、癌の宣告は、自分が思っている以上に早くすぎていく日々の中で、一度立ち止まり、自分と対話する時間を私にくれました。しっかりと深呼吸をし、改めて食生活や生活習慣を見直す機会を与えてくれました。以前、健康に(特に白血病の治療に)良いとされる食材についての話は書きましたが、今回は、健康を導く(導いてくれているであろう)毎日の習慣について書いてみようと思います。
これらは、7ヶ月間に及んだ白血病の治療中、そして寛解に達した今でも、(ほぼ)毎日実践している習慣です。直接的に健康に影響を及ぼしたものもあれば、主に心に影響を及ぼし、そのことが結果としてわたしの治癒力を高めたというものもあると思います。どちらにしても、わたしをより健康に、そしてより幸せにしてくれている習慣たちです。
Trigger & Needs
相変わらずですが、本題に入る前にちょっと寄り道から。
先日子供達と一緒に、自分たちにとっての「トリガーは何か?」の話をしました。一般的にトリガー(銃の引き金)とは、「怒りのトリガー」として解釈されることが多いのですが、私たちはもう少し大きく、「自分の感情をコントロールすることを難しくさせる要因」として捉えています。自分の冷静さを失ってしまったり、反射的に激しい感情が湧いてきてしまう、もしくは無意識に自分を防御するような態度をとってしまったりする状態を引き起こす状況、事柄、言葉などです。
そして、子供達とそれぞれ自分の考える自分にとってのトリガーをシェアした後に、そこから読み取れる自分が大切にして欲しいNeeds(ニーズ)は何かを探ることにしたのです。
まずは、純粋で感性溢れる6歳児。慈悲深く、すごく繊細な子。最近、お兄ちゃんにちょこちょこいじられ、年下であることや小さな体のせいで、何かをさせてもらえないとか、何かをできないと決めつけられることによくイライラしています。そんな彼女のトリガーは「自分がコントロールできない事柄を理由に、不当に扱われること」。想像通りの答え。そして、「自分のこと本当に好きでいてくれるの?って思うような行動を取られた時」と、お兄ちゃんをガン見しての回答。そして、彼女のニーズは「Fairであること(平等でなくても公平であること)」「愛されていると感じられること」。
そして、10歳のお兄ちゃんは、良くも悪くも感情的。喜び、悲しみ、怒り、全ての感情を全身で表現するタイプ。正義感がかなり強く、ルールを守らないヒトにやたらと厳しい。彼のトリガーは、「自分の正当性が満たされていない」こと。兄妹喧嘩が起きた時に、親が妹の見方をしているように感じられるからと。ここ、私たち親の課題です。そして、「お腹が空いていること」。そこから紐解く彼の大切にして欲しいニーズは、「話や意見をきちんと聞いてもらうこと」と「お腹が満たされていること」。
そして、私はといえば・・トリガーは「散らかっていること。混沌。」「うるさすぎる音や激しすぎる感情」。そして、ニーズは「整理されていること」「穏やかさと心の安定(Peace of Mind )」。
この自分のニーズを改めて再確認した時、下記に記載する、私が日常的に行っていること、特に白血病の治療中はいつも以上に意識して行なっていたことは、無意識のうちに私の心を穏やかに保つため、つまり、私にとって重要なニーズを満たすための行動だったのだと気がついたのです。
人はコアになるニーズが満たされているだけで、普段見ている景色が、聞こえている音が、劇的に変化するものです。例えば、恋をしているとき、関係のない他人にまでも優しく、愛を分けてあげたくなったことはないでしょうか。いい仕事ができた後の電車の中、いつも以上に他の人に席を譲ってあげたくなったりとか。兄弟喧嘩が起きた時、わたしがやっている事をすぐに辞め、子供の目線でしっかり話を聞いてあげるだけで、今まで貸し渋りをしていた本が急に「僕の本」から「みんなの本」に変わることもしばしば。
逆に、寝不足時の、子供の泣き声は普段の何倍もうるさく感じるし、空腹時の「後2分だけ待って」は、満腹時の2時間くらいにも感じてしまうのです。食卓での「ご飯美味しいね。ありがとう。」と言われるか言われないかで、その後の食器洗いのモチベーションが変わったり。
つまり、自分の中の満たされているニーズが、自分の「ゆとり」となり、心はもちろん、なぜか時間にも空間にすら余裕、余白が生まれるものなのです。
私の場合、白血病の治療中に自分のニーズが満たされ、心の安定が生まれたことで、治療に集中することができたし、「より多くのエネルギーを最大限の自己治癒力を発揮する」ということに使うことができたのです。
だから、もし息子のように、最大のニーズが「お腹が満たされていること」だったとしたら、私の習慣は「1日5食の食事法」だったかもしれないし、娘のように「愛されていると感じること」がニーズであれば、「寝る前の10分間は、ただただ誰かに話を聞いてもらう時間を持つ」とか「朝起きてすぐと寝る前に必ずハグをする」とかだったかもしれません。(って、実はこれらも毎日やってる・・)
これらの習慣は全てありきたりのものではありますが、実際に私にとって身体と心に栄養を与える習慣でした。しかしながら、人によってはなんだかしっくりこないというものもあると思います。その場合、まずは自分にとって日々大切にしたいニーズは何かな、というところから始めてみて、そこからどんな習慣が自分にゆとりをもたらすのか考えてみるのもいいかもしれません。
わたしのの習慣
瞑想
癌の治療中も今も、朝起きてすぐと寝る前に一人になり、瞑想の時間をとるようにしています。今まではヴィパッサナー瞑想の方法に従って瞑想をしていましたが、入院してからは瞑想アプリを使い、ガイドの方の声に従って瞑想するということも始めました。
そのため、私の試した瞑想方法や、子供と日常的に行なっている瞑想について、そして瞑想をした時と同じような感覚を得られる方法について書いていたのですが、思った以上に長くなってしまったので、こちらに独立した記事としてあげることにしました。ということで、瞑想に関する詳細はこちらから。
とにかく、1日の中で心を落ち着かせリラックスしながらもより自分に敏感である時間は、私の日常で欠かせないものです。日々の瞑想は、私のバランスを保ち、心に余裕がないときに、自分が帰る場所となっているように思います。
歩くこと
入院中は病院内を、退院してからは近所の森を毎日歩くようにしています。入院中に倦怠感がひどい時でも、自分の気持ちに負けそうになりながらも、まずは靴を履き(少し休み、)、次にお気に入りの曲を流し(また少し休み)、徐々に重い腰を上げながらも、ちゃんと歩くようにしていました。自宅にいるときは、雨でも雪でも、その時の天気に応じた服装に身を包み、とりあえず歩き始めます。
そして、30分でも何時間でも、「その時の気分+もう少し」を歩いてみるのです。
不思議なもので、今まで歩かなかったことを後悔したことはあっても、歩いたことを後悔したことは一度もないのです。そのくらい、私にとって歩くことの及ぼす影響は大きいのだと思います。特に、森の中を歩いている時は、森と一体になりながら無心になれる幸せな時間です。
太陽におはよう
運がいいことに、入院中はびっくりするくらい眺めの良い個室(私の入院していた病院では全員が個室でした)を与えていただきました。そこからみる朝日がそれはそれは綺麗で。毎朝、登ってくる太陽に、ときには雲の後ろにある太陽に向かって、しっかりと朝の挨拶をするようにしていました。そして、今日という新しい日を迎えられたことに感謝をすることから1日を始めるようにしていました。
いま、自宅のベットルームから日の出を見ることができませんが、その日初めて見た光に「おはよう」と言う習慣は今でも続けています。
ヨガ
こちらもありきたりではありますが、ヨガ、ストレッチ、ピラテスなど、自分の呼吸と動きを合わせる時間を取るようにしています。入院中は、窓辺に立って何度も深呼吸をする時間もとっていましたが、今はヨガをしながら深い呼吸をするように心がけています。
ありがとう・ごめんねノート
一日の終わりに、感謝と謝罪のノートを書くようにしています。些細なありがとうから、大きなごめんねまで。直感で書くときもあれば、しばらくゆっくり考えて書くこともあります。
治療中は何度も何度もみんなからのサポートに感謝をし、抗がん剤を投与してでも守りたいと思った命を与えてくれた両親に感謝をしました。
一緒にいてあげられない家族にごめんねを書いたこともあれば、忙しくてしっかりと向き合ってあげられなかった自分の心へのごめんねもありました。
今は、自分ノートに記入するだけでなく、子供達と夕飯時や寝る前に「今日のありがとう3つと、ごめんね3つあげてみよう!」と言って想いのシェアしたりもしています。
日記
今は書かずに寝てしまうことも多いのですが、治療中は毎日日記を書くようにしていました。体調の変化、投与された薬、その日に食べたもの、そして治療開始から何日経ったのかなどの記憶としてはもちろん、その時々に感じたことを素直に書いていました。
自分の思いを言語化することで、自分の感情に気がつくこともありました。辛い思いを自分の心から紙に移動させることで、心が軽くなることもありました。
そして、治療の終わった今、少し曖昧な記憶として残っている治療期間を振り返るのに日記が役に立っています。改めて読み直し、当時の気持ちを読みながら、当時の自分に声をかけてあげられています。病気のない日常に慣れて、病気になって再確認をした「自分の大切なもの」を見失わないようにする助けとなっています。
ハグ
1日に何度もハグをします。入院中はお見舞いに来てくれた夫や友人と、自宅でも毎日子供達としっかりとハグをします。そう、しっかりと、ぎゅーっとハグだけに集中したハグをします。
20秒以上のハグには、血圧を下げ、ストレスホルモンを減少させ、オキシトシンなどのハッピーホルモンを分泌を促進させる効果があります。そして、神経を安定させ、ポジティブな思考を促す力もあると言われています。恐るべき、ハグの力なのです!だから、やはり、しっかりと最低20秒の本気のハグをするようにしています。
心に栄養を与える
先日私の尊敬する知り合いの方から、中村天風のお話を紹介していただいたのですが、その中にもありました。「心の状態で人生は全て決まる」と。自身も不治の病とされていた結核を、心を整え、物事の捉え方をシフトすることで克服した中村天風。より健康な、詰まるところより幸せな人生は、食べ物や身体を気にするだけでなく、何よりも自分の心に注意を払い、気遣い、満たしてあげることから始まるのかもしれません。
私の心にたっぷりの栄養を与えてくれる私の習慣たち。私を形作り、いまの私を、未来のより良い私を作っている習慣たち。そう捉えると、どんな些細な習慣でも、ありきたりの習慣であっても、なんだかスペシャルに感じるもので、そんな習慣とともに、これからも心にゆとりを持って生活していきたいと思うのです。
中村天風はこうも言いました。
「感謝するのに値するものがないのではない。
感謝するに値するものを、気がつかないでいるのだ。」
まずは何より、今もこうして変わらなく習慣を続けられている「いま」があること、そのことへの感謝を忘れずにありたいものです。
よし、それも習慣にしてみよう(笑)。
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これは、ある日突然、急性骨髄性白血病との告知を受け、「白血病治療中」という新生活を始めた私が、寛解に至るまでの7ヶ月間、どのように癌と向き合い、毎日をより快適に過ごすために何をしたのかなど、「白血病暮らしのヒント集」としての記録です。自分の価値を押し付けたいのではありません。こんなことを感じて、実行した人がいたということを知ることで、何かのお役に立てたら幸いです。
これらの記録は医学的根拠に基づくわけでもありません。一口に白血病と言っても、それぞれの体調や置かれている立場は様々であり、これらのことが全ての人に当てはまる、役に立つとは限りません。それどころか、時には寧ろ治療の妨げになってしまうこともあるかもしれません。そのことをご理解の上、あくまでも参考程度に読んでいただけたらと思います。