ひとりぼっちは寂しいと言うのなら
6月22日(土)
結葵(ゆうき)と申します。
孤独になれるってのはひとつの武器なんだなぁ
今日も今日とていつものようにカフェでひとり読書をしたのだが、日曜日の昼下がりというもの、大学生らしき集団がいくつも群がり一緒になって勉強している。カフェという場所の良し悪しを問うことはひとまずおいて置くとしても、せっかくの休日を割いて、わざわざ外にまで出て、しかも今では意外とお財布に優しくない値段のするコーヒーを買って勉強をするのだから、一歩でも半歩でも勉強を前に進めたいはずだ。なのにそこに友達を連れてきて、いろいろ駄弁りながら楽しくやるのはナンセンスだろう。そうやって体を動かして、少なからぬお金を使うことで実際に買っているのはたかがコーヒー1杯ではなく、集中して勉強する時間とそれを可能にする空間なのだから、その短いあいだくらい単独者になってみたらどうだ。
基本的に勉強というものは、孤独になってするものだと思っている。いや、正確には勉強の相手との、一対一のガチンコ勝負である。テキストなら著者との、問題演習なら出題者との、議論なら目の前の相手との、真っ向勝負。勝負だからと言いつつも、そこに実質的な勝ち負けが存在するわけではなく、あるのはただ隙を見せれば喰らってやると言わんばかりの好戦的な態度と姿勢。
集中して勉強するというのは、ある意味でそのように戦闘モードになっているわけだから、そのモードがある程度の時間続けば、その後には体も頭も疲れているのは当然である。むかし、高校時代の英語の恩師に「英語は体育と同じだ」と言われたのを思い出す。今なら少し敷衍させて「勉強というのは筋トレと同じだ」と言い換えるだろう。筋トレというのは、ダラダラと長い時間やっていられない。友達と仲良しこよししながらやっていられない。自重でやるならともかく、ジムに通うというのは洒落にならぬカネがかかる。だがその分、上質な時間と空間を手に入れられる。そして当たり前だが、筋肉を追い込んだあとは体がドッと疲れる。これらすべての要素が勉強にも通ずる。
高校1年生の前でこんな話をしたら、どんな反応が返ってくるだろうか。たぶんこの話がより説得力のあるものになるには、僕が今の3倍くらい筋肉をつけてマッチョになってからだと思う。文字通り「脳筋」になったヤツが、真顔で「勉強というのは筋トレと同じだ」なんて言ったら、きっと胡散臭さはなくなって同じように真顔で信じるヤツが1人や2人いてもおかしくはない。
勉強の基本原則は「ひとりでやる」。
要は、勉強するときは一時的でも「孤独」にならなきゃいけない。自分が勉強するのにそこに友達も一緒に連なること、それ自体をナンセンスと言っているわけではない。現に、いま僕の後ろで勉強している高校生らしき2人は、隣同士並んで勉強をしているが、お互いに会話をすることはないままだ。けれども、人間、仲の良い友達が近くにいると、くだらない話をしたがるものだから、勉強しにきたであろうにも関わらず、駄弁りながらダラダラと時間が過ぎていくのであれば、最初から友達なんか連れてくるなという話である。
お互いが「単独者」、つまり自らすすんで「孤独」になろうとするものであるとき、その関係性は友達以上のものとなる。仲良しこよしが友達関係の基礎基本だと思っているあいだは、居心地の良い場所にいつまでも留まって、その気楽な気持ち良さから抜けきれない。いつかはそこから飛び出す、自ら選んでひとりぼっちになる勇気と度胸が必要になる。これから自分が傷つくであろう道を、痛ぇの踏ん張って我慢して歩く覚悟を持つ必要がある。
これも実は筋トレと同じ要素を持っている。筋トレとは、要するに筋肉をいったん傷つける行為である。長らく運動不足が続いている人は、久しぶりに筋トレをしてみても、すぐに限界がくる。ほんの少し筋肉を傷つけただけで、体が硬直してしまって身動きが取れなくなる。筋肉だって、あまりに急激に傷つくのはイヤなのだろう。筋肉も現代人の心と似たようなもので、繊細なのかもしれない。
けれど、何度も繰り返し傷つけていると、あるときから少し痛いのも我慢できるようになってくる。ほんのちょっと傷ついてもどうってことない、と感じる瞬間は必ずやってくる。傷つけて傷つけて、傷つけた分だけ少しずつ、でも確実に強くなっていく。だがそれは、別に自分の弱さを打ち消すとかいう真面目なことではなくて、もっと楽観的に、「少しくらい傷ついても、まぁいっか」くらいのテキトーさを覚える鍛錬だと思う。
世の中的には「自分だけは自分の最高の味方でいて」とか「自分だけは自分を愛する」という物言いが今は強い。分からなくはない。毎日SNS活動に勤しんでいたら、ヘドロ化した世界に体の半分を浸けているのだから、しょっちゅう傷つけ傷つけられる。いや、分からない。傷つきたくないからって、防御力に経験値を全振りして、そんな守勢に立つ意味が。
勉強する。ひとりで。ほら、やるぞ。
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