長い間ありがとう
どんぶりが割れた。
実家にいた頃から通算20年に渡って愛用してきたどんぶり。大好きな親子丼を食べるときも、サッポロ一番塩ラーメンを食べるときも、風邪をひいて卵あんかけうどんを食べるときも、いつも私に寄り添ってくれていたどんぶり。
洗って拭いているときにうっかり落とし、真っ二つに割れてしまった。
手から滑り落ちていくその姿をスローモーションで見ていた。足の上に包丁を落としたときもスローモーションだった。そのときは飛び退って包丁を回避したけれど、今回は手を伸ばしても間に合わなかった。粉々になるかと思ったけれど、きれいにふたつに割れただけで、小さな破片はひとつもなかった。
20年。うちの夫でさえ付き合ってからまだ18年だ。付喪神が宿るにはちょっと年月が足りない。
それでも、ちょっと愛着が湧くには十分な時間で、割れたどんぶりを拾い上げてしばらく呆然としてしまった。
今回割れてしまったどんぶりと一緒に実家から持ってきた色違いのどんぶりは、夫がよくぶつけるので小さく欠けている。こちらもそろそろ買い替えねば。
頑丈などんぶりを探す旅が始まる──。(物語の導入風味)