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tefu_harano
【感想】『日米開戦陸軍の勝算 「秋丸機関」の最終報告書』林千勝、祥伝社(2015年)
日本国についてよく一緒に討論している知人から借りて読みました。
大東亜戦争において、陸軍は悪、海軍は英雄のような世論を、一次資料を元に真っ向から叩き切っている著書になります。
恥ずかしながら「秋丸機関(陸軍省戦争経済研究班)」は初めて聞いた名前でして、発足の意味から勉強する形となりました。
この機関は、各国の経済力に焦点を当て、戦争の終着点を見つけるために誕生しました。
英米を相手にするという無謀にも思えるような戦いを起こすことが、ただ無謀であると報告するだけのものではなく、限られた機関で成果をあげ、日本が負けないようにする動きを緻密に報告しています。
重要なのは太平洋ではなく、英米の補給路を断つための東南アジアであり、短期間で講和に持っていくことを想定していました。
史実では、太平洋攻略に重きが置かれ、腹案である報告書は完遂されませんでした。
たらればを言えばキリがありませんが、現代のメディアは歴史資料を捏造していると著者は述べています。
歴史に対して誠実に向き合うという著者の言葉が好きです。
しかし、歴史というと大袈裟に聞こえるかもしれませんが、自分の行ってきたこと、過去の失敗や不祥事に対して誠実に向き合える人間はどれほどいるのでしょうか。
いまの自分を守るために、過去の事実を隠蔽する、一部を覆い隠すことは、決して他人事ではないかと思います。
歴史を学ぶことは、人間を学ぶということを、改めて痛感しました。