大学院1年目の読書録 その4 「SDGs入門」
こちらは院入学前に筆記試験例を見た際、SDGsとMDGsについて触れていた問題があったので、入試に備えて読んだ本。SDGsはともかく、MDGsって???ごめんなさい。ほぼ知識なし、でしたので、改めてSDGsを学ぶとっかかりとして。
「SDGs入門」日経文庫
正直、これに力を入れている上場企業などの担当者なら頭に入っている当たり前のことが、馴染みのない私には、まずは頭の理解から。
CSR、ESR、MDGs、SDGs・・・似ているような、全く異なるような・・・聞いた時は、なるほどと思うのに、なかなか頭で整理しきれない。しかも苦手なカタカナばかり。
ということで、本書に沿って頭の中を少し整理し直してみたいと思います。
第1章 まずはSDGsを理解しょう
「SDGs(エスディージーズ)」(Sustainable Development Goals)
通常「持続可能な開発目標」と訳されます。国際連合の広報ページでは、「持続可能な開発目標(SDGs)とは、すべての人々にとってよりよい、より持続可能な未来を築くための青写真です。貧困や不平等、気候変動、環境劣化、繁栄、平和と公正など、私たちが直面するグローバルな諸課題の解決を目指します。」と説明されています。
企業に置き換えると、企業理念や経営の目的の実現のために、具体的な目標として置き直した、その目標のことで、2030年の目標として17項目のゴール、ミッションが定められています。複数だから"s"がついているのですね。
17の目標だけだとざっくりしすぎていて、どこから着手すれば良いかちょっとわかりにくい。で、具体的にわかりやすく説明するために、169のターゲットが定められています。この169のターゲットが、私たち各企業が取り組む際のヒントである、と述べられています。
ちなみに私が馴染みのなかったMDGsはこちら
「MDGs」Milennium Development Goals:ミレニアム開発目標
国連ミレニアムサミットで採択された開発目標。貧困や飢餓の撲滅、初等教育の普及などに限り、2015年までに達成すべき8つの目標からなっていました。このMDGsの積み残し課題を継続的に取り組み、さらに広範囲な課題(例えば気候変動や格差拡大など)に取り組もうというのが「SDGs」というわけです。MDGsとの違いとして、
・先進国にも途上国にも共通の目標
・望ましい未来像からバックキャスティング思考で策定
・内容からも資金源からも、企業の参加なしには達成できない
こういったことから、2015年9月に国連総会で採択されて以降、政府や自治体、企業、大学など、MDGsの際とは異なり、非常に幅広い取り組みがされているのですね。
第2章 SDGsとビジネスはどう結び付いているのか
本書ではSDGsとビジネスがどのように結び付いているのか、の理由として経営者が興味を持つ理由
1.新事業開発や既存事業の拡大につながるかも
2.人材獲得のための武器
3.コミュニケーションツールとして有効
という動機付けを上げています。
取り組む際の動機はわかったけど、気をつけるべきは「SDGsウォッシュ」。せっかくいいことを実施するのに結果、企業イメージを傷つけるのは本末転倒。こちらは「やらないこと」リストを作ることで防げるというヒントが。労働や人権、環境汚染、平和や公正な経済活動に関するものなど、SDGsに関わらず、企業がレピュテーションリスクを回避する際の参照視点にもなりますね。
ここでこんがらがりがちな(←そもそもこの日本語も相当こんがらがってるけど)ESGとSDGsの違いも整理しておきましょう。
「ESG」 Environmental Social Governance
その名の通り「環境」「社会」「ガバナンス(統治など)」。投資やビジネスを行う際に配慮すべき3つの視点のこと。SDGsとの関係で考えると、「S」サステナビリティを重視しようとするときに、考えるべき思考回路がESGであると本書では語っています。本書P73で紹介されている図表12がとてもわかりやすいので、ぜひご確認ください。
現在の企業活動のプロセス全般を「環境、社会、ガバナンス」の3つの観点から見直そうという「ESG」と、企業活動のアウトプットを通じてサステナビリティに通じているSDGsがゴールにある、ということがわかりやすく説明されています。
「CSR」 Corporate Social Responsibillity 企業の社会的責任
「CSV」 Creating Shared Value 共創価値
「ESG」が元々投資や金融機関の視点から出てきた言葉であるのに対し、「CSR」は、より社会との関係性や対応力を重視したいときに役立つ。
「CSV」は、マイケル・ポーター教授らが2011年に提唱した概念で、企業が自社の競争力を高め通、社会的課題解決への貢献を実現するような取り組みを後押ししている。いずれにしてもこれらの言葉すべてが、SDGsのサステナビリティを貢献する際の考え方の一つ、ということですね。
第3章 SDGsに取り組むときのヒント
この章では、実際に各企業がSDGsの取り組みをスタートする際のヒントについて述べられています。トップコミットメントの重要さやまずはトップに興味を持ってもらう工夫、経営理念との整合性の確認、上場企業ならISOの認証の活用、そして中小企業など非上場企業に最も効きそうな「お客様の声をテコとした外圧」活用。
私も含め、たった一人の担当者でも取り組みを始められる具体的なヒントをここで見つけられるといいですね。
第4章 SDGsにいかにビジネスで貢献する
いわゆるビジネス書同様、実際のビジネス構築のヒントとしての切り口として、「SDGs」を活用する考え方が説明されています。わくわくする製品・サービスを検討するところからSDGsへの視点まで伸ばしていくロジックモデルの紹介がまず第一。一方正反対に、ゴールやターゲットをまずは掲げ、そこから自社のアクションプランを導き出すという二つの事例が紹介されています。こういった手法を通し、SDGsの取り組みの課題として、成果をいかに図るか、指標の決め方かと思いますが、KPIの決め方などもここから導き出せるのではないかと思います。
第5章 SDGsの取り組みテーマを選ぼう
SDGsのテーマの中から9つを取り上げ、それぞれのテーマと169のターゲットの関係から、具体的な取り組みテーマの選びからについて説明させれています。項目出しが、そのまま、自社の取り組みテーマをチョイスするヒントとなるかと思いますので、私の備忘録の代わりとしても、目次から各章のテーマを上げておきたいと思います。
終わりに
本書を読み終わると、企業としてのビジネス上だけでなく、私たち一人ひとりが、人としていかによく生きるか、よく考えてどう生きるか、「SDGs」はその具現化のとても素晴らしいヒントばかり、ということに気づきました。
第5章の取り組みテーマを見ても、私たちの身近なところにあるテーマがいくつも見つかります。ビジネスパーソンとしてだけではなく、生きていく一人の人間として、より多くの人が「SDGs」を理解をし、実践していくことが、持続可能で豊かな社会を作っていく、そのことに改めて気付かされました。