10数回目のフルマラソンで初めてトライしたこと
私は年に1, 2回フルマラソンを走ります。合計すると、これまで10数回。その中で、今年初めてトライしたことがあります。それは、ペーサーの集団の中で走ることです。
ペーサー(Pacer)は、ペースを刻む人。大きな大会では、3時間、3時間半、4時間など、いくつかのフィニッシュタイムを設定したペーサーがいます。そうした人に付いて走ると、ゴールまでそのまま行ければ目標時間を突破できるという仕組みです。多いときには20人とか30人といった集団がペーサーに続いて走っています。
私は集団よりも自分のペースで走るのが好きです。これまでペーサー集団に入ったことがありませんでした。
前半飛ばし気味で後半スピードダウンというのが、私の大体のパターン。つかれて余力がなくなってきた頃に、ペーサー集団に抜かれるのが常でした。
追いつかれる側にとって、ペーサー集団はプレッシャーを感じる存在です。後ろを見なくてもわかる、大勢の足音。それが「圧」となって段々近づいてきます。そしてなすすべもなく抜かれるのです。
今年のフルマラソンも、いつものように自分のペースで走っていました。前半飛ばし気味というのも例年通りです。そして折り返しを過ぎてしばらく進んだ頃、ペーサー集団に追いつかれました。
ただ、今年ひとつ違っていたのは、つかれてはいたけどまだ少し自分に余力があったことです。ペーサー集団に吸収されつつ、その中でしばらく踏ん張ってみることにしました。それだけの気力もまだ残っていました。
あと、南アフリカで何十年もフルマラソンのペーサーを務めてきた人の話をポッドキャストで聴いたことも、興味を持つきっかけとなったのかもしれません。
ペーサーの方たちに引っ張られる、初の集団走。20人ぐらいのグループの中で自分の位置取りを決め、行けるところまでついていくことにしました。
5kmごとの区切りやエイド(補給所)の手前で、ペーサーの方たちが声掛けしてくれます。多少余裕があるランナーは、声を出して反応します。私もやってみました。
そうして走りながら感じたのは、ペーサー集団はある種の「エネルギー体」みたいな存在だなということです。同じぐらいの走力を持ったランナーが、同じ目標を持って走る一期一会のグループです。見知らぬもの同士で、言葉を交わすことがなくても、力をもらえるような気がしました。
私が走りのバイブルとしている大槻文悟さんの『ランニングの処方箋 医者の僕が走る理由』という本に、
と書かれています。それをひたすら実行することにしました。
疲労がたまり、何度か遅れそうになりましたが、ここで自分だけ脱落はしたくない。そう強く思って、最後までペーサーの方たちに必死でついていきました。そして、自分にとって大きな区切りのタイムを突破することができました。
記録がうれしかったのはもちろん、新鮮な感覚で走ることができたフルマラソンでした。