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四方山みなも
2021年2月13日 15:44
「102号室。君は平凡な青年」 気付くと僕は、ただ一切れの紙を握って、よく晴れた空の下に立っていた。 それまで何をしていたのか、僕はどこから来たのか、どこで生まれたのか。そういった記憶は一切なかった。 けれど、なぜだかそんなことは一切気にならなくて、今はただこの紙に書かれたことに突き動かされるようにして、僕はここまでやってきた。 目の前にしているのは、ところどころペンキの禿げた若草色の
2021年2月17日 21:31
言葉にするには、あまりにも痛すぎる心がある。 この胸の奥底に、笑顔の裏側に。 目を背けて、きつく蓋をして、なかったことにしてしまいたい感情がある。 それを直視してしまうことは、 誰にでも見える形を与えてしまうことは、 怖くて、痛くて、恐ろしくて。 だから手を触れずに、目を向けずに、 ずっとずっと、見通しの効かない湖の底に溶かしておきたい。 そんな脆くて、汚くて、疎ましい