四方山みなも
四方山がアップしてる短い小説をまとめてます
『利き作家選手権』の記事のまとめフォルダ
「時間ある時でいいからさ…自分で書いた小説コピー本にして交換会せん?エセオフ会的な」 リア友のこの一言に端を発し、約1ヶ月半の時間をかけて、私と彼女は全身全霊をかけた遊びを始めることになりました。 企画の趣旨は単純明快。 二次創作で新しい小説を書き、設定された”エセオフ会“の当日に印刷・製本まで終わらせた新刊を持ち寄ること。 ルールは一つだけ。互いに同じ曲をテーマソングに設定し、それに見合った作品に仕上げること。それ以外は一切自由。字数制限も、CPも、シチュの縛りもな
人の害意を描写するのが苦手 わたし自身が書いてて苦しいし、わざわざ他人に危害を加えようとする気持ちが分からなくて困る 多分わたしは害意に根拠や整合性が必要だと思ってる。実際はまったくそんなことはないと、ようやく分かるようになってきた だから試行錯誤
ある晩、ふと気がつくと全身を動かすことができなくなっており、ララは「またか」と思った。ララはかなりの頻度で金縛りに陥っていた。でもララは、そこまで金縛りを怖がってはいなかった。金縛りは、なにかの手違いで夢と現の間のとても狭い隙間に落っこちて、身動きが取れない状態だと思っていた。 こんなとき、ララは冷静に状況を考える。手足は動かない。まぶたは開かない。まれに呼吸ができる時もあるが、今回は否だった。とはいえ、金縛りで窒息死する人など未だかつて存在しないのだから、焦る必要はない
朝、目が覚めた瞬間、和歌子は思った。 「逃げなきゃ」 とるものもとりあえず、服を着替え、一番手近に投げ捨てられていたコートとマフラーを身につけ、ボディバックに最低限の財布やらスマホだけを詰め込んで、転がりだすように玄関を開けた。 こんなところに居られない! 息苦しさのために大きく息を吸うと、冬の朝の凍てつく空気が、気管に肺にととげとげ刺さった。日の昇りきらない、二月になったばかりの午前は、一人で歩くには寒すぎる。 小走りになりながら、和歌子は一番近い地下鉄のホームに
「なんか変わりました?」と尋ねると、ジュンさんは「実は分け目を…」と答え、頭頂部の髪を手櫛で軽く撫でて見せた。「ふーん」とだけ答えて、そのまま私はジュンさんに連れ立って歩き始めた。 松虫の声がしていた。月明かりが黄色かった。秋の夜の空気は、昼間の朗らかな空気をぎゅっと圧縮したみたいに濃密な気配に満ちている。 「最近どうですか、人生」 今度はジュンさんが聞いてきた。あまりにも答え方の幅の広すぎる問いかけに、「なんですかそれ」と笑って、隣を歩いているジュンさんの顔を見上げ
参考書 無垢な私が得意げに 引いたマーカー線がいらだつ #今日の短歌
制服の少女ふたりのさえずりに 水が差せずに夏至の陽永らえ
暑くてさ 輪郭があるか心配で 冷コ握って確かめたくなる #今日の短歌
唇でいちご大福そっと触れ 柔く冷たいヨカナーンとのキス #今日の短歌
「好きだった」愛だった場所に空いた穴 転落防止に恨みでふさぐ #今日の短歌
人の子の熱と湿り気胸に抱き 愛しと思へど我が腹は空 オオカミの腹には石を詰めるなら 子産まぬ我の胎にも石を #今日の短歌
このブックオフのCM好き なんや言うたらストレスフリー、ほのぼの癒し系が有難がられるお疲れ社会ですが、逆に心がしんどくなりたい人や時もあるはず(?) そう思って、私が読んだ小説で、良質にこころがしんどくなれるものをまとめました。 ※先に断っておきますが、以下でご紹介する3作品は大好きな作品です *** 1.今村夏子『あひる』 吐きそう。猟奇的な(グロ系)描写は一切ないのに。 私ってなんで生きてるんだろうって思う。 ほんとうにお疲れの時には読まない方がいいよ。 も
「いきいきと 生き、息せよ」と言われても 逝き急ぐように息が苦しい #今日の短歌
「出勤」は「出陣」と似た響きだな 耳詰めイヤホン ほら貝のうた #今日の短歌
あのときはまさか本当に現実になるだなんて夢にも思わなくて、 それでも夢にくらいは見たくて、 その夢の味見をするような気持ちで何気なく口にしたつもりだった。 私の家にマダムの本棚がやってきた。 それが玄関の前までやってきた時、私は――呆然としか言いようのないめまいを覚えた。 もちろん突然やってきたわけではなく、それがやって来ることは一応事前には知らされていたものの、電話越しに聞かされるその物体の存在と、今目の前にあるその本棚は、どうあがいても同じ質量ではなく、つま