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まぶしくて 私の後ろの影すら恥ずかしさで薄らぐ 一歩 また一歩と進むたびに また深く 深く踏…
平静に包まれた苦楽を愛し 不意に投げられた石に揺らぐ水面を穿つ 善悪よりも好悪であった 音…
波の合間に浮き沈みするプラスチックゴミを見て 今日も穏やかな海を愛でる この空の下で泣き…
私の小さな両腕に抱かれた小さな赤ちゃんが もっと小さなその両腕で掴みに行った青空の 優しい…
綴じた瞼が少し重い 緩んだ頬が漸く乾く 独りで生きようとしていた 底を歩く、音も立てずに、…
黒を見つめていた それは切り裂かれた腹の奥で 人と人とが互いを探る あの静かな気味の悪さ…
起きた後で寝癖に気づくまでの数十分 人は当たり前の姿で寝ぼけている 寝ぼけた後で大人になって なんだかまともになってしまう 寝癖のある生き物で その寝癖すらも生き様で 大人になってまともになって 生きていくだけじゃ息できなくて 寝癖がある朝だけ 寝癖に気が付かないあの朝の時間の流れだけ 人は人のままでいられる 大きくなる前の冬の朝 乾いた空気の冷たさを くしゃみと一緒になって 寝癖と一緒になって 寝ぼけたまま輪郭を探っている 寝癖があって 息してあって 朝日が暖かくて
借りた傘を返す不器用さが、彼女にまだあった頃。 見に行った海の色を、鮮明に覚えている。 …
無明を美しさの窓として描きだした左手を 傍で見ていた数のない色たちが 自分と戦わずに…
歯磨きの歌 わしゅわしゅ しょっしょっ はしゃはしゃはしゃ いつもはスマホを片手に持って …
光を肌にのせて寝転んだ。 虫の飛ぶ像が心地よく頭の中に響く。 緑がこの全身を失くした存在と…
綾羅錦繍を抱えていた ただ一つとして名も知らぬ異国へらいら 委曲をつくせど動かぬ指を 雪に…
無作為な個を一つ一つ赦していったその先に 私さえもいない透明な感情があって 無音や無風や…
裸の切なさを共有するシステムとしての 液晶の価値を金額で比べる普遍人の情動 一匹で群れ始める毛のない獣 指の先には故意が宿る 意識の果てに実る一滴に心を奪われて 水面に映る可能性の世界に転落する 見て聞いて食べた世界を 崩していく一瞬を眺める横顔が 美しさ以外で語れるはずが無かった さあここに 恐れることなく 手を伸ばす 暗闇で触れる何かを 知らずとも 知らなくとも 詩的計画の序 2024.5.12 雪屋双喜 AIだなんだと喜ぶ間も絶えず時間は浪費されていく。