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Photo by
take_kuroki
乾拓
平静に包まれた苦楽を愛し
不意に投げられた石に揺らぐ水面を穿つ
善悪よりも好悪であった
音も波も静けさも
全て他者存在の証左
臆病な自尊心の尊大な羞恥心に
触れて初めて知覚する
投げられた石を拾い集め
波に濡れた砂を手で浚い
月の光を目に刻む
今私の髪や心が好悪に濡れて
伏せた紙に転写される
それはどんな匂いであろう
どんな不快さを持った形であろう
いや畢竟凡て空から落ちたもの
受ける容れ物も無いまま只々落ちる
その水面に滴る音に振り返り
崩された平静を必死に保つ
昨夜の月を眺め眺め
心の底へ碇を降ろし降ろし
雪の冷たさを待ち焦がれていた
乾拓
2025.2.1
雪屋双喜
いつまで繰り返しているのだろう
次第に薄く欠け始めたことを
無かったことにはできまいに