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寝癖

起きた後で寝癖に気づくまでの数十分
人は当たり前の姿で寝ぼけている
寝ぼけた後で大人になって
なんだかまともになってしまう

寝癖のある生き物で
その寝癖すらも生き様で
大人になってまともになって
生きていくだけじゃ息できなくて

寝癖がある朝だけ
寝癖に気が付かないあの朝の時間の流れだけ
人は人のままでいられる
大きくなる前の冬の朝

乾いた空気の冷たさを
くしゃみと一緒になって
寝癖と一緒になって
寝ぼけたまま輪郭を探っている

寝癖があって
息してあって
朝日が暖かくて
空がしんとしていて

人のままで寝ぼけている
寝癖のある数十分の
あの堂々たる自己の生の主張を
直してしまう年頃に

くしゃみのような
寂しさがあって

寝癖をつけたあの人を
どこからともなく愛おしく思うのは
手元を離れた奥底の熱をその人に
託してしまったから

寝癖を無くした今日の朝
人はしっかりくしゃみをします

2024.12.23
雪屋双喜

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