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静かにもえる炎もあるかもしれない    読書記録 終わらない歌

読書記録 終わらない歌
宮下奈都先生、
実業之日本社
2012年



先日、お散歩がてら図書館に行って小説のコーナーを見ていて、 

「そういえば最近、宮下奈都さん読んでないなあ」

と、思い宮下さんのところに行って選んだ本がこの
「終わらない歌」
でした。

宮下奈都さんと、音楽といえば、
「羊と鋼の森」
を思い出しました。これは、ピアノの調律師として成長していく青年の物語でした。

さて、今回の
「終わらない歌」は、、、。

◎あらすじ
 主人公の玲(れい)は音大の声楽科に通う3年生。

母はバイオリニストだが、父はいない。 

自分は歌を歌うことが好きで、声楽科に入ってはみたものの、周囲には歌が抜群に上手い同級生がたくさんいる。

「自分は何のために歌うのだろう」

と思い悩む日々だった。

 そんな時、高校時代の友達の千夏が一人暮らしの玲の家に泊まりにくる。

千夏は玲が高3の時にミュージカルを一緒に見に行ったことがきっかけで、女優を目指している。

アルバイトを掛け持ちし、劇団に所属しレッスンに明け暮れる。

そして終電を逃してしまうと、玲の家に泊まりに来るのだった。

物語は、この2人を中心に高校の同級生たちの3年後の生き方を絡めながら展開されていく、、、、。

◎気になった箇所


私は情熱がほしい。どんな障害をも越えていく情熱。たぶんそれこそが、才能だとか、個性だとか、それから努力だとか、素質だとか、可能性、環境、遺伝、機会、そんなようななんだか別々のようでいて実はとてもよく似た、立ちの悪いばけものに立ち向かう唯一の武器なんじゃないかと思う。

10ページ

◎感想
・私にとっては10代から20代前半は、自分を探す時期だったと思う。

自分のやりたいことがはっきりしているほど、目指すところに向かって努力を惜しまないかもしれない。

この物語の「玲(れい)」は声楽家という自分の目指すものがはっきりしている分、大学の同じ専攻の中で自分の立ち位置が歴然と見えてしまった。

私も高校時代、進学校に進んではみたものの自分と同じ授業をうけても理解のスピードが違うクラスメートをみて、今までの自分が小さく見えた。

〇〇大学に行きたいと思って努力でしても、なかなか成績が上がらない私の脇を、友人たちはさらりと推薦入学を果たしていった。

だた、自分だけを見ていると小さくてはかない存在なのだが、
自分が何ができるかと考えると、
意外と可能性は広がっていく。

私の場合は大学で障害児教育に出会った。

情熱を傾けて日々子供たちと向き合っている先輩たち、現場の先生たち、真摯に学ぶ大学院生。

「この子たちはゆっくりだけど、着実に成長している。それを見ているのがとても幸せだ。」
実習を受け入れてくれたベテランの先生のことばが忘れられない。

私が情熱をもって現場で働くことができたか、ということは自分ではわからないが、 

でも30数年をかけて同じ仕事をできたということは、静かに私の中で燃えたぎるものがあったのかもしれない。



◎今日も最後までお読みいただきありがとうございました。

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