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『別れの予感』短編小説🌸

桜はまだ咲いていないが
卒業式シーズンはすぐそこまできている。
私は床の上に寝転ぶと、窓の外の雲がゆっくり流れていく様子を見て呟いた。
『あーもう嫌になっちゃう。』


『これ返すよ。もう必要ないから。』
鍵を差し出された。
『なんで?本当にもういらないの?』
『うん。ごめん。もう…必要ない。』
そう言ってその場から去った後ろ姿。
勝手な奴。
手のなかの家の鍵がやけに重たく感じた。

なんとなくは気がついていた。
部屋の荷物が少しずつなくなるタイミングで
気持ちも少しずつなくなっていってる事を…
知らないふりをしようと決めていたのに


頭を何回か揺らして
『さぁてと、やるか!』
気合を入れて起き上がりパソコンに向かう。

知らないふりをしようと決めていたのに…


レレれれれれれれれれ……


意味不明な文字をパソコンに打ち込む


まだ最初の1ページ目だというのに
ここから先が思いつかない
悲しい失恋の話を書こうと決めてはみたが
盛り上がりと、泣ける言葉が続いていかない。
頭で考えてるほど文章が進まない。
自分の体験を書こうとしても、親友に取られるとか、二股とかそんな歌詞のような情熱の恋も、
ドラマチックな体験もしていないから、
書いても全然面白くない。


窓から風が入ってきた
『本当に暖かくなってきたなぁ。』
春が来る。

また新しい何かが始まる

新年は新しい年が始まると実感はするけど


自分の身に何か新しい出来事が起こると
感じるのは、甘い花の香りがしてくる頃

やはり私は『春』だと思う。


小説の最後の文章は決めてある
『別れがあるから、新しい出会いがある』
そうして主人公は前を向くんだ。
失恋した時の鉄板の合言葉。


今回は必ず書き上げて応募する!

あの時にそう誓ったんだから頑張るしかない!
負けるもんか!


玄関の横の”合鍵”をチラッと横目で見て

そして
私はまたパソコンに向かった。




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