身内が外食してくれない
当工房では、例えば忘年会をするぞー!といっても外食は殆どせず、工房でする事が多いです。
私は「どこかお店の予約取るかね?」と声をかけるのですが「面倒だから工房で親方が作ったので良いです」と言われてしまうのです。
自宅でもそうです。
好きなものを好きなだけ食べて、好きな酒を好きなだけ呑んで、好きなお茶を好きなだけ飲んで、移動を考えずにそのままゆっくりして、寝るのが最高!別に外食で美味しいものが食べられる訳でもないし。そういうトコへ行く用の窮屈な服を着るのはイヤだし、変な工夫をしてある先端気取った料理を食べるのもイヤだし。料理人さんとかホールの人たちに気を使いながら食べるのも面倒だし・・・らしいです。「んじゃ、オーベルジュでも良いじゃん」と言うと「あれはレストラン以上に面倒」という事で結局工房、あるいは家で、となります。
工房でやる場合は、流石に設備的にチマチマとコース料理、というわけには行かないのでシンプルなものです。「実質的に旨いもの」だけ。
例えば・・・
こちらは何年か前の、工房での忘年会です。
この年のメインは、Tボーンステーキでした。工房のグリル板で焼いたものです。ビステッカ・アッラ・フィオレンティーナと言いたいところですが、これはキアニーナ牛でも仔牛でもない、アンガス牛のTボーンです。焼き加減は、ビステッカ・アッラ・フィオレンティーナのように生っぽくはせずロゼぐらいに仕上げます。
写真は食べやすいように切った後のものです。
こういうものを工房や家で食べる場合は、添える調味料を色々と用意出来るのが良いですね。
「好みのオリーブオイル+レモン+粒マスタード+イタリアンパセリ」は定番で「イタリアンパセリ+レモンの皮+ニンニクをみじん切りを合わせたトッピングの“グレモラータ”」も良いです。
それに飽きたら「たまり醤油+本わさび」あるいは「たまりしょうゆ+本物の和辛子+すだち」も美味しいですし「おろしポン酢」もいいですね。使うオリーブオイルや、たまり醤油、粒マスタードなど、好みの銘柄に出来ますし・・・それなりの金額のお店に行っても、料理に添える調味料に気遣いが無く食べ飽きてしまう事が多いのですが、自分のところでは妥協無く用意出来ます。
ワインは、工房構成員の甲斐凡子が用意したイタリアのGAJAのブルネッロ・ディ・モンタルチーノRENNINA2010。丁度飲み頃で、大変おいしゅうございました。
デザートは、たまたま甲斐のお祖母様から大量のリンゴをいただいた際につくっておいたリンゴのコンポートを使った「リンゴのミルフィーユ」です。
そして食後は、食後酒と葉巻などでゆっくりと。
私も甲斐もタバコは吸いませんが(細かく言うと発酵の強い黒タバコ系は吸う事もある)葉巻は私も甲斐も時折吸います。
自分のところでやると「デザートおかわり!」とか気軽に出来ますし、食後酒も好きなような好きなだけ呑めますし、葉巻も周りに気遣いなく吸えます。好き勝手出来るのが良いです。
年末が近づくと
年越し蕎麦的なものを食べたり・・・
この時は、蕎麦は質の良い乾麺を使っています。最近の蕎麦の乾麺はとても質の良いものがあり、変に生のものを買うよりも美味しい場合があります。自分でパスタマシーンを使って蕎麦を打つ事もありますが、普段は流石に面倒なのでやりません(粉が散るので!)
だいたいリクエストは「鴨せいろ」です。
鴨肉は、モモと胸肉を用意し、胸肉はロゼに焼き上げ、出た脂でネギを焼きます。焼いた際に出た肉汁はつゆに入れます。モモの方は蕎麦つゆで煮ます。それはモモ肉の入ったそばつゆとして出します。個人的に、殆どのお店の鴨南蛮に納得しないので、自分の好きなように作ります。
こういう時に合わせる日本酒は、だいたい菊姫が多いです。家族もスタッフも加賀の「菊姫」が大好きなのです。
菊姫のお酒は米と麹の旨味がしっかり出ており、熟成感があります。味わいは吟醸系のものであっても通常よりも濃醇と言えるでしょう。日本酒ですが、中華や洋食に合わせても負けずにマリアージュします。スパイスを使った料理でもイケます。
最近流行りの、やたらに精米歩合を上げた、ラムネとかメロンとかリンゴの香りがする平板な甘口の酒ではないところが良いですね。ああいうものは食前酒としていただいたり、山菜料理に合わせるのには良いですが、食中酒としては向かないと個人的には思います。菊姫さんは色々新しい試みもしている蔵ですが、どれを呑んでも「菊姫の味」がします。これは凄い事です。
・・・と、そんな感じにしていると、身内が外食してくれないのであります。
かといって、私は料理を作ったり片付けをする事に全く苦痛を感じないので、それもまた楽し、なのですが・・・
ですので、私は日常でも年がら年中、料理を作っています。
(ヘッダー写真は、ウチの娘が成人し二十歳になった時のお祝いであけた、娘の誕生年のワインです。それも自宅でした)