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【読書記録#10】 流れる星は生きている 藤原てい 著

<2023年5月4日にインスタに投稿したものをシェアしています>

名作家、新田次郎の妻であり、数学者の藤原正彦の母である藤原ていの自伝小説。

5歳と2歳の幼児と生後1ヶ月の乳児を抱え、子育てに奮闘している最中、突然、夫に告げられた満州脱出。そして数日後に迎えた終戦。南下途中、ソ連軍に38度線を封鎖されてしまう。

平壌郊外での他の家族との1年ほどの共同生活も先が見えず、このままでは死んでしまうと、38度線を突破するべく南下を決心。国境が通れないので、幾つもの川や山を越えていくのだが、想像を絶するほど過酷。たくさんの人々が命を落としていく中、母一人で3人の幼子を抱えての逃避行に只々感服。以前、言論テレビに藤原正彦先生が出演されていた回で本書について「国境を通らずに山を越え川を越え、その間にみんな死んでいく。母に言わせると、子連れが一番強かったと言います。子供のいない人は死んでしまう。男だけでも死んでしまう」と仰っていた。子供を守ろうという母の気持ちが生き抜く原動力となっていたのだ。

あとがきにも涙。引き揚げ後、体を壊していた筆者は子供達へ遺書の代わりに本作品を書いたそうだ。

私の祖母も満州で叔父を出産し、翌年そこで終戦を迎えた。また、祖父は一時ソ連軍の捕虜となっていたので親子で引き揚げてきた。祖母から聞くその当時の話といえば、ソ連軍に指輪などのアクセサリーを没収されたこと。いざとなったら、嬰児であった叔父と一緒に死ぬ覚悟でいたことぐらいだ。私の知っている祖母はいつも毎日きちんとお化粧をし、歩いてすぐ近くのスーパーでさえも、イヤリングをしたりお帽子を被ってオシャレをして行くような人だったので、引き揚げがどれほど大変だったかピンと来なかったのだが、著者のような過酷なルートでなかったとしても、祖母にも思い出したくない辛い思い出がたくさんあり、話したがらなかったのかもしれない。

本書には書かれていないが、棍棒やナタを手にした朝鮮人に女性が攫われたことや所持品の略奪、またソ連軍による虐殺事件(葛根廟事件)では1,000人以上の日本人女性と子供が虐殺されたことを忘れてはいけない。

名著の中の名著。
多くの方に読まれますように。

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