20代最後の春。変わること、変わらないこと。
20代で迎える最後の春が来た。
29歳の私はこの半年で、恋人と別れ長く続けた吹奏楽団を辞め、実家暮らしを卒業して一人暮らしを始めた。
去年の今頃、昔好きだった人と大きな公園で昔話をした日からちょうど一年後の来週は、今好きな人と水族館デートの約束をしている。
1年間なんてあっという間で、私の20代の時間はあと半年も残されていない。
「30までにとうるさくて」にドハマりして1時間ループの「真夜中のドア~stay with me」を流していた冬を経て、「Tick, tick... BOOM!」にドハマりして1時間ループの「Sextet Montage」「johnny cannot decide」を流している春を迎えた。
30歳までのカウントダウンをテーマにした作品にしっかり捉えられながら、最近30歳になったばかりの好きな人のゆるさに救われて、なんだかんだ迎える未来を楽しみに思っている。
この半年は、色々なことから意図的に離れていた。
元彼がかなりガツガツした人で、私はそこに引っ張られて無理をしていたところがあったのだと気付いた。
これまで7年間の社会人生活の中で、一番仕事が忙しい時でもあった。
がむしゃらに目の前の仕事と向き合い力づくで進める日々は、大変だったけれど一段階大人になれた気がした。
仕事が落ち着いたわけではなくて、バリキャリと私の過ごしている世界との違いはなんだろうと考えたりするけれど、それでも今いる場所に満足はしているし、私はこの仕事を続けることを、またひとつ選択している。
いつかの夜、好きな人と夢の話をした。
ひとしきりこんなところに行ってみたいという話をした後に、もっとしっかり人を支えられるスキルを身に着けたいのだと伝えた。
今取り組んでいる時間を楽しみながらやっていければ大丈夫と打ち込まれた彼からの返信に、この人の温かさと共に生きていければいいのにと思った。
恋なんて一度だって上手くいかなかったけれど、人生最後の恋くらい、好きな人に振り向いてもらいたいなんて、我儘な悩みが止まらない。
1年前から、随分遠いところまできてしまった。
未来は想像できないから面白く、時に厳しい。
理想の未来をいくら描いても、それを揺るがす出来事はいくらでも起きるし、その度に未来の計画は立て直さなければならなくなる。
だけどそれでも、その度に自分に問い直し、精度の上がった視点を持てるのだと思う。
自分自身については輪郭をなぞることでしか理解を深められないからこそ、縁取りを探りながら本当にフィットするものを探し続ける旅路が、年を重ねることの醍醐味なのかもしれない。