宿題はスマートに♪

こんにちは、辰巳です。

音楽講師の皆様、生徒さんに練習の宿題を出しても、きちんと取り組んでくれなくて困る事はありませんか?

せっかくレッスンノートに宿題を書いているのに、意味がない!

出された宿題をきちんとこなしてくれたら、今頃もっと上達していたのになぁ、、

と思うものの、、、

なかなかそうはいきませんよね^^;


こんな時は、「スマート」に宿題を出してみてはいかがでしょうか(^^)


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SMARTの法則

「SMARTの法則」では、課題に対するモチベーションを高めるために5つの要素があるとされています。

まずはザックリと説明から♪

画像1

Specific(具体性)

課題には具体性が必要です。

Measurable (計量性)

どの位進んだか、何%位達成できているかが分かる尺度が必要です。

Achievable (達成可能性)

出来ない事や難し過ぎる事を課題にしない。

Relevant (関連性)

目的と課題との間に明確な関連性が必要です。

Time bound (期限)

「出来る時にやる」または「出来るだけ頑張る」では進まない。


これら5つの頭文字を取って、スマート(SMART)という事です(^^)


ではコレらを踏まえて、次のレッスンシーンにおける、様々な宿題の出し方を見てゆきましょう。


レッスンシーン

【ツェルニー30番前半を練習中の中学生。譜読みは何とか最後まで出来たけど、その先がなかなか進歩しない状態。レッスンではそれなりに頑張るものの、自宅練習ではなかなか成果が出ない】

①「ノー•スマート」な宿題

「来週までにもうちょっと弾けるようになっておいでね」

「来週までにミスを無くしておいでね」

コレは、SMARTではありませんね、生徒さんのモチベーションは上がりません。来週までに、というのは一見「期限」に見えるかもしれませんが、その期限までに何をすれば良いのか分からなければ期限は意味を成しません。


②SRな宿題(具体性と関連性)

先生「この曲は左手の16分音符の速い伴奏が鍵だよね、だからまずは左手の速い動きをマスターしよっか(関連性)。こういう動きの時はどんな練習したら良いかな(教えないレッスン参照)

生徒「リズム練習ですね?」

先生「正解!じゃあ今週は、付点•逆の付点•スタッカートで左手を練習してこよっか(具体性)」

先ほどよりもグッと練習方法が分かりやすくなりました。練習方法を先生ではなく生徒の口から言わせている点も良いですね(教えないレッスン)。

このままでも良さそうな宿題の出し方ですが、

SMARTを参考にさらに改善してみましょう♪


③SMARTな宿題

先生「この曲は左手の16分音符の速い伴奏が鍵だよね、だからまずは左手の速い動きをマスターしよっか(関連性)。こういう動きの時はどんな練習したら良いかな

生徒「リズム練習ですね?」

先生「正解!じゃあ今週は、付点•逆の付点•スタッカートで左手を練習してこよっか(具体性)」

(ここまでは②と同じ)

生徒「はーい」

先生「リズム練習、テンポはBPM120まで上げられるかな。リズム練習はゆっくりだと簡単であまり意味がないから」

生徒「うわー、ギリギリいけるどうか!」

先生「もし120までいけなくても、いくらまでなら出来たか数字教えてね(計量性)」

生徒「80くらいから始めたら何とかなりそうかな、、(達成可能性)」

先生「次の発表会でアノ曲弾くんだよね?となると、このツェルニーは今月中に仕上げないと発表会の曲に取り組めないよね(期限)」

生徒「ホントだ、頑張ります!」


ちょっと強引にSMARTな会話にしてしまった感はありますが^^;

同じ力量の生徒でも、①〜③の宿題の出され方では成果に差が出そうですよね( *´艸`)


無理にSMARTにしなくても良い

仕事であれ、楽器の練習であれ、SMARTの全項目をフルコースで守る事に意味があるシーンもあるかもしれません。

しかし、「SMART」という手段をコンプリートする事が目的になっては本末転倒、SMARTはあくまでメインの目的を達成するための手段です。

ですから、場面場面で「課題達成が進まないのはどの項目が欠けているのかな?」という状況判断をして、柔軟にSMARTの部分使いが出来る事も大切です。フルコースにこだわり過ぎて本来の目的を見失わない視点も大切です。


SMARTの部分使いの例


【Time bound (期限)の応用】

仕事であれば納期などの「期限」が決まっているかもしれませんが、楽器練習では、発表会や試験などがない限り、日常のレッスンで「期限」を設定する事はあまり現実的ではないかもしれません。

ですから、なぜ「期限」がモチベーションアップに繋がるのかという「期限設定の意図」を理解し、その「意図」を応用する方が日常使いに即しています。

「期限設定の意図」とは、計画的遂行と、作業の集中力のアップです。

そう解釈すれば、下記のような例も「期限」と言う事が出来ます

[期限応用の例 : 曲中に転調などがあり、和音や指使いが変則的で、そのフレーズが来るといつも止まってしまう]

レッスンでよくあるシーンですね。

ここで、そのフレーズを繰り返し部分練習をさせるとした時に、次の①〜③のどの表現が最も集中出来るでしょうか。

①「出来るようになるまで繰り返し弾いてね!」

②「5回弾いて、5回のうちに出来るようになるように!」

③「今からまず3回弾いて、その間に暗譜しよう。4回目は暗譜で弾いてみて、覚えてない所があれば楽譜をチェックして、暗譜で5回目を弾くようにしよう!」


いかがでしょうか。

①のように「出来るようになるまで」というのは、一見「期限」のようにも見えますが、漠然とし過ぎていて期限設定の効果は見込めません。

②は、「5回という期限」を決めて練習させる事で、何回弾いても良かった①と比べて、一回一回に対する集中力がグッと上がります。

③は、さらに集中力を高めるために「3回で暗譜」というオプション付きの期限を設定しています。一回一回に対する集中力は益々上がります。


このように、期限とは「◯月◯日までに」「発表会までに」といった日時に限定せず、集中力に資するリミット設定でも良いのです。


【Relevant (関連性)の応用】

「2小節のフレーズが2回繰り返して出てくる時に、1回目と2回目で指使いが違う。生徒は、混乱して、1回目の指使いも2回目の指使いもどちらも全然身に付かない」

これも時々ありますね、ツェルニーなどでよく見かけます。

ここでの課題は「指使いを理解する事」です。

指使いを覚えられない生徒さんの多くは、何故その指使いが書かれているのか、「指使いの意図」を理解出来ていません。

同じ「ドミソ」なのに、なぜ1回目は「135」,2回目は「124」で弾くのか。

こういう場合はたいてい、前後の脈略からそうなっているわけですね。

ですから生徒さんには、「ココとココは指使いが違うから気を付けて正しく弾いてね」と注意するのではなく、

今やっている事、つまり「この指使い」が前後のフレーズとどう関連しているかを理解させるのです。

関連性が理解出来た生徒さんは、あっという間に指使いを覚えてしまうでしょう。

関連性とは、自分がやっている作業の「意味」が理解出来ているという事なのですね(^^)


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ご紹介しましたような例は、経験豊富な先生方ならきっとたくさんネタをお持ちだと思いますので、ここではこの位で( *´艸`)

でももし、宿題の成果が上がらなくて困った時は、SMARTのどこかが足りないかな?と考えてみるとモヤモヤ解決の手がかりになるかもしれませんね♪

また、

是非ともSMARTを意識して取り入れてみよう!と思われる場合は、いきなり全項目ではなく、やりやすそうな物から1つずつ実践してゆく事をオススメします。

SMARTは「道具」ですから、使いこなせてナンボ。慣れないうちに、いきなり全項目を意識すると「使う事」が目的になり「道具に使われる」状態になりかねません( *´艸`)

1つずつ使い慣れて、バリエーションが増えてくると、益々レッスンをストレスなくラクに進められるようになると思います♪


お読みいただき、ありがとうございました♪




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