食品衛生法改正を受けて旅の仕事における新たなミッションの発見
「産直とは、生きる民俗博物館」で産直愛を語りながら、これから数ヶ月の間に、産直の風景が変わる地域と、変わらない地域、に分かれてくることに思い巡らせている。
売り場から商品がなくなるだけの話じゃない、
土地の味がなくなるかもしれないのだ
食品衛生法改正の経過措置期間が2024年5月31日に終わるので、漬物製造販売は営業許可制となり、製造施設の整備が求められる。集落の農家のおばあちゃんが自分の台所なんかで作っていた漬物はいままでのようにはいかなくなって、売り場から消えるだろう。衛生リスク減るのはもちろん賛成。だけど、個人でこの設備投資ができるかどうかは、財力以前の気力と、実際あと何年やれそうかねという年齢的なところも大きいと思う。これは、ばあちゃんの生きがい守ってあげたいとかそっち側から見てる場合の話ではなく、土地の味を守れるか伝承できるかどうかの瀬戸際。こればっかりは一度失ったら作り直せない。
潮時か、前進の時か。「文化伝承の選別」にすら感じる分かれ道
ここで、町の人が作り続けることができるように共同加工場を整備して仕組み化する町と、どんなにばあちゃんたちが相談に行こうと「だめらしいです」で終わらせる町に分かれてくる。「役場に共同加工場についての可能性を聞きに行ったらそこでグループ利用すると法に沿わなくなる」という理由で突っぱねられたと肩を落としていたばあちゃんたちにも会った。その微妙なラインにおける消極的な判断はなんなんだ。経過措置期間にマックスでチャレンジしないのなぜ。保健所における通過の可能性って地域ごと担当者ごとに幅ありすぎる感触が前からあって、ひたすら潰していくとこと、乗り越えられる方法を一緒に考えてくれるところの2タイプに分かれる。
前進を遂げる地域の手法と心意気を覚えておきたい
各地の運命の別れ具合を見ていて素晴らしかったのが以下の事例だったので、メモ。こういう前向きな仕事ができる人でありたい。
どうすれば壁を越えられるかだけを考える人たちの気合いと能力の高さを見せつけられた事例だ。今度いぶりがっこ買うなら横手のを選ぼうと思うし、そんな経緯を辿って売り場に出続けるばあちゃんのいぶりがっこを産直で買うために横手に行ってみたくもなった。商品や地域の印象や思い入れとはそういう気持ちから生まれるのだと思う。
改正法経過措置終了が迫るなか、秋田の伝統食「いぶりがっこ」も途絶えてしまうのか、というシーンにて、取られた手法がこちら。
自分の仕事を考える
そんな学びと憤りを一周してから、さて私がすべき仕事とはと考える。産直訪問の魅力が縮小する地域での郷土食をめぐるツアーのあり方だ。
「料理教室」の自宅開催はいまだ許認可不要。だとしたら。
全国のお漬物製造事業者さんに一律に規制がかかることで、産直からお漬物の姿が見られなくなるかも、産直の棚がメーカー品主体となってこれまでのようなリアルな文化交流の場としてのエネルギーがなくなるかも、と地域の食文化伝承に逆風ななか、「料理教室」の自宅開催はいまだ許認可不要という無風状態であるという事実。ここが、狙い目であり、ミッションである。
おばあちゃんのいつものお台所で、おばあちゃんのお漬物習っていいのだ。体験型観光企画の出番ではないか。産直で「この地域の匠だな」と、光を放つ品に記されていた名前。あの方々が「ちょっと早いけど、ここらが潮時だねぇ」なんて言って思いがけない引退しようとしているのなら、そのお台所へと旅をさせていただくツアーをつくるのがこれからの体験型観光の仕事だろう。