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曽祖父の遺した耕作放棄地再生vol.4発見から開拓の約10ヶ月の経過観察

2022年5月。曽祖父が管理していたものの、戦後は活用されなくなった畑(現・耕作放棄地)を、父の他界をきっかけに50年ぶりに開拓し始めました。

兼業米農家として毎年の米を育てている一方、

慣行農法ではなく無肥料・無農薬での野菜栽培、時が経つほど生態系が豊かになる土地の管理方法などの探求・実践を積み重ねてきた私にとって、

手付かずかつ自由にしても良いフィールドというのは、とても魅力的なものでした。

前回までで、雑草が生い茂り荒れ放題だった状態からようやく足を踏み入れてじっくり植生を観察できる段階になりました。

2023年3月。つい先日もこの土地を訪れたのですが、その環境の変化の大きさに驚きました。

今回は、春を迎えつつあるこの土地の、開拓前後の変化をまとめようと思います。

2022年5月。曽祖父の知り合いを辿り、場所を特定

昨年2022年の5月連休。田植えも一段落した後にご近所さんの伝手を辿り、かつて曽祖父が耕していたという土地の特定に至りました。

軽トラで進んでいくと、鬱蒼とした藪になっている耕作放棄地が続く

自分にとっては初めて訪れる土地ですが、初夏を迎えつつある耕作放棄地の雑草はその勢いを増していました。

軽トラを飲み込むような勢いの雑草と木々

ここから気温が上昇する夏にかけて一気に草が生い茂り、今、この場で開拓を始めたとしてもすぐに再生してしまうことは目に見えていました。

人が踏み入れることを拒絶するような藪

2022年6月。土地を再訪し、草刈りを試みる

それでも諦めたくないので日を改めて6月に訪れてみると、生い茂った雑草が深い陰を作り、ますます人が立ち入れないような状態になっていました。

前回の訪問よりボリュームアップしている草むら

今回は、意を決して一度足を踏み入れてみることにしました。

足を踏み入れてみると、足元に何があるのかが全くわからない状態です

腰の高さほどある雑草が茂り、わずかばかりのスペースに足を踏み入れますが、足元に何があるのかもわかりません。

季節的にヘビなども活動している最中のため、細心の注意を払う必要がありました。

何本か立ち並ぶ木々に蔦が絡まっている

この時、準備してきたものは鎌ひとつ。多勢に無勢といったところです。どこまで行けるのか、肝試しのような感覚になってきました。

人が立ち入らない土地は、その土地独自の生態系が形作られ、未知に対する恐怖を人に与えます。

この時も、自分は招かれざる客であるような居心地の悪さと小さな恐怖を感じていました。

奥へ進むと木立によって開けた土地も確認できました

しかし、深追いは禁物です。仕方がないため、この土地の開拓は冬になるまで待つことにしました。

2022年12月。年末年始を利用し、本格的に開拓開始

昨年末の12月。冬を迎え、草の勢いも弱くなった頃合いを見計り、ようやく開拓のために再訪することができました。

多くの雑草は枯れつつあり、勢いも弱くなっている様子です

軽トラを乗り入れるにも、舗装されていない道に伸びてくる枝や草に遠慮する必要もなくなり、今回は上手く開拓できそうです。

今回は、エンジン式の草刈機も持参したため、本格的にこの未開の土地を切り拓いていくことになります。

常緑樹の緑以外は、寒さによって枯れつつあり、この枯れ草を刈っていきます

目印は、枯れ草です。この枯れ草を草刈機で刈っていき、動線を確保することが今回の主旨です。

心強い装備と万全を期した服装ではありましたが、それでも先の見えない状態に踏み出すのは勇気が必要でした。

いざ、エンジンをかけて草刈りの開始です。

下草を刈っていくと、少し動線が見えてきました

草を刈っている最中は、とにかく夢中で作業に没頭していました。

夏の間ではとても想像できなかった、数十年前当時の土地の形や植え込みの地形が明確になってきています。

木立の並ぶエリアは、雑草の植生も落ち着いており、隙間が見えます

4〜5mほどの木々が立ち並ぶエリアは雑草も少なく、土地の環境としても落ち着いている印象を受けます。

木々の根が土を耕し、土中で伸びた根が菌糸を張り巡らせ、生態系のバランスを保つ仕組みが働いているのかもしれません。

木立の並ぶエリアを抜けると、広々とした空間が見えてきました

ようやく、この耕作放棄地の全容が見えてきました。

これまでは、先の見えない中で作業を続けてきましたが、ここからはこの場所に何が生えているのか?かつてどのような作物が育てられていたのか?などの植生をじっくり観察していくことが可能になりました。

2023年1月。真冬の朝の植生調査

年末年始の休みを利用して草刈りを大々的に行った後、1月某日の真冬の早朝に土地を訪ねてみました。

少しずつ新しい環境に開拓を始めた私自身も、そして土地そのものも慣れつつあるような感覚があります。

草が刈られたことでできた風の通り道が木々を揺らし、藪化していて絡まっていた枯れ枝が地面に倒れる・落ちるなどして少しずつ自然の営みが促進されているようです。

朝日が差し込み、日向と日陰がくっきり分かれています

何度か短い間隔で足を踏み入れているため、土地も随分歩きやすくなってきました。

あまりに大人数で押しかけると土地が傷んでしまうこともありますが、私一人プラス数名程度であれば、さほど大きなダメージはないようです。

奥へ進むと、樹々の立ち並ぶスペースも風通しが良くなり、爽やかな空間に変わりつつありました。

太い木の幹と絡みつく蔓草の様子もよくわかるようになってきました

この木立の間を抜け、広々としたスペースに向かってみると、地面に近い部分は霜に覆われており、草の高さや土地の平坦さもわかりやすくなっていました。

樹々の向こうには田園風景も見えるようになってきました

朝の時間、一人でゆっくりとこの場所に佇んでいると、自然と周囲の植物へと目を向ける余裕が出てきました。

どうやら、この辺り一帯は木通(アケビ)と荒樫(アラカシ)が主役であり、その他グミの木や梅などもごく僅かですが植えられているようでした。

楕円形の葉が可愛らしい蔓草の木通(アケビ)

かつて、この土地で植えられていただろう木通(アケビ)は生薬として使うことや、果実を食することも可能な品種ですが、園芸や畑を行うとなったときに目にすることは滅多にありません。

かつては曽祖父たちが利用していたのだろうか……と思いを馳せていました。

荒樫(アラカシ)の苗木

また、荒樫(アラカシ)は見渡してみると何本も苗木が育っていました。どんぐりによって増えていく樫の木の一種ですが、時間をかければ数十メートルにもなる高木樹です。

ご近所の鎮守の森にも荒樫が存在するため、古来よりこの周辺で生息していた種類の樹種であるようです。

詳しくは前回の記録にも残してあります。

少しずつ、この土地の地形や植生も見え始め、どのように活用しようかイメージもできてきました。

2023年3月。環境の変化、動物の出入りを確認

春が訪れつつある耕作放棄地ですが、季節の移り変わりによって様々な変化を見つけることができました。

同じアングルで軽トラを停車しても、景色の違いがよくわかります

まず、この土地全体の風通しがずいぶん良くなり、解放感が出てきました。

入口近くの向かって右手のスペースは蔓草による閉塞感が緩和され、透かして奥が見通せるようになってきました。

また、足元に目をやれば、何か濃い緑色の植物が新しく育ってきています。

風が通り、歩きやすくなってきた入口付近のスペース

冬までには確認できませんでしたが、水仙が自生していました。先端に黄色または白色の鮮やかな花をつける植物で、蕾が膨らんできており、開花も間近のようです。

水仙もかつて曽祖父が育てていたのでしょうか

このように、予期しないこの土地の植生が見えるのが、開拓のおもしろいところ。

放棄地の開拓には重機で根こそぎ土地を平らにして活用する方法もありますが、個人的にはこの自生している独自の植生も尊重しながら、土中環境や生態系再生に繋げたいものです。

春の訪れはこの土地の他の植物にも影響していて、草刈りの際には厄介に感じていた野茨の新芽も出てきていました。

色鮮やかな若い新芽を出している野茨

野茨の棘は服に引っかかったり、手袋も貫通してしまったりと作業時には困った扱いになるのですが、このような新芽の状態であれば愛らしく感じます。

一通り一帯を歩き回ってみると、どうやらこの土地の雑草を刈り、風通しを良くしたことで動物の出入りも始まったことが確認できました。

おそらく、鹿と思われる動物の糞です。

黒くコロコロした糞が確認できました

藪に覆われた場所では出入りも難しかったかもしれませんが、これだけ開けてくると動物たちの動線も生まれ、それによってさらにこの土地の環境の変化が促進されているようです。

荒樫(アラカシ)も心なしか色鮮やかになってきたように見えます

以上、約10ヶ月の変化を駆け足で振り返ってきましたが、その変化に私自身も驚かされました。

特に、手がつけられなくなっていた昨年6月時点と比べると、ずいぶん土地が解放され、利用もしやすい準備が整ったように思います。

今後、どのように活用していけば良いか?また、どのように活用していきたいかも少しずつ明確になってきました。

次回以降、いよいよここに新しい畑を作り種を蒔く等もやってみたいものです。


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