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ゼロから始める伊賀の米づくり45:父から継いで4年目の田植えを終えて
3年前、父から継いで始めた実家の米づくりもいよいよ4年目の田植えの日になりました。
先日、代掻きを行なって土と水を馴染ませ、平らにした田んぼは以下のようになっています。
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天気も申し分なく、早朝から準備に取り掛かり、田植えを実施することにしました。
田植えの当日の作業
まずは、JAで育ててくれている苗を取りに向かいます。
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JAの育苗センターでは大きなビニールハウスで苗を育てており、これらを受け取って田植えを行います。
農家の中には自前の苗を育てて田植えを行う家もありますが、地元ではごく少数派です。
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さあ、苗を受け取ったら次は田植え機を動かします。
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田植え機を田んぼに移動させ、苗を積み込んで田植えの開始です。
田植え機は一年に一回程度しか載らない機械のため、しばらくは低速運転を行なって勘を取り戻します。
田んぼの端を走る際は、乗り上げたり田植え機の一部が畦道や畝に直撃しないように細心の注意を払います。
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田植え作業の上達には、田植え機の能力と自分の運転技術のすり合わせが重要になります。
X条植えることが可能な田植え機か、ハンドルとタイヤの連携はどうか、凸凹の田んぼの中を真っ直ぐに走れる技術が自分にあるかなど、運転している本人にしかわからない感覚を頼りに、毎年徐々に修正しながら上達をめざす必要があります。
また、スムーズな作業のためには田植え機に乗る人と、地上で待機している人との連携も不可欠です。
苗箱を洗う人、田植え機後方に肥料を積み込む人、苗の受け渡しを行う人など、足腰と腕力を使いながらスムーズな受け渡しや作業の実施により、効率を高めることができます。
ひとつ目の田んぼは、自分史上最速で終えることができたように思います。
また、これ以降は弟にも田植え機を任せ、作業を行なってもらうことにしました。
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弟もまた昨年ぶりの作業となりましたが、すぐに勘を取り戻して着実に田植えを進めてくれました。
途中、苗が足りなくなるのではないか?というトラブルもありましたが、一度潰れてしまった苗を田植え機に積み込んで使い切る、運転と植え付けの量調整を行うなどして無事に注文した定数の苗で田植えをやり切ることができました。
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しかし、田植え機だけではうまく植えきれない箇所が発生したら、実際に人が泥の中に足を踏み入れて手作業で苗の植え付けを行います。
例えば、苗が水分が多すぎて田植え機の植え付け前に崩れて機械を詰まらせてしまう、田植え機が回り込めない走行上の死角が主に端に発生するなどの理由で植え付けができない場合がありますが、人の目と手での田植えが一番確実です。
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手で植えるための苗は、先述の崩れてしまった苗など、田植え機に載せて植えるには不向きなものを田んぼの端に寄せておき、それを人が拾ってスタートします。
泥の中を歩くためにはコツが必要ですが、慣れればスイスイ進んでいくことができます。
ただ、お尻やももの裏、足の裏など普段あまり意識しない筋肉を使うため、人によっては翌日以降に筋肉痛に悩まされることになります。
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弟たちには機械の水洗いを任せておくことで、これもまたスムーズに作業が進みました。
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これにて、一連の田植え当日の作業は一段落です。
4年目の田植えを終えて
改めて、今年も無事に終えることができてよかったなと感じます。
私にとって田植えは、毎年訪れる通過儀礼のようになっており、ここをうまく乗り越えないと今年も気持ち良く過ごしていけるような心地がしてきません。
年明け早々の霜の降りた田んぼの中に入って石拾いをしたり、
冬の終わりが近づき、気温が上昇することで土が緩み、雑草も増えてきたところを耕したり、
田植え直前には田んぼに水を引き、代掻きをしたりと、
実は冬の間から半年近くかけて田植えができる状態へ向けて準備をしているわけですが、田植えを行うと圃場や土の手入れは一段落し、稲の生育を助ける段階へ移行します。
この、自然の変化も感じながら人の手も加わって区切りとなる田植えは、そういった意味で自分にとっては通過儀礼のように感じているのかもしれません。
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4年目の田植えを終えた今、感じることは、事前の準備から当日の実施、後の片付け・撤収に至るまで、新体制での役割分担や交代、作業の出来栄えも徐々に形になってきた、ということです。
父が祖父から継いで自分が主体となって田んぼに関わり始めたのは50歳を過ぎてからでしたが、私は父から30歳の時に継ぐこととなりました。
私は二拠点生活を営んでいるため、父が祖父から継いだ当時とはまったく状況も異なるため、違った仕組みを構築する必要がありました。
それが、今回のこの記録にようにこまめに作業工程などを書き残し、それらを家族内や手伝いを申し出てくれる仲間たちに共有し、チームとして役割分担を明確にした上で臨んでいくことでした。
その試みも少しずつではありますが、形にはなってきたような、そんな気がしています。
地域の諸先輩方もご自身の作業の合間に様子を見にきてくれ、ありがたい限りです。1年ごとの積み重ねを見せていければと思います。
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また、泥の中を歩いて進み、苗を土に植えつけていくと、機械化に至った先人たちの技術革新への感謝が湧き上がってきます。
「こんなにも大変な作業を自動化していくための努力はどれほどのものだったのだろう!?」
さらに、手作業+牛で行っていた時代のご先祖様たちへの尊敬、自然の中にあるいのちと繋がっていく充実感を感じます。
『「農業を株式会社化する」という無理』という書籍を引くと、ある田んぼの中には5600種以上の生物が生息していることが明らかにされています。
それらすべての生物の様子をつぶさに見てとれたわけではないですが、田んぼの中に足を入れ、苗を手で植えているときに感じる「この土は生きているなぁ」という感覚は、もしかしたらそういった人間の目で確認することができないような様々な生物の蠢きのようなものを五感では感じ取っているのかもしれません。
気象条件や自然のあり方は毎年異なり、故に『百姓は毎年一年生』というのが先輩たちの言ですが、今年も豊作になるよう見守っていきたいですね。
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