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ゼロから始める伊賀の米づくり52:雨の多い春の田起こしで土質の違いに触れる
2020年1月、父から実家の米作りを継いで5年目の春がやってきました。
家族経営の兼業米農家という形式上、口伝や暗黙知で伝えられてきた業務フローやプロセス。それらをきちんと見える化し、共有知として遺していこうと始めた記録も、今回で52回目です。
今回は、田植え前に土を耕すプロセスと、その際に気づいた田んぼの土質の違いについての気づきをまとめておこうと思います。
耕しながら土質を見る
例年、3月には春の田起こしを行っていますが、今年は雨が多く、なかなかチャンスが巡ってきませんでした。
雨が降り、水を含んだ土に入ると、後方の回転爪(ロータリー)が土に絡んでしまったり、タイヤがはまり込んでしまったり、また、粘度の高い土の中でトラクターを動かすためにエンジンや動力部に負担がかかったりと、あまり良いことはありません。
それでも、数少ない晴れの続いた日を狙って、今年もトラクターで田んぼに出ることにしました。
まずは、神社前の田んぼです。
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この田んぼの土質は、まずまず。
粘度がそれほど高くないため水の蒸発や浸透が早く、トラクターに負担がかかることもより少ない田んぼです。
それでも、例年より水分の多い状態で耕し始めると、同じ一面の田んぼの中でも場所によって土質の違いがあることがわかってきました。
真っ直ぐ耕しながら進んでいるだけでも、突然、ロータリーに土が絡んでエンジン音が変わったりと、さまざまなシグナルが土質の違いを伝えてくれます。
耕しながら土を観察していると、神社脇に近づくほど水を含みづらいパラパラとした質感の土であり、手前側ほど粘度の高い黒土であることがわかりました。
続いて取り組むのは、より黒土の率の高いこちらの田んぼです。
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トラクターで乗り入れると、水を多く含んだ土にタイヤの轍がくっきり残り、さらに水が沁みてくるというなかなか厄介な状態です。
ただ、この水分を多く含む土であるほど美味しい米がなるという地域の先輩方の教えもあります。
トラクターを田んぼ内でエンストさせないよう、より慎重に耕す必要がありました。
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地表には昨年の収穫以降残っていた稲藁などもありますが、水を多めに含んだ土を耕して行く中で土の中へ混ぜ込んでいきます。
水を張った状態の地中は酸素が少ない還元状態となり、稲の根の生育にも影響を与えます。
トラクターで耕すことは、土に空気や水を送り込みやすくするための作業でもあります。
トラクターの操作そのものにはこの数年で慣れてきており、端に偏ってしまった土を耕しながら中央へ戻すなどの細かい作業も淡々と行うことができました。
さて。いざ、田んぼを耕し終えてみると、土の乾き具合もよく見えるようになっています。
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神社前の田んぼは、やはり写真で確認しても神社近くの画面奥の方が乾燥が早く進み、白っぽくなっていることがわかります。
では、もう一面の田んぼはどのようになっているか見てみましょう。
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こちらの田んぼは土質の違いはそれほど大きくなく、作業を始めた画面左側から右側に向かって徐々に色が濃くなっています。
つまり、耕したことによって空気が入りやすくなった土が徐々に乾いていってる様子がそのまま確認できるような様子です。
感覚でなんとなく田んぼにとって、稲にとって良い状態・良くない状態などがわかるようになってきましたが、言語化してみるとなかなか興味深い現象が作業の中で起こっているなぁ、と感じます。
さて、最後は土や泥で汚れたトラクターを洗浄します。
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これにて、作業は一段落。
次は、4月末に水を張って代掻きの予定です。
水を含んだ土、乾燥しつつある土
今回、トラクターで作業しながらさまざまな状態の土の様子を観察できました。
以下、その中でも特に顕著でわかりやすかった2つの画像を見てみようと思います。
まずは、水を多く含んだ土です。
色は黒っぽく、一部水が染み出してきている様子がわかります。
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続いては、神社脇の小さなスペースの田んぼです。
こちらは小さいスペースながらも土質に大きな違いがあり、それは作業後の土の色からもよく確認できます。
以下の画像を見てみると、画面手前側、画面奥が水分を含んだ濃い茶色になっていますが、中央付近は土の乾燥が進み、白っぽくなっています。
トラクターで作業していても、水を含んだエリアに差し掛かると途端にエンジン音が変わり、水を含んだ土の中で動くために負荷が大きくなっていることを知らせてくれます。
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今回の作業は例年、あまり意識せずに行っていた田んぼの中のエリア別の土質の違いにも着目しながら行うことができました。
毎年、続けて行く中で違った発見があるのは面白いですね。
さて、父から継いで5年目の田植えまでもうすぐです。
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