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一般社団法人BowLの歴史をつまびらくインタビューシリーズ第1章:創業期|2013年〜2014年(前編)
本記事は、一般社団法人BowLの歴史を紐解く「つまびらきプロジェクト」を立ち上げられた徳里政亮さん(まっきー)にお声がけいただいてスタートした、BowLの歴史を紐解くインタビューシリーズ第一弾です。
2013年1月に創業された株式会社BowLは、沖縄県浦添市に拠点を置く、県内初のうつ病特化型のリワーク(復職・再就職)専門機関です。これまでに500名にのぼる方々の復職・再就職を実現されてきました。
うつに陥った方のサポートだけではなく、そもそもうつにならない社会づくりをめざすBowLは、新しい働き方・組織の作り方・制度設計を自社自ら積極的に挑戦し、BowL独自の「チームシップ経営」及びチーム、組織、経営支援アプローチを開発してきました。
2020年には、うつを発症させず、健康的に働ける組織づくりをポリネーション(他花受粉)していくことをめざし、一般社団法人ポリネを設立。ポリネでは、経営者・マネジメント層を起点に、人と組織がより健やかな状態へ変容していくための独自プログラムを提供されています。
さらに、株式会社という法人形態と諸制度が、BowLが志向する経営のあり方と乖離しているという点から一般社団法人BowLへの移行を決断。
2024年10月1日を以て一般社団法人BowLとして第二創業されました。
第1回となる今回は、一般社団法人BowL代表理事、一般社団法人ポリネ代表理事の荷川取佳樹さん(ニカさん)と、BowL及びポリネの創業メンバーである徳里政亮さん(まっきー)のお二人にお時間をいただき、創業前後2012〜2014年あたりのBowLについて伺いました。
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創業期のBowLとは?
―本日はよろしくお願いします。改めて、創業したばかりの株式会社BowLがどのような変遷を遂げてきたのかを教えてください。
徳里(以下、まっきー):
株式会社BowLは2013年1月23日に設立されました。
創業資金を沖縄銀行から借入を行うことで調達し、また、沖縄県に指定障害福祉サービス事業者としての申請を行っていました。うつ病の方の復職を支援する生活訓練(自立訓練)の事業所としての申請です。
2013年5月1日のリワーク・ステーションBowL開所時には、ニカさん、僕、精神保健福祉士の資格を持ち、サービス管理責任者(サビ管)を担っていただく城間直也さん、星野知子さんの4名の社員体制でスタートしました。
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開所当初、研修生(BowLでは利用者のことを研修生と呼んでいます)は2名程度からのスタートで、7月にはキャッシュアウトしてしまうかも!?という状況でした。
そのため、2013年のBowLはまず経営を軌道に乗せ、成り立たせることにチャレンジしていました。
僕は当時、BowLの総務・経理の役割も担っていて、BowL創業時から月次決算も出すなどしていました。
その後、BowLは2013年11月には単月黒字化も実現できました。
当時の事業について振り返ってみると、うつ病になってしまった方の復職支援をめざして創業したのですが、実際、蓋を開けてみると無職状態の方や引きこもりになっている方が多く、再就職支援のニーズが顕在化していました。
そのため、2014年3月1日に沖縄県から正式に就労移行支援事業者としての認可も受け、再就職支援にも取り組んでいく体制を整えました。
会社の設立、事業所の開設まで
―創業前後を振り返ってみて、ニカさんはどういったことが思い出されますか?
荷川取(以下、ニカさん):
BowLを創業する以前、私は外資系生命保険会社に勤めていて、障害福祉の領域での経験がなかった。なので、株式会社アソシアにインターンとして参加し、朝から夜中まで働く中で支援について学んでいました。
BowL創業のきっかけとなったのは、私の親友がうつ病になってしまったことです。明るく社交的で仕事も優秀だった男が、ずーっと会社に行けず寝込んでいる日々が続き、職場復帰がとても無理な状態に陥ってしまっていた。それでも、彼は復職を望んでいました。
このことが、うつ病の方々の社会復帰、復職支援を行うBowLの起業に繋がりました。
ただ、当時は迷いもありました。
障害福祉の領域において、復職支援を行っているという事業者は当時少なく、「でも、それをやりたいんだよな」と思っていて。そんな時にある精神科医と出会いました。
その精神科医の話から産業保健分野と呼ばれる領域があることを初めて知り、ここから事業計画も進むようになりました。
毎晩のように事業計画を作り直しながら、2012年の12月にようやく納得のいく案が出来上がってきて、年明けには銀行へ行くことになりました。
この頃に考えていたことは3つ。
申請を無事に通すことができるのか?ということと、事業所を開設するためのお金の問題、そして、一緒に事業をやっていく人をいかにリクルートするか、でした。
事業所開設までに起こった事件
ニカさん:
まず、直前まで協力をお願いしていたサービス管理責任者となる専門家の方が、突然辞退されるということが起こりました。
ご縁のあった大学教授に紹介してもらう形で、専門家として城間が加わってくれることになり、また、私の前職からの繋がりで星野の参加も決まりました。
次に銀行に向かうのですが、銀行が融資するには沖縄県への申請書類が欲しいと言われます。そして、沖縄県からは事業所の写真が欲しいと言われます。
融資が下りなければ事業所を開設できないし、事業所の写真がなければ県の指定を受けられない……?
さらに銀行からは、私たちが経営実績のない初事業ということで3000万も貸すことができないという話になり、300〜500万くらいの規模で始めてはどうかと規模縮小の提案までなされました。
知人の経営者や税理士の協力があり、経営実績でなく専門性に着目してもらうことで融資決定にこぎつけることができました。
2つめの事件は、事業所の開設直前の出来事。
2013年5月1日の開所をめざして4月27日に指定障害福祉サービス事業者としての申請を県に提出したのですが、4月29日に突然電話がかかってきました。
どうやら荷川取は施設の管理者要件を満たしておらず、このままでは指定することができない、との内容でした。
2月末からは事業所の内装工事が始まっており、そこに2000万円近く注ぎ込んでいます。どうにかして指定を受けられるようにしなければ!との思いで必死に方法を探しました。
ギリギリのタイミングでひらめいた「サービス管理責任者と管理者を城間が兼務する」というアイデアを県担当者に提案したところ無事受理され、5月1日に無事に開所できる運びとなりました。
法人設立〜2013年の終わりまで
ニカさん:
これらの事件に対処しつつ、1月に法人登記を終えてからは精神科医も交えてリワークプログラムの企画構想に取り組んでいました。
2013年はとにかくノートにメモをたくさん書いていて、書き込むたびに解像度が上がっていました。当時のノートを見てみると、完成時の事業所もほぼイメージ通りのものが描かれています。
事務所が工事中の時期から、仲間たちとカフェに集まってランチミーティングしながら話し合っていましたね。
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5月1日の本オープンまでに事業所の内装工事が終わると、見学受付も開始しました。
利用希望者の方の多くは、実際に事業所を見てみないとという方も多かった。というのも、当時のうつ病や精神疾患を扱うケア施設のイメージは決して良いものではなかったから。
また、この時は専門家の方の見学者も多かったですね。
5月の事業所のオープン後、少しずつ契約者が増えてきましたが、BowLの利用対象でない方々の問い合わせも多く来るようになりました。うつ病ではないという方や、復職・再就職をめざすというより居場所探しを一番のニーズとされている方などです。
通所実績に応じて報酬が支払われる障害福祉サービス事業所としては、契約者数が増えることは経営上重要です。
利用対象でない方々を受け入れることは経営上の安定に繋がるものではありますが、BowLとしてのあり方を大事にするため、そういった方はお断りするということもしていました。
経営が立ち行かなくなるかもしれない、ということも当然頭をよぎりましたが、なにより信念をつらぬくことが大事だと仲間と共に決意したのです。そうすると7月〜8月にかけて1人、2人と契約者が増え、9月には10名を超えていました。
報酬は2ヶ月遅れで入ってくるため、BowLの経営が落ち着いてきたのが年明け頃だったと思います。
まっきー:
創業間もない2013年から、BowL主催でストレスやうつ病について理解を深めるためのセミナーや懇談会を開催していました。一般の方を対象としたものや、うつ病当事者の方、ご家族の方、企業の人事保健担当者・マネージャーを対象としたものまで形もさまざまでしたね。
この頃の僕はチラシのデザインもやっていて、何度もニカさんからリテイクのフィードバックをもらっていたなぁ。
本当にソーシャルベンチャーやってるなぁ、という感じでしたね。
2014年、BowLが始めた新事業とは?
―2014年はそこからどんな年になったのでしょうか?
まっきー:
2014年は、3月1日に沖縄県から就労移行支援事業の指定を受け、より復職・再就職支援に踏み込んだサービスが提供できるようになり、ジョブトレーニング(職場実習)という独自サービスを展開しはじめましたね。
職業リハビリテーションであるリワーク支援は、BowL内のプログラムだけで完結できません。
また、社会復帰するとなった場合、居心地の良いBowLに慣れすぎてしまってもいけません。そこで、BowLと関係のある複数の企業に了承を得て、BowLの外に出て行う就労支援を展開し始めました。
また、実際に働いている方……それも誰もが知っているような経営者ではなく、普通に働いている人をゲストに招いたBowLキャリア塾という取り組みもスタートしましたね。順風満帆に見える人だって、実は様々な困難と向き合いながら仕事しているという事実を、研修生に対して等身大の言葉で語っていただく、実にBowLらしい取り組みです。
沖縄のアイスクリームブランドブルーシールの水田社長(当時)に登壇いただいたことも印象に残っています。
ニカさん:
BowLに来る多くの方が、「仕事が辛い」と感じて心が折れている。
その、「仕事は辛いものである」という考え方を、実際に働いている方々に話してもらうことでパラダイム転換しようと試みていましたね。
まっきー:
また、2014年はclubBという事業が新しくスタートしました。これは創業当初の事業計画書にも書かれていた取り組みですね。
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既に働いている方や、復職・再就職された方を対象とした認知行動療法プログラムで、今でいう就労定着支援に当たるサービスです。
―当時のニカさんのブログ記事を拝見してみると、「下流から上流へ」という表現がありますね。メンタル不調になってしまった方へのサポートから、そもそもメンタル不調へ陥らない組織、社会づくりというのは今のBowLにも通じている部分だと感じます。
ニカさん:
本来やりたいところですからね。「下流から上流へ」というのは。
そう思うと、今はもうこの上流の事業も手掛けるようになっています。
club Bは企業におけるうつ予防・再発防止事業として始まりました。
このclub Bから、企業官公庁向けの従業員支援プログラム(EAP)事業bowl +(ボウルプラス)に発展し、そして2020年の一般社団法人ポリネ設立へと流れが繋がっています。
まっきー:
既にメンタル不調に陥ってしまった方のサポートを下流とするなら、そもそもメンタル不調に陥らない環境づくりである上流に向かうにつれて、福祉サービスの枠組みで収まらない取り組みになります。
当時からメンタルヘルスの予防的取り組みに対して公的支援や補助事業はほぼ皆無であったため、これを実現するには福祉外事業の領域で、B to Bのサービスとして企業に費用負担してもらう必要が出てきます。
いかに研修生の仕事復帰後に必要となる再発防止や予防支援事業を創出し、それを経営的にも成立するかを日々考えていました。
2015年以降になると、自治体や企業からの研修依頼も増えてくるので、本当に今に繋がるBowLの土台づくりの時期だな、と感じます。
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次回、インタビューシリーズ第1章:創業期|2013年〜2014年(後編)に続きます。
以降、公開した記事は以下のマガジンにも掲載予定です。記事の一覧をご覧いただきたい場合はこちらをチェックいただけると幸いです。
一般社団法人BowL、一般社団法人ポリネについての関連情報は、以下のリンクもご覧ください。
連載「BowLの挑戦」(全5回)|沖縄タイムス
BowLのリワーク説明動画|一般社団法人BowL
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