大好きなお隣のおばあちゃん
私にすてきな言葉を教えてくれたおばあちゃんがいる。
私が出かけていく時間に、いつも家の外でお洗濯物を干している、お隣のおばあちゃん。
だいたいギリギリの時間に自転車に飛び乗る私は、おばあちゃんを見つけると「行ってきまあす!!」と挨拶する。
気づいてもらえるようにいつも大きな声だ。
いつもきちんと気づいてくれるおばあちゃんは、洗濯物の間からひょこりと顔を覗かせて、いつもこう返してくれる。
「いってらっしゃい。お早ぅおかえり。」
初めてそう言って送り出してもらったとき、とてもとてもほっこりして、曲がり角を曲がったあとで言葉を反芻してにこにこした。
私が言われたい言葉であり、言ってあげたい言葉で、かつ、思いつかなかった言葉だったから。
わりと長い間、「いってらっしゃい」の後の一言を探していた。
平たく言うなら、「頑張ってね」以外の言葉かな。
「頑張れ」は、喉に刺さった小骨みたいに私の喉の奥にあったから。
良し悪しの決まった言葉なんてない。
遣う人によるし、受け取る人による。
「頑張れ」だってもちろん、受け取る人によってはこの上ない励ましの言葉であり、元気玉だろう。
ただ、もうすでに頑張ってる人もいるだろうし、それに、頑張らなかったからといって、頑張れなかったからといって、その一日の価値が決まってしまうわけじゃないので、なんかこう、もう少し、ふんわりしたマシュマロか、肉まんの皮みたいな言葉も使いたいなあと思っていたのだ。
うん、例えな…。
伝われ!!ファイッッ!!
無理しないでね?
気をつけてね?
良い一日を?
いろいろ探している中で、おばあちゃんがくれた一言だったのだ。
ほんと、実際の声を聞いてほしい。
めちゃくちゃあったかいから。
頑張ろうって思うから、朝から。
泣いちゃうくらいに。
冬の朝の刺すような寒さが、すがすがしさに変わるような気がする。
「お早ぅおかえり。」
という、良いことも良くないこともふうわりと受け止めて、あなたの帰りを待っているよ、というあったかい言葉のおかげで。
だから帰ってきて、洗濯物を取り込むおばあちゃんに会ったときは、これまた大きな声で言うのだ。
「ただいまあ!!」
おばあちゃんにはこれにも、「おかえりぃ。」と返してくれる。
私も最近は「早く帰ってきてね。」と妹や近所の子どもたちや、友人に言っている。
このあったかさが、誰かにも広がるといいなあと思いつつ。
最近、ご近所に息子さん夫婦も越してきてお話をするようになって、いっそう仲良くなったおばあちゃんズと私たち姉妹なのだ。
私たちも、もらうばかりではない。
あっ、雨!
出番だ!!
「おばあちゃぁああん!!雨降ってきたあ!!
せんたくもの濡れちゃうよぉおーーー!!!」
すてきな朝をくれるおばあちゃんへのお礼に、
雨雲レーダー(たまに虹レーダー)になる姉の方である。