陶磁器42:日本の焼き物(総括)
おはようございます。
今日も薄雲が張り詰めるグレーの空、気温もちょうど良くてとても気持ちがいい。
さて、振り返れば8月の下旬から足掛け約2ヶ月に渡って、日本各地の焼き物名産地の主要どころをピックアップして見てきた。
今日はそうした中で感じたことをまとめて、陶磁器のチャプターの総括としたい。感じたことは以下の4つ、これらを順に見ていきたい。
生活の基本となる器の存在
道具として以上の装飾へのこだわり
朝鮮からの職人の招聘
川の存在
生活の基本となる器の存在
改めて日本各地で陶磁器が焼かれていることにまず確認できたが、よく考えてみれば毎日ご飯を食べる時はもちろん、朝起きて水を飲むにしてもコップがあってそこから始まる。それに加えて、植木鉢もみんな焼き物だし、これからの季節の火鉢や装飾品やお守りとしての狸やシーサーも生活に根ざした焼き物だ。
飲食にフォーカスして考えると、昔は調理器具も全て焼き物がその役割を担っていた訳だから、人間の暮らしにおいて陶磁器が如何に生活に必要不可欠だったのか、人間が人として暮らし生活を進化させていく上でのいかに重要な基本だったか、ということがわかってくる。だからこそ、人が集まるところでは自然と生活のベースとして焼き物が焼かれることになっただろうし、それがよりミクロで起っては廃りを繰り返す中で現代まで続いてきた産地が、その歴史の中で(ガラスやプラスティックなどと共存しながら)日本の食生活を支えてきたのだ。
道具として以上の装飾へのこだわり
さらに、その食べるためだけの道具に対して、装飾を施すようになる。釉薬という形で水を通さず強度を増すような理に適ったものだけでなく、その上で絵を描いたり削って模様をつけたり粘土でディテールを加えたり、様々な形で個性的なものを地域の名産品として普遍的なデザインとして進化させていった。これにより、ただ食べたり飲んだりする時にただお腹を満たせば良い、というところから、舌で味わい、香りを楽しみ、見て華やかに、触れて心地よい、という食べ物をより深く五感で味わうところへと、焼き物たちが昇華させた。これが民藝と呼ばれるものの元祖である。それと同時に、日本だけでなく海外でもArt of Life (フランス語でArt de Vivre)という"生活美学"であったり"暮らしの中に芸術、アート"を意味する概念があることから、人間の本質として備わっていたことがとても面白い。ありがたいことに毎日食べるご飯だからこそ、そこにより一層の楽しみを加えようとした、いい意味での貪欲さがここに結実し、それぞれが競い合い個性を磨いた結果、今僕たちはこれだけの多彩な陶磁器を、日本国内で楽しむことができている。
朝鮮からの職人達
その機能性や芸術性を高める上で忘れてはならないのは、特に西側の地域で多かった豊臣秀吉の朝鮮出兵をきっかけに起きた、朝鮮から連れ帰ってきた職人達の存在だ。領土を奪いに戦争を仕掛けに行っている中で、友好的に待遇を保証して本人たちも納得の上で来てもらっている訳がない。言い方を変えれば戦争にかこつけて、陶磁器の専門家という非戦闘員たちを勝手に拉致したとも言える。侵略者に故郷から連れ出されたことに加えて、家族が引き裂かれたこともあったであろうことも含め心苦しい限りだ。
結果として世界的にも評価されている日本の焼き物文化がこうした人々の犠牲と貢献の上にあったことを忘れてはならないと、個人的には強く感じた。
川の存在
Fat Lavaの時からなんとなく気付いた陶器の名産地には必ず川が大小関わらず流れているという事実。それを今回各地に照らし合わせてみても、ほぼ全ての名産地で川が流れていた。ここから得られる個人的な見解とは、やはり山から流れ来る川が上からミネラル豊富な土砂を運んでくることで良質な泥・土を作ることに寄与しているのではないか、ということ。もちろん、陶石のような地殻変動による地質の変化による採掘は出るところからしか出ないけれど、山から流れる川という一般的な構造がより焼き物を作り、そして川として規模が大きければその後の出荷というところまで産地としての興盛に役立っている。
そして、原材料の枯渇というリスクである。石油でも言われている話だけれど、自然の材料を原材料にしている以上これはついて回るリスクだ。もちろん使わなければ作れない以上使わざるを得ないけれど、作る側も使う側も大切に使うことが大切だな、と。
全体として共通するところも多い中で、それぞれの産地の個性や特性などがありやはり一つひとつ掘り下げなければわからなかったことも多く、とても興味深くて面白い課題だった。
京焼を見に行ったみたいに、ゆっくり焼き物の里を訪れてみるのも楽しみだ。
僕は幸せになると決めた。
今日もきっといい日になる。
一歩一歩、着実に歩もう。
皆様も、良い一日を。
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