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わたしの好きな小説作家とエトセトラ

先月、ほぼ学びにまつわる文献をたくさん購入しました。
本棚に納まり切らないので整理しようと。
そこで静かに佇む小説を見つけて手を伸ばしました。
そうしたらもうどうにも、感情と言の葉が「表現したい」と叫ぶので。
今回は趣向を変えて、"私の好き"小説をご紹介。
*作家さんの敬称は省略させていただきます*

【森見登美彦篇】

主に京都を舞台に繰り広げられる森見の作品は、独特な文調と圧倒的におもちろく歪む世界観。
代表作「夜は短し歩けよ乙女」は大好物、何度読んだことだろう。
友人に「酒の飲めるゆかりみたいなんが出てくる小説」と評された。
黒髪の乙女のことか?それは恐れ多い。
先輩と黒髪の乙女をはじめ、魅力的でユーモラスな人物が生き生きと描かれる。
それはもう笑いの渦である!
おもちろおかしいのである!
有頂天家族」「ペンギンハイウェイ」も好き。
2019年に通称武庫女で開催されたトークイベントで森見自身の言葉の紡ぎ方や独自の世界観に触れ、同じ世界の住人のように感じたことを思い出した。
彼の人柄や話すときの声の調子も好もしい。

【群ようこ篇】

大好きな映像作品「かもめ食堂」観賞後に原作に触れた。
映像作品のあの個性的な世界観と素晴らしい脚本の雰囲気を文字で追う。
ああ、こんな風に生きられたら、毎日丁寧で"好き"に溢れていて、人に囲まれたあったかいストーリー。
美味しそうな食べ物、それらの湯気立ち上るようなあたたかさ、食欲を刺激するかおり、そして囲む人々の楽しそうな会話の声。
その何もかもが、とてもいい。
北欧の暮らしにきっとあなたも恋をする。

よしもとばなな篇】

初めてばなな作品に触れたのは、高校生の時。
今でも親しい友人に薦められて。
ばななにはその頃からずっと近年作まで数多くの著書に触れている。
心に残る作品は、枚挙にいとまない。
「キッチン」「うたかた」「TUGUMI」「白河夜船」「N.P」「とかげ」「アムリタ」「マリカの永い夜」「ハチ公の最後の恋人」「王国シリーズ」「海のふた」「High and dry (はつ恋)」「サウスポイント」「どんぐり姉妹」「さきちゃんたちの夜」「鳥たち」
当然ながら好まざる作品もあったり。
好きな作品をひとつ選ぶとしたらどの作品だろうか、非常に難題だ。
初期の作風と最近のそれとでは、どことなく纏う空気感が異なる。
作家も日々変容を繰り返しているのだな。
今の気分は「どんぐり姉妹」「海のふた」だろうか。
再読したいのは「鳥たち」
ばななな唯一無二の世界観、美しい文章、時々「おや?」と思わざるを得ない表現ですら、いとおしい。

【島本理生篇】

「この恋愛小説がすごい! 2006年版」(宝島社)第1位である代表作「ナラタージュ」を読んだ時の衝撃たるや。
文芸界にフレッシュな閃光のような存在感を運ぶ。
その文章表現の巧みさ、人物や心情の繊細な描写、特に恋愛小説におけるそれら。
特記を重ねると、ヒロインがこれでもかと言うほどまでに思いきりきつい苦境に立たされ、狂おしいまでに切なく、そして鮮烈に成長するストーリーの秀逸さ。
「一千一秒の日々」「大きな熊が来る前に、おやすみ。」「あなたの呼吸が止まるまで」「クローバー」「波打ち際の蛍」「君が降る日」「真綿荘の住人たち」「あられもない祈り」「よだかの片想い」「Red」「匿名者のスピカ」
ほとんどの作品が胸が潰れるほどの印象を残す。
作品のタイトルからして芸術的であり、まるで私が手に取ることが始めから決まっているかのようで。
物語の展開は息をつくいとまもないほどに私を、苦く、甘く、切ない感情の渦中へと誘い連れ込んでいくのだ。
「あられもない祈り」の最初の一文、この小説以上に恋愛小説的な恋愛小説はないだろう、と言えるほどにまざまざとした予感は、背筋が凍るほど。
それもハッピーエンドを微塵も感じさせないような驚異的な表現力
ため息を漏らすか、苦く息をつくか、あなたはどちらだろうか。
ほかに思い入れが強いのは「よだかの片想い」
ヒロインの瑞々しい歓びと苦しみ濃く帯びた初恋が、とても個性的な設定で描かれる、愛しい作品。
島本の作品はどれもその世界観に浸りすぎて、読後の余韻からなかなか抜け出せない

【原田マハ篇 -小説で小説を表現-】

「一分間だけ」もとても記憶に残る作品であるのだが。
本棚整理中に見つけ、指が吸いつくように手にして、読み耽ったのは「#9(ナンバーナイン)」
この作品を表現してみたい、短編的に。
初の試み、お目苦しい箇所も多々あるでしょうが、お時間に隙間がある方は読み進めてくださいませ。

[この指が触れるのは]

地名、年代、登場人物、会話、謎な言葉。
なんだ、この構成は。
いつのどこが舞台なのか、どの人物が主人公なのか。
ハッとする、あ、"彼女"だ。
名前とともに鮮烈な色を解き放つ人物。
いつのどこで紡がれようが、見失いはしない。
心にさざなみが立つのは気のせいなのか。
しかし、なぜだろう。
先へ進めと促されるように、頁を繰る指先が急いていく。

ああ、そこには居たくない、息苦しい。
彼女とともに当時のその苦い日常を体験する。
自身の追体験のように空気感の重さを感じる。
逃げ出したい、変わりたい、ここではないどこかへ。
動け、言語化して発せ、このままでは生きながらにして死んでいるも同じだ。

突然、その出会いは本当に突然に。
あの人の存在感は彼女の心とともに私の心をも鮮やかに奪う。
私はただ見つめ、その出会いにときめく気もちを彼女に重ねて覚えた。
熱情と不安と決意がないまぜで、心をどこに落ち着かせるべきなのか。
"べき"とは、なんだ。
どこへ行きたいのかすら見失うような不確かさの中に、急に結ばれる意図という名の糸を見出す。
光へ、もう光の世界に羽ばたくことしか感じられない。

異国へと、熱を追うのは、愚かな衝動だろうか。
空白のケースに託すのは、カタチあるなにかで満たしたい想い?
運命なのか?何かの企てにのせられているのか?
高鳴る胸が、理性を恋の大海に溶かしてしまう。

私には異国で描かれる中国芸術の世界には何も造詣がない。
それらを見つめ、触れる指は一体誰のものか。
恋するあの人の本心を明確にできず、はざまに揺れ動くのは誰の心か。
彼女の触れるものから彼女のイメージに至るまで、その体感覚は本当に彼女だけのものなのか。
彼女が芸術や接する人物の世界に入り込んでいくその感覚。
深い森へと私はともに足を踏み入れる。

彼女の取り組むプロジェクトのワクワクもプレッシャーでさえも。
魅力的でいて恐れすら抱かせるような恋するあの人との触れ合いも。
肌がゾクゾクし、心を傷め、甘いため息すら漏れる。
刺激的でしあわせな滞在が少しずつ翳りを見せ始めるその時まで。
身体の内側にある泉があたたかく、しかしはっきりと主張しているのを感じる。
だが、ロウソクの炎のように揺らめく幸福感に、不穏な足音が近づいてくるのを認識して。
恋するあの人との不確かな関係性に、いつまで目を瞑っていられるのか。

あの人は、一つの宇宙の皇帝として彼女までも支配していただけだということにはっきりと気付かされるその時。
不穏なものの正体を知る。
まるで砂漠にいて、防寒具を持たずに凍えるような。
行き場のない不安と恐怖。
信頼だと、恋愛だと、最後まで思い込むことはできなかった。
恋に、万物に永遠など、ないのだ、どこを探しても。
だが、打ち砕かれた熱い想いの逃げ場がそこに、まるで導かれるように。

その人の手は特別で。
芸術の香りを癒しの中に自然体でいて煌めくように纏う。
その人こそ、その人こそが。
出会うべくして出会う相手は、その人だった。
抑えながらも求めずにいられない、身を捩るような切なさや苦しさ。
その人とのひとときのためなら、なんだってする。
皇帝の知ることとなれば、どうなるのかがはっきりと体感を伴って目に浮かぶのに。
危険な綱渡り、心拍数が上がる。
芸術の森の中の護りは持続性を持たず、肩にこもった力はそのまま、抜けることを知らない。

彼女のプロジェクトの大舞台が用意され、異国を立ち去る日のリミットが見え、心ははち切れるほどの想いに満たされて。
足を踏み入れた時とは異なる、愛情と哀情を携えて。
この物質世界で、心のままに生きることの難しさを、改めて知る。
呼吸が乱れる、あたたかい雫が頬を伝う、胸の真ん中がはっきりと痛みで叫んでいる。
熱い、大切で、護りたい、あなたの手をとることを選びたい、でも。
焼け焦げたのは、彼女の、私の胸だけでなく、文字通り、3ヶ月の全て。
火の中、命を賭して手を伸ばしてくれたのは、それはきっと。
でも確かめるのも怖い。
願いは叶わないから、だからこそ願うのか。

最後に戻るのは、胎児の時に世界の全て、"宇宙"だと感じた母の存在のもと。
そして、母が宙に還るのを見送ってはまた、動き出す。
私は不安で漂う、大切な残影を胸に強烈に抱えて。
名前も知らない、本当の魂が結ぶ相手、もう2度とまみえる日は巡らないのか。
はぐれた魂が元に戻りたくて、泣いているのを感じながら。
それでも、会えてよかった?
こんな想いをするくらいなら出会わずにいたほうがよかった?
あなたは私の求めるもの、殆んど全てを持っているというのに。

諦めとは一体どんなことで、行動を起こすことの源泉は一体どこに隠れていたのか。
思考がまとまらない頭で、ジタバタ動く不様なこの足で、もう一度異国の土を踏むのは、魂の声に導かれて?
それとも執着なのか。
どちらにしても果てしない愛情と狂おしいほどの切なさには変わりないなら。
自分の内側に留めおける類のことでは、ないのだ。
愛し、壊れてもなお護り続け、諦められずに追い求め。
人の心のなんたる深淵さ。

繊細で激しく、官能的であるにもかかわらず純愛、現実的なのに宙に浮かんでいるかのような。
その指が触れてくれるなら、どこにでも行ける、羽根さえ生えて飛べる。
そこでハッとする。
その時、私の指が一冊の本の表紙を撫でているのが視界に入っていることに気がついた。
意識はまだ小宇宙を漂っているかのような。
心で語りかけ続けた"あなた"。
あたたかなひだまりのようにこの胸に浮かぶ笑顔のあなたのその髪を、宝ものに触れるかのようにそっと指で撫でるさまを想像して、ひとり安堵に微笑んだ。

【末筆にて】

いつもと趣を変えて、心のままに。
ハイリーさをちょっぴりりと表現できました、かな?
本当は読み進めている時にもっと緻密で複雑な感情や言葉が湧き上がっていた。
公開しきれぬほどに赤裸々なものも含めて。
未熟さ故に表現し尽くせずだが、一気に書き上げた。
後から振り返って読むと、きっと書き直したくなるだろうな。
読書感想文を散文小説で綴りました、が一番適しているかと思う。
フィクションだけれど、随所に私自身も隠れています。
恋でもしているのかな、というほど感情的。
時折、小説を読むのもいいな。

今回も最後まで読んでくださった方がおられましたら。。。
ありがとうございます
お目汚しだったかもしれませんが。
感謝しております。
今日もニコニコ生きていきます。



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たかしまゆかりん
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