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紫がたり 令和源氏物語 第百二十六話 明石(十三)

 明石(十三)

源氏の訪れを聞いた姫は思いもよらないことで狼狽しました。
几帳を隔ててさらに奥に引き下がるのを源氏は寂しく感じましたが、なんとか姫に心をわかってもらいたいと思いました。
親が許しているからと無理強いすることなどできません。
かき口説く源氏の言葉があまりにも甘美で姫は自分を失いそうになるのをこらえ、近くの小部屋に逃げ込んで鍵を下してしまいました。
筝の琴がわずかに見えるのを、
「お父様がいつも自慢にしていらっしゃる琴の音さえも聞かせてもらえないのですか?」
と優しく恨み、歌を詠みました。

 むつごとを語りあわせむ人もがな
     うき世の夢もなかばさむやと
(私は心をわかちあう人が欲しいのですよ。そうすればこの辛い現実も乗り越えられると思うので)

明石:明けぬ夜にやがてまどへる心には
       いづれを夢とわきて語らむ
(明けぬ夜に惑っているような私の心には、なにが夢でなにがうつつかなど申し上げることができません)

その声、詠みぶりは伊勢に下られた御息所を思わせるような気品溢れる様子で、源氏はこの姫を逃したくないと強く感じました。
「私が無位無官でこのような浦を放浪っているので、釣り合わないとお考えなのですね」
源氏はこの誇り高い姫に軽んじられているのかと、傷ついた心を打ち明けてしまいました。
真実の声ほどに人の心を動かすものはありません。
「わたくしはそのように驕ってはおりません。賤しい身ゆえにお会いすることは出来ないのです」
「身分によって人の品位が決まるものではないでしょう。あなたは賤しくなどない。どうか私の心をおわかりいただけるのならこの扉を開けてください」
思い乱れた明石の姫は自らの心に従い扉を開きました。

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ラボオシリス①


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