令和源氏物語 宇治の恋華 最終章解説/現世光(うつしよのひかり)
みなさん、こんにちは。
本日は最終章である「現世光」を解説させていただきます。
もちろん源氏物語の最終帖は「夢浮橋」ですので、創作で加えた最終章ということになります。
女二の宮のご懐妊
私は実は女二の宮贔屓なのです。
それは物語を読んでくださった方ならば薄々お気づきであると思います。
薫が熱烈に愛した大君はちょっと依怙地なところがあってこじらせ気味な女性でした。それをかわいいと思われる読者の方も多くいらっしゃるでしょうが、薫の苦悩を考えると私はもどかしくてイラッとしてしまうのです。
そして浮舟はまんまと匂宮に誘惑されて身持ちの悪いイメージが強く、しまいには入水で尼になるとか、可哀そうな境遇でありますが、自業自得なのかと考えてしまいます。浮舟のファンの方は多いので、こんな感想でごめんなさい。
実は原典では女二の宮のキャラクターはあまりフィーチャーされておりません。しかしながら薫の残りの人生を共に歩んでゆく存在ですので、重要な人物であることに変わりはないと思います。
そこで私はことあるごとに女二の宮のエピソードを差しこみました。
そして女二の宮の女性像は薫のような人を大きく包み込みながら、穏やかに日々を送る静かな夫婦像が感じられるよう心がけました。
皇女らしく鷹揚で、それでいて利発で、夫の心を思いやる優しい女性です。
最終章は私が創作した女二の宮の為に加えた部分といっても過言ではないでしょう。薫の苦悩の境涯はこの姫宮によって救われる、という結末ですね。
この姫宮であってこそ、薫は人の親になれるのではないか。
心穏やかに暮らせるようであってほしいという願いからです。
京からの噂
薫が浮舟のために生涯暮らしていけるだけのものを与える、というのは、いくら仏弟子となっても食べる物も着るものも必要なわけで、お金が無いと困ることになります。
原典の夢浮橋の帖の最後では、がっかりした小君の様子を描き、拒まれた、という感じで物語が終わってしまいます。
なんとも不完全燃焼な感じで、終わりともなんともわからないようなぼやんとした曖昧さですね。
出家しても人の心は変わるものではありません。
人を慕う心もあるでしょう。
その完全ではないことを描いて締めようと決めました。
何はともあれ、2022年4月11日に桐壺の第一話を掲載してから約2年半をかけまして私の源氏物語は完結しました。
みなさん、ご愛読いただきましてありがとうございました。
青木 紫