文様 『露芝(つゆしば)』の粋
みなさん、こんにちは。
本日は日本らしい文様のお話をしたいと思います。
『露芝(つゆしば)』について。
巻頭の画像が露芝文様です。
半円弧の芝草に夜露や朝露が下りるという文様。
この日本の風土ならではの情趣といえましょう。
着物の小紋などでよく見かける粋な紋様としてご存知かもしれませんが、その歴史は古く、平安時代にまで遡ります。
源氏物語にもしかりですが、夜の間に芝草に露が下りるという表現はあらゆる文学で表現されております。
それらは『道芝の露』といわれましたが、その結んだ露が翌朝には消えてしまうことから「儚さ」を表す言葉として用いられました。
伊勢物語でも業平(と思われる男)が駆け落ちした女性を背に背負って逃げる場面でこの儚さを表すのに「露」が登場しますね。
白玉か何ぞと人の問ひしとき
露と答へて消えなましものを
(夜陰にきらきらと光る露を見て、あれは白玉か何かですか?と背のあなたが私に問うた時に、あれは草花に下りた露であるよと教えてあげればよかった。そして私も儚くなってしまえばよかったものを)
この場面は創作のように描かれておりますが、実際に業平が恋人を盗み出そうとして失敗したお話がベースになっておりますのはご存知でしょう。
露芝のお話に戻ります。
露芝は安土・桃山時代には能装束などにも取り入れられております。
その連続文様は有職文様とはまた異なる風情をもっておりますね。
江戸の庶民たちは粋な文様と捉え、残暑の頃に秋へ続く涼しげな文様として着物や手拭いにあしらわれました。
その意匠が今も受け継がれているのは、やはり日本の着物文化の賜物だと思います。