書評 | 学芸員は体力勝負だった!「美術館で働くということ」
「美術館で働くということ~東京都現代美術館 学芸員ひみつ日記~ 」。
美術館に就職したとある学芸員の成長と奮闘、美術と関わる喜びを描いたお仕事マンガだ。
Amazonではコミックエッセイとなっているけど、漫画家である作者が学芸員への取材をもとにして描いたもの。
キャラは架空だけど、実在する美術館を舞台にしているのでその点はリアリティたっぷりだ。
実は私、美術史とかに興味があって…
絵が上手いわけではないけれど、美術作品を知ることって面白そうだな〜と以前から思っていた。
で、絶賛無職なわけだが、どうせ暇なら何か勉強してみようかな?という選択肢のひとつに、本書で描かれている「学芸員」の資格がぼんやりと浮かんでいたのだ。
そんなこともあって、KindleUnlimitedでこの本を見つけたときはトキめいた。
しかし!うっすら描いていた夢は、本書の冒頭で崩れ去ることに……
というのも、学芸員の仕事は「体力と根性」が必須だそう。
マンガの中でも、主人公は
・展示の企画や監修、機材の手配
・研究や図録作成
・アーティストとのコミニュケーション
・他所の美術館巡り
・作品の貸出などで出張
などなど……
休む間もなく奔走している。
私は持病があるため、到底無理だ!と現実を突きつけられた…
もちろん甘い仕事とは考えていなかったけれど、「持病があるなりの働き方」を考える余地もないなぁって感じ。
学芸員って文化系!ってイメージだったし、ここまで体力が必要だとは驚いた。
地味にショックだったけれど、そこからは気持ちを切り替えて純粋にマンガを楽しんだから大丈夫。笑
(※以下ネタバレ含)
特に、主人公が学生時代から憧れていた作家の企画展を実現させるくだりは、かなりジーンと来た。
その作家は年配の男性作家で、ぶっきらぼうなようで温かく…絵柄はデフォルメタッチだが、人柄がしっかりと伝わってくる。
主人公が作家にアタックして、企画展を実現させるまでに、作家と親しくなっていく過程も良かった。
ひとつの企画展開催に費やす努力や、学芸員と作家の熱い想いを知ると、美術館に足を運んだときの視点も少し変わりそうだ。
ちなみに本書では、学芸員以外の美術館に関わる仕事も紹介されている。
よく学芸員と誤解される、「絵のそばに座っている人」は、実は「監視員」と呼ばれる職業だったり…
(この仕事も、気を張っている大変な職業なのだ。)
「美術館で働くということ」のタイトル通り、学芸員だけでなく美術館の仕事について様々な側面から描いている本書。
美術館巡りが好きな人も、「美術鑑賞ってどうしたらいいか分からない!」なんて人も
「美術館で働く人」を知ると、美術館がもっと楽しくなるかも?
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