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シノノメナギの恋煩い

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2024年6月の記事一覧

第四十一話 シノノメナギの恋煩い

第四十一話 シノノメナギの恋煩い

 あれから数ヶ月。わたしたちは大阪に引っ越す。

「梛ぃーもう出かけるの?」
 眠気まなこで寝癖だらけの髪型の常田。あくびもしている。
「出かけるわよっ、あなたは車の中で寝れるけどわたしは寝られないんだからっ。ヒゲも今剃らなくていいから、朝ごはんも車の中!」
「眠いー、もっと寝たいー」
 ダラーっとした常田。わたしだって眠いの! しかも今キャリーケース運び出すために夏姐さんと息子くん三人来てるし。

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第四十四話 シノノメナギの恋煩い

第四十四話 シノノメナギの恋煩い

 わたしはとっさに手を隠してしまった。いつも大体手でバレるから。いや、慶一郎さんが言ったとか? そんな軽率な人には思えない、いやチャラそうだからありえる。

「手」
 手を隠す、遅いだろうけど。……どうしよう、お母様にもバレてしまった。

「浩二、結構甘えてくるでしょ?」
「えっ、あっ、えっ、えっと……そうですねぇ」
「甘え上手でね。子供の頃から通院や入院中に看護師さんにデレデレして。でも口下手だ

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第四十三話 シノノメナギの恋煩い

第四十三話 シノノメナギの恋煩い

 お昼は近くの定食屋。昔ながらのって感じね。お父様が店主さんに声をかけていて、馴染みのあるお店なんだなぁと。

 どうやら予約していたようで、すぐに出てきた。幕の内弁当。豪華だし見栄えも良すぎる。これ、高すぎるよね。

 この家族、無言で食べる。基本食べている時は黙ってるのかしら。

 男性陣は全員食べるのが早い。そしてお母様はゆっくりゆっくり。よく見るとお母様のお重は小さめである。

「梛さん、

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第四十二話 シノノメナギの恋煩い

第四十二話 シノノメナギの恋煩い

 大阪駅の改札前に慶一郎さん……密かにまた逢えるの嬉しかったり。常田よりもすらっとしててシュッとしてて……。腕も長くて少しヤンチャそうな悪い男な匂いがする。

 ……ああああああ、かっこいい。
 わたしたちを見つけると彼はものすごくいい笑顔。

 慶一郎さんのかっこいいスポーツカーに乗せられ、わたしは常田の実家へ。
「あそこが浩二の入院する病院。大きいやろ。んでなー……」
 慶一郎さんが運転しなが

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第四十話 シノノメナギの恋煩い

第四十話 シノノメナギの恋煩い

 仕事から帰ってきて先に帰ってた常田がおでんを煮込んでいる間にわたしは慶一郎さんと電話をした。

 もう大阪に帰っているようだが、わたしの正体はお父様とかに伝えたりはしてないよね……。仕事の時ずっとそのことばかりで頭がぐるぐる。

『びっくりしちゃった。寝顔可愛かったんやけどねー。……浩二が結婚はせん、子供は作らへんって頑なに言うからなんのことやろと思ったらそう言うことなんやね』

 わたしは寝相

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第三十九話 シノノメナギの恋煩い

第三十九話 シノノメナギの恋煩い

 それはさておき。内密な話になるからと慶一郎さんは私たちが食べていたご飯代をスマートにカードで支払い、わたしたちの家で話したいと。しかも泊まって行く! だなんて……なんという展開?!

 やだ、同じ建物にイケメン二人と一夜だなんて。だめだめ、変なこと考えちゃ。

 常田の部屋で慶一郎さんは寝るらしいけど、ベッドに色々如何わしいもの置いてあるから帰ったら片付けないと。

 部屋に入り、わたしはすぐ暖

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第三十八話 シノノメナギの恋煩い

第三十八話 シノノメナギの恋煩い

 夜、夏姐さんとわたしと常田の3人でバーに行った。

 パッパと取り分けて目の前に置いてくれる夏姐さん。

「梛の件は前から上がっていたのよ。梛は児童書担当だし……ね。力は発揮できるし」
「うん……それはそうだけど」

 市内の子供図書館に異動しないかと打診されたのだ。正直常田が大阪に帰ることになり、ついていきたい気持ちが山々である。
 だが大阪に行ってもすぐ正規で司書として働ける保証はない。

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第三十七話 シノノメナギの恋煩い

第三十七話 シノノメナギの恋煩い

 カウンターに戻ると返却図書がたくさん……やらなくては。そうすれば雑念は飛んでいく、はず。

 並べて返却、どっさり。あと予約本のピックアップもしないと。やることは多いのだ。

「あった、あった……この本」
 とわたしがさっき本棚に戻した本を手にする男の人。

「今検索したらあるって書いてあったのに無くてさ。作業中だったんだね」
 ヒョイっと大きいその本を手にした彼。ニコッと微笑んでくれた。不意打

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第三十六話 シノノメナギの恋煩い

第三十六話 シノノメナギの恋煩い

 次郎さんとは駅前で別れて駅前駐車場から車を走らせて病院まで行く。
 常田……どうしたのよ。あんなに怒って拗ねて一人で病院に行くとか言ったくせに帰りは迎えに来い? だけど泣いてるような感じだったし。

 目の前にある喫茶店に行くと窓際の席に座っている常田がいた。

 常田、わたしを見てる。
「ちょっと、どうしたの」
「……来てくれた」
 少し元気がなさそうだ。病院で何かあったのかしら。わたしは席に

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第三十五話 シノノメナギの恋煩い

第三十五話 シノノメナギの恋煩い

 わたしは今、ボー然としている。

 昨晩常田と喧嘩してその腹いせに次郎さんからもらった名刺のメルアドにメールをして明日会いたいですとメールして、すぐ返事きて。

 朝起きたら常田はもういなくて、わたしは黒のセクシーなキャミワンピ、甘めの少し丈の短いワンピにロングコートを着て、ベレー帽を被り、黒のタイツにショートブーツという格好で外に出た。

 彼氏いるのに喧嘩したからといって連絡先をもらった他の

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第三十四話 シノノメナギの恋煩い

第三十四話 シノノメナギの恋煩い

 とある夜。次の日が二人とも休みだととてもリラックスした気持ちになる。そして自然と交わるわたしたち。
 たくさんキスをしてキスをしてベッドの上に座る常田に乗っかる。
 意外とエロいというか変態というか。健康的というか。何というか。

「梛は暗がりでしかしてくれんからなぁ」
「嫌だもん……」
「顔が見たい、感じてる顔見てたら興奮する」
「相変わらず変態だよね。でも見えなくなったら……」
「確かに見え

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第三十二話 シノノメナギの恋煩い

第三十二話 シノノメナギの恋煩い

 真っ暗。隣に寝ていたはずの常田がいない。見渡す限り暗い。

 なぜかわたしの格好はキャミワンピ。モコモコのパジャマを着ていたのに。

「梛《なぎ》……」
 声がした。……この声は。

「母さん」
 死んだはずの母さん。時たま見る悪夢の始まりだ、胸が苦しくなった。手を当てるともちろん胸はないけれど。

「そんな格好しちゃって。相手の男はそれで興奮するのか、変わったやつね」
 ……相変わらず口が悪い

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第三十一話 シノノメナギの恋煩い

第三十一話 シノノメナギの恋煩い

 いつものように門男さんと奥さんがわたしのところに。

 今日もこの二人は私に孫のための絵本を見繕って欲しいとやってきたのだ。

 いつも早朝の開館前から図書館の前の門の前で待つ長身の男、だからわたしは門男さんと名付けていたけど本名は門田和男さん。まさしく門男さん。

 そしてその奥さんであり小柄な女性の門田さくらさん。いつも門男さん一人で来ていたのにいつのまにかさくらさんも一緒に来るのが増えた。

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閑話 シノノメナギの恋煩い

閑話 シノノメナギの恋煩い

 時は今に戻る。

 スタジオではスポットライトで眩しく一般の観客はいるけど緊張もあってか彼らの表情はぼやけてしか見えない。

「あー、そういうこともありましたねっ! お恥ずかしいですわぁー」
 と大袈裟に司会の鯉鯉さんが大きな声で話すと観客たちはドッと湧く。
 素人のわたしたちのどうでもいい恋愛話も面白おかしく広げてくれる、さすが人気新鋭落語家……!!!

 先ほどはわたしのことを話したラジオ音

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