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ボッティチェッリ 「マギの礼拝」 1485年頃 ウフィツィ美術館蔵

引き続きボッティチェッリの有名作品を。


メディチ家と強いつながりを持ち彼らのために多くの作品を手がけたボッティチェッリ。これは彼らへの賛美歌を絵画化したと言える作品です。


まず、描かれている内容から。


マギは東方の三博士と呼ばれる男性達で、占星術師だったと言われます。聖書によると、イエスが生まれた時、夜空に星が強く輝くのを見た彼らは、救世主の誕生を知ります。そこで各々が贈り物を持って挨拶に行くことにするのです。作品は従者と共に長旅を経てイエスの下に辿り着き、挨拶をしている場面を表しています。


この作品はメディチ家に仕えたガスパーレ・ザノービ・デル・ラーマが依頼しました。決して裕福とはいえない家庭で生まれた彼でしたが、ピエロ・デ・メディチ(ロレンツォ豪華王の父)に商才を見込まれ、1代にして財を成します。多くの富裕層がしたように教会に一族の祭壇を設けます。そうして当時メディチ家に重用されていたボッティチェッリに祭壇画を依頼するのですが、彼は自らの栄華を誇示するのでなく、自分を取り立ててくれたメディチ家を讃える内容の絵を頼んだのでした。



画面の真ん中にいる3人のマギはメディチ家の主要メンバーの肖像です。
彼らは自分達が神に近い存在である事を示すため、マギの姿に扮した自分達を描かせたり、クリスマスの時期に仮装行列も行っていました。

跪きイエスの足に口づけをしようとしているのが、コジモ・イル・ヴェッキオ。当時足は道に落ちていたゴミや排泄物で汚れていたため、足に口づけをする事は最大の屈辱でありながら最高の崇拝の証明でもあった。



イエスに跪く老年男性がコジモ・イル・ヴェッキオ。手前の赤い服を着た中年男性が、デル・ラーマを取り立てたピエロ。その右には弟のジョヴァンニ・デ・メディチです。
彼らが神に近い存在である印象を与えるため、3人以外の人物は皆左右に控えて、シーンを見守る構図にしてあります。



残念ながらジョヴァンニは早世してしまい、若いロレンツォが後継者になります。文化的な事にしか関心がなく商才には恵まれなかったため、デル・ラーマに息子の補佐を頼んだのでした。



よく見ると、ピエロは右にいるロレンツォと後ろに控えているデル・ラーマの方を見ています。この時ピエロはすでに亡くなっていたので、死してもなお自分に場を与えてくれた事への感謝です。



ウフィツィ美術館にいらっしゃる時の、参考になさってみてください。

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