質的研究とは、何か?
私は現在大学院の修士2年生で、今年修士論文を執筆します。論文を執筆するにあたって、質的研究か、量的研究か、ということを考えています。どちらの方法にも利点と欠点があり、適切な方法論を選択することが、研究の結果に大きな影響を与えるので、とても大事なポイントです。
今回は、質的研究にフォーカスを当てて、そもそも質的研究とは何か?について、下記の本を参考にまとめていこうと思います。
ちなみに、私がまだ質的研究の勉強をする前に、授業で問われた、質的研究とは何ですか?という問いの回答はこちらです。
研究の全体像
そもそも、質的研究を理解するにあたって、「研究」の全体像を見てみましょう。研究は、形而上学(けいじじょうがく)と科学(形而下学)に分けられます。形而上学は説明するだけでも1本noteが書けてしまうくらいなのでここでは簡易な説明にしますが、定義はこう書かれています。
もっと簡単にいうと、目に見えない抽象的な事柄を学問として追求すること、とも言えます。一方で科学(形而下学)は、こう定義されています。
形而上学とは対義語であり、目に見える、具体的な事柄や世界を学問として追求すること、とも言えます。
そして科学(形而下学)は、理論科学と経験科学に分けることができます。理論科学とは、データを採取しないで実施する科学であって、数学のほとんどや理論物理学などがここに含まれ、経験科学は、データを採取して実施する科学のことを言います。そしてその経験科学はさらに、量的データを採取する量的研究と、質的データを採取する質的研究に分けることができます。
質的研究は、「研究」という全体図で見ると、図1(写真)の位置にあることがわかります。
質的研究と量的研究
この本では、量的研究とは「対象を測定することで数量化されたデータを得、それを処理して結論を得る研究」、質的研究とは「数えられるものすべてに意義があるわけではなく、意義あるものすべてが数えられるわけではない。それゆえ、対象を量ではなく質そのものにおいて把握する試みのこと」と説明しています。(大谷,2016,P25)
とはいえ、「研究参加者がこう言っていたからこうである!」とそのまま言葉を受け止めてしまっては研究にはなりません。研究参加者がこう言っていたが、そうではないかもしれない、研究参加者はこう言ってないけど、こうかもしれない、という可能性を忘れてはなりません。どうであってもどうでないのかを析出できる、十分に科学的な手続きが必要です。
質的研究でも適切なデータを採取して行う経験科学であり、この点は量的研究との共通です。
ただし、質的研究はこれだ、と一言でいうことは非常に難しく、大谷(2016)も、「質的研究の持っているいくつもの要件を網羅しても、質的研究の本質には迫れないように思われれる」と述べています。
質的研究の特徴
具体的に、質的研究は、下記の特徴を持っているとこの本では述べています。
こうやって並べて見てみると、「研究者の主観・主体的解釈を活用する」とか面白いなあと思うんですよね。量的研究だと主観や主体的解釈はそもそも必要とされないことの方が多いと思います。
質的研究は、実証や仮説検証を目的とせず、研究参加者の視点から見える事象や人々との関わり、その人の心情などの内面性を理解することを目指しているのではないか、と思います。
事象に対する「良い」「悪い」の評価基準は保留して、「なにが」「どのように」「どうなっているか」(記述的問い、と言います)を解明することが重要だということを考えると、いかに「理解」というスタンスが質的研究において求められるか、ということに気付かされます。
質的研究とは何か、について簡単にまとめてきましたが、質的研究の方法と方法論、質的研究における主観と客観など、まだまだ深く潜れる部分についてはまた別の機会にnoteでまとめようと思います!