旅に絶対持っていけないものを買った話
海外旅行に持っていけないものは買わない。
帰国日を決めない旅に出る可能性があるので、ミニマリストのような暮らし方をしている。
旅好きにはこんな価値観の人がけっこう多いものだ。私もそのひとりである。
無意識のうちに「旅のおともにぴったり!」「いやいや、こんなの旅に持ってけないからやめとこ」などとジャッジして、ものを買ったり買わなかったりしている。
今回は、そんな私が「旅に絶対持っていけないもの」を買った話を聞いてほしい。
2023年に買ってよかった「旅に持っていけるもの」
本題に入る前に、2023年に買ってよかったもののうち、「旅に持っていけるもの」を紹介したい。
いろいろごまかせる眼鏡
顔タイプ:ソフトエレガント。おしゃれ眼鏡が浮く顔である。だが「顔の造形をごまかせる眼鏡が必要だ」と感じることが増え、探しまわった結果、白山眼鏡店で見つけた。
海外を旅するとき、治安の悪い街では眼鏡よりコンタクトを選ぶけど、そうでなければこの眼鏡と濃いめの口紅があればOKな気がしている。なんなら東京でも。
クアラルンプール-成田便の機内で、CAさんから「自分の国にはないデザインで、ほしくなっちゃいました。どこで買えますか?」と声をかけてもらったのもいい思い出。
ヤヌークのデニム(4本)
デニムがどうも似合わない顔と体型である。
そんな自分でもそれなりに見せてくれる気がするのがヤヌークのデニムだ。半年の間に4本も買い、他のパンツはほぼすべて処分した。
写真のように、旅先で処分しようと思ってるニットとぼろぼろの靴を合わせても、まあ許せなくもない感じになる。荷物を少なくしたい海外旅行にぴったりだ。
BOSEのヘッドホン
ヘッドホンもたいへん似合わない顔である。それでもたまに、どうしてもごつめのヘッドホンが必要な日がやってくる。
購入したのはBOSE。低音が良い。空港や機内で活躍してくれている。
2023年に買ってよかった「旅に持っていけないもの」
さて本題。
旅基準でものを選びがちな私だが、2023年にはひさしぶりに「旅に持っていけないもの」を買った。
1年ほど前からほしいと思っていた指輪である。
悩んでいた理由はずばり、お値段だ。
身の丈に全然合ってないし、なんなら私の本体価格よりお高いのではないだろうか。海外で見たい景色と天秤にかけて「指輪かアフリカ旅、どちらに投資すべきか?」と悩んだし、値段を思い出すたびに頭の奥がひりひりする。
しかも、やっぱりというかなんというか、自分の顔にまったく似合わない。
それでも、このとげとげに妙に親近感を覚えるとともに、どこかチアアップされる自分がいる。
とげとげしていて、宝石で飾り立てているわけではないのにきらきらしている。輝きと棘のミスマッチ感が印象的だ。ベースはすべすべで、まるみを帯びている。派手でもあるし、地味でもある。見る人や角度によって感想が違いそうだ。
要するに、私が「こんな人でありたい」と思っているイメージにわりと近いようなのだ。
憤死しそうなとき、世界のすべてを恨んでしまいそうなときにも、右手のきらきらしたとげとげに目を落とす。すると、このとげとげした感情を飼い慣らしてやるぞ、という気持ちが湧いてくる。「あんたのことを大切にしてくれない人なんて無視すれば?」とかなんとか言ってくれてるような気さえするほどだ。
何度見ても私の顔には似合っていない。同僚からは「変わったデザインですね、ツボ押しグッズとかですか?」と聞かれた。拭いがたい違和感があるのだろう。
でも私はこの違和感に不思議とときめくし、落ち着くのだ。
こんなにかわいくて小さなもの、絶対に絶対に海外旅行には持っていけない。でも、手に入れずにはいられなかった。
番外編:2023ベスト活動
ついでに2023年のベスト活動を記録しておきたい。
1位:スピッツのライブ(5回)
25年ほどファンだったスピッツのライブにはじめて参加した。同行させてくれた方のご厚意や、直前チケットを迷わず買った私の思い切りの良さもあり、福岡2日目・沖縄1日目&2日目・名古屋1日目&2日目の計5回。
名古屋2日目はステージ脇の最前列だった。メンバーと目が合う。衝撃的な体験すぎて、airpodsに当日の日付と席番号を刻印したほど。
名古屋1日目はほぼ最後列で、熱烈に盛り上がっているのは隣の隣の席のお姉さんと私くらいだった。ちらっと見ると、なんと沖縄1日目のバスが行き帰りとも同じだった方ではないか。「77番のバスですよね?」と話しかけてくれた、笑顔の素敵なあの方だ。
「沖縄でも会いましたよね!?」と話しかける勇気がなかったことをいまも後悔している。絶対に運命の人だったのに。
それ以外にも、コットンクラブに2回行き、毎日聴くほど好きなJulian Lageのライブに参加した。この方のライブは10回近く行っている。とろける音とはこのこと。
2位:念願のサウジ旅
夏に念願のサウジアラビアへ。一生忘れられない光景や感情に出会えた。
3位:青砥ナンパ
noteには書けてないけど、秋にはヨーロッパ旅もした。
出発の日、成田空港に向かう電車が止まってしまった。なんとかたどり着いた青砥駅でタクシーを拾うことにしたけど、いくらかかるのか想像するだに恐ろしい。
そこで、同じように絶望的な表情をしていた訪日バックパッカーにタクシーシェアを提案した。
思えば学生時代、貧乏旅行をしていたころには、こんな行動が日常だった。
バンコクのゲストハウスで「明日ラオスに移動するんですけど、一緒に行きませんか?」とナンパした子とは、今でも親友である。
今回タクシーをシェアした方からは「声をかけられてびっくりしたけど、あなたに出会えてラッキーだった」と言ってもらえたし、車内では外国出身の方から見た日本の魅力をたくさん聞かせてもらった。自分の勇気に乾杯。
4位:noteスタート
2023年のテーマは「うるおい」と「言語化」。
「言語化」を実践すべく、ヨーロッパ旅の飛行機の待ち時間にnoteを書いてみた。
想像の1000倍くらい多くの方に読んでいただけて、友人や同僚からもたくさん感想をもらった。noteを読んで「会ってみたい」と連絡をくれた方もいるし、新しい仕事につながりもした。2024年も細々と続けたいと思っている。
5位:古典との出会い
仕事で古典に触れる機会があり、『平家物語』『高瀬舟』『古事記』を学んだ。正直気が重かったのだけど、いざ挑戦してみると楽しく、新たな世界が見えたような気がしている。
特に『平家物語』の魅力はすさまじい。今年は林真理子さんの現代語訳版にチャレンジする予定。
2024年にやりたいこと
2023年後半くらいから、明確に別の(※次の、ではない)ステージに移ったような感覚があった。
目の前に重くて固そうなドアがある。全体重をかけてこじ開けるもこの場にとどまるも自分しだい、という感じ。ドアの先に何があるのかはわからない。
2024年、まずは重くて固いドアをこじ開けるための筋肉をつけることからはじめたいと思う。