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元気でいろとは言わないが、日常は案外面白い

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作家による日記風エッセイ
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2022年11月の記事一覧

満足なお金が入れば緩やかな創作が可能だろうか

取るに足らない 仕事が好きで嫌いだった。 前までの私は明日仕事嫌だなあって考えて生きていた。今もたまにあるけれど、それでも前よりかはマシになったと思う。 端的に言うと、責任を負わされるのが嫌だった。 元々自由人であるが故なのか、やり始めたら基本何でもできるせいなのか、責任感だけを搾取された。新卒で入って何も知らないまま前に立ち、怒鳴られ、知りませんなんて言って許されるわけにもいかなかった。 だからって誰かが最後までしっかり教えてくれるわけでもなく、働きながら学ぶ、そ

煙草一本で寿命が一年消えていれば、緩やかな死が存在しただろうか

それで寿命が縮むなら、死にたがりの僕らは口にするだろうか 煙草の匂いが嫌いだった。 鼻につく苦みも、紫煙も、嫌いだった。居酒屋に行けば近くの席に座っていた客の匂いが漂い服に染みつくのも嫌いで。焼き肉の帰り、自分の服が酷く臭く感じるのと同じで。 煙草が嫌いだった。 最初に吸ったのは20過ぎて少し経った頃。元々吸う気なんて毛頭なく、苦手意識の方が高かったため買いもしなかった。酒は飲むけど、この先煙草は吸わないんだろうなあと。 そもそも根本的に、依存性のあるものと相性が悪い

貴女は充分すぎるくらい私に見返りのない愛を残している

指輪に願いを込めるのは、紀元前からの人の願いだ 大学生になってから、指輪を手にする事が増えた。誕生日や頑張った仕事の後、自分へのご褒美に買ったり、買ってもらったり。 嵌めるのは必ずK10以上。嵌めっぱなしでも褪せないように。面倒くさがりの自分でも、つけていられるように。 つけるのはいつも、右の中指と左の親指、そして小指。それ以外はつけない。薬指につけられるサイズは買いもしない。 中指にリーフ型の指輪を着けた。間には小さなダイヤモンドが輝く。 重ねるように薄紫の石が輝く

一人ぼっちの送電塔がここではビルに埋もれていた

送電塔の周りに建てられたビル群が、何度見ても別の土地に来たのだと考えさせられた。 生まれは決して栄えていた町ではない。神奈川出身ですと言っても、神奈川は広いし、横浜出身ですと言っても高低差があるのは明白である。港区出身ですと言うわけじゃあるまいから、世界は意外にも狭かったりする。 隣町は田園で、いやちょっと嘘ついた。田んぼはなかった気がする。畑か? 話を戻そう。隣町は遠くの家まで見れるだけ高い建物が無かった。林と住宅街と畑。車の通らない広い道路。自分の住んでいる狭い世界が