鯛の塩釜焼きで、ソロ引越し祝い
女の自立は台所の自立から
冒頭の一節は、桐島洋子さんの著書『聡明な女は料理がうまい』から。私は気に入った本を何度も読む派だが、この本はいつ読んでも面白い。共感ポイントが多すぎて、是非飲み友達になっていただきたいと毎回思う。
さて、18歳で上京して以来、小さなキッチンを常にフル活用しまくってきた私だが、今回の引越しで夢にみた広いキッチンを得ることができた。なんだかようやく一国一城の主人となれた気がしている。ありがとうOtto氏。
パリの鳥小屋アパートと比べれば、キッチンの広さ自体が体感30倍くらいになったし(あくまで体感)、窓付きだし、収納もかなりあるし、大きなオーブンがあるし。壊れていて使えず不要でしかない食洗機内に、朝起きると謎に水があふれてくること以外は概ね満足だ。
また、調理スペース以外に大きなアイランドテーブルがあるので、料理はもちろん、編みもパソコンもなんでもキッチンでこなしている。さらに、食卓スペースにはまだテーブルや椅子がないので、ここで作って食べて飲んで…と、リアルにキッチン住まいである。
noteのご近所さんたちに懸念いただいているコンロ事情については、備え付きのガスコンロ(4口)があるのだが、まあ訳あってこちらが現状使えず、パリで使っていた一口ポータブルコンロを未だに使っている。
苦笑きわまりないわけだが、慣れとは恐ろしいもの。特に不便というわけでもなく、よっ!頼もしいな相棒!!くらいに思っている。まあ、早いとこ通常運転ができるようになることを祈ってはいるけれど。
束の間のパリステイ
がらっと話題は変わり、時は10日ほど前に戻る。
引越し翌週からOtto氏はバカンスをとり、義弟に会うために義母とともにベトナムに旅立つことになっていた。3週間ほど。なんとまあ綱渡りですこと。
お留守番の私と俺は、彼らとともに前日入りして、翌朝シャルル・ド・ゴール空港までお見送りにいくことにした。とても久しぶりの空港、3年ぶりくらいか?空港内は観光客で混雑していた。
2人が受付をしている間に空港内散歩。雑誌のコーナーはこの方が大半を占めていた。
お見送り後、ロワシーバスでオペラまで。最後列でひたすら大声で悪態を吐き続ける大迷惑な女性がいて、ああパリに戻ってきたか・・・と感じる。途中で警察が乗ってきて連行されていったので以後平穏が戻ったが。
もう住んでいないとなると、見慣れたパリの景色もなんだか懐かしいものに変わる。感傷に浸る間もそんなになく、ダッシュで日本食だのコリアン系食材だのを買いあさる。
食材でだいぶ重くなってしまったが、少し時間がありそうなのでレ・アールのMUJI(無印良品)まで足を伸ばし、大好きな整理用のプラスチックケースやスリッパなどを買う。それにしてもあのカスタムできる素晴らしいケースを考えたひと、天才だと思う。
パリに住んでいたときは15分くらいのところにあったから重宝していたMUJI。フランスにはパリとリヨンにしかないけど、せめてリールくらいにできてほしい。
その後は引越し前に会えなかった親友とフレンチランチ。こちらはこのお店のスペシャリテらしい前菜のうなぎ。
メインは隣のムッシューが食べていて美味しそうだったので仔牛をチョイス。美味しかったけど、なんと追加で12ユーロとられていた。私としたことが見逃していたらしい・・・あと1杯ワイン飲めたのに。。
束の間の楽しい時間を過ごしたら、夕方のTGVで北へ戻る。新宿から松本に戻るあずさ的な気分かしらね。またねパリ。
ひとりごはん生活のはじまり
そんなこんなで、引っ越したての北フランスでひとりごはん生活が始まることとなった。(非常にワガママな)Otto氏の胃袋を考えなくてよいので、思う存分自分の食べたいものを作ることとする。
※なお、タイトルの料理までいきつくまでに作ったものをひたすらのせていたらえらい量になってしまったので、ご興味のある方は時間のあるときにビールでも飲みながら読んでください。
おそばと久しぶりのごぼう
パリから帰宅した日の夜。ランチに美味しいものを食べたので、これは夜もちゃんとしておかなくてはと、とりあえずなんと言っても和食で決めよう。
母が昨年送ってくれた乾物たちの中で大切にとっていたこちらの乾燥ごぼう。
水で戻したのち、にんじんとともにごま油で炒めて醤油みりん酒であっという間にきんぴらごぼうの完成。いつもトピナンブール(菊芋)で代用していたので、ひさしぶりのごぼうの歯応えに感極まる。
この日のメインは、パリで仕入れてきたおそばである。パリではスペースの関係上温存していた、頂きものの漆プレートにのせていただきます。
きんぴらの横はきゅうりとわかめの酢の物だったかな。箸休め。
そうそう、この日はグルメなパリ深酒友Aちゃんが太鼓判のこちらをファサーした。ごはんにもとても合うのだが、そばはさらに最高すぎた。
ナスとパプリカの麻婆風メインの和定食
前日のあまりのきんぴらと酢の物のほか、油炒めしたナスとパプリカに味噌炒めした牛ひき肉を合わせて最後に山椒の辛味を加えたものがメイン。あとズッキーニのナムルと、昔好きだったじゃがいもにんじん玉ねぎ&わかめの味噌汁も添えた。
普段は一皿入魂型ドーンってのが多いけれども、本来はこういうちょこちょこ少しずついただくというのが好きなのである。D・N・A!
こちらのナスパプ麻婆は翌日のランチにガパオライスっぽくしていただいた。
鶏とグリル野菜の和風マリネでおつまみプレート
肌寒くなってくると赤ワインの出番。今日は飲むぞと決めた日は、おつまみプレートといこう。
鶏肉と野菜を合わせ酢でマリネすることにした。合わせ酢はだし汁、醤油、みりん、米酢を煮立たせたもの。野菜は玉ねぎ、パプリカ、にんじん、ズッキーニ。適当に同じくらいの大きさになるように切り、オリーブオイルをまぶしてオーブンでグリル。
パリでは韓国系スーパーで骨なし鶏モモを買うことができたが、こちらではもちのろんで骨つきしか入手できないので、骨を外してぶつ切りに。つぶしたにんにく&オリーブオイルでソテー。
あとは鶏と野菜を合わせ酢にどっぽーん。
ホール黒胡椒なんかも入れて、粗熱が取れたあとは冷蔵庫で冷やす。
結構手間がかかったけれども、マリネを落ち着かせている間にさらに手のかかるものに手をだす私はマゾなのか?予想以上に手のかかる惣菜の代表ポテサラを作ることにした。
今宵はおつまみ系なので、ハムじゃなくてベーコンを使用。あらかじめ炒めて黒胡椒をふり、全部合わせて完成。
地味に手のかかっているおつまみプレート。赤ワインとともにいただきます。
左上のうさぎちゃんは、ミニトマトで。
前回の投稿にも確かのせた気がするけれども、りんごうさぎっぽくトマトを切ってみたらそれじゃ雑だとインスタで突っ込まれたので、ミニトマトでリベンジ。並べるとなかなか可愛い。蟹足にみえなくもないけど。
このマリネ、翌日はさらに味がしみて美味しくなる。そのままでももちろん、パスタにかけたりしても美味しい。
朝ごはん用キャラメルメープルピーカンナッツマフィン
パリにいたときはほとんど朝は何も食べなかったのだが、こちらにきてから午前中に動くことが増えたので、ちゃんと固形物の朝ごはんを食べるようになった。これはいい兆候なのかしらね。
Otto氏がいないのに甘いものを作るだなんて明日雪がふるんじゃ?と思いながら、これまた超久しぶりに朝食用の甘いものづくりをすることにした。
ビオの計り売りコーナーに並ぶナッツ類の中からNoix de pécanをチョイス。グラニュー糖と水でキャラメルを作ったら適当に砕いたナッツを加えて混ぜる。メープルシロップ好きなので、ここにメープルシロップも投入。
小さめのマフィン型に入れて、オーブンへ。オーブンはとても立派になったので、早いとこ仲良くならなくては。
毎日朝、2つずつ温めて食べている。メープルのほのかな香りがとてもよい。
このマフィン、牛乳にとても合う。辛党のスイーツっぽく甘さも控えめでなかなか上出来。
カツレツとヒレカツ
パリを発つ前に米やソースなど買ってこれなかったので、リヨンの日本食材店のネットショッピングで仕入れることにした。フランス国内なので配送も問題なく3日くらいで届いたのだが、パン粉のチョイスを間違えたのか相当に巨大なお姿。。
衝撃ののち、これで当分パン粉に困ることはないな・・・とほくそ笑みながら、週1で豚肉にパン粉をつけて揚げ焼きしている。
先週は、豚肩を叩いて伸ばし、塩胡椒→小麦粉→卵→パルミジャーノレッジャーノ→パン粉の順でつけてオリーブオイル&バターで揚げ焼きした、ミラノ風カツレツ。
今週は、豚ヒレ1本中半量をヒレカツに。
付け合わせは左から焼きパプリカのマリネ(上にのせた鶏と野菜のマリネの漬け汁に追加投入した)、フリット(もちろん冷凍)、速攻で作ったキャロットラペ。
来週はどんなパン粉料理をつくろうか・・・。
鴨のロースト
先週の土曜日。本当は鶏を一羽調理したかったのだが、適当な大きさのものが見つからなかったので、鴨を調理することにした。
いつもはオレンジソースで洋風にしてしまうことが多いけれど、今日は和っぽくしたいので、白ごはん.comさんを参考に。
下処理したら、焼く。
このレシピ、火を止めたりつけたりするだけで簡単だった。最高に美味しいと銘打っているだけあって、美味しい。こりゃ保存しよ。
鴨の周りには、山椒、岩塩、からし、わさび、柚子胡椒。
こちらは退職時に同僚兼友人からいただいた器。中に煮汁を入れて鴨の上にまわしかける。美味しすぎて飛んだ。
そうそう、鴨を焼いた翌日は鴨南蛮そばと相場が決まっている。鴨沈んでるけど。
日曜日は港へいこう
さて、ようやく今日の投稿のメイン。
日曜日は港でもマルシェがあると街の手引きに書いてあったので、早起きして港へ俺と向かう。徒歩40分くらいかかるから軽い遠足である。
常設の鮮魚店はたくさんあるけど、今の季節は5店舗くらいしか開いていないっぽい。時間帯にもよるのかな?
ノープランでぶらぶらしながら、生牡蠣かイカあたりかな〜と物色していたら、立派な鯛を発見。よし、これに決めた。
楽してウロコと内臓だけ取ってもらった鯛氏。これで700g強。
鯛の塩釜焼き
シンプルかつ大胆に決めて差し上げようってことで、我が得意料理のひとつ、塩釜焼きといこう。
ひとりごはんで鯛まるごと塩釜焼きするなんてマジ狂ってんな・・・とお思いだろう。がしかし、がしかしだ。我が家はOtto氏が塩釜も魚まるごとも拒否反応を示すので、ひとりごはんでしか満喫できないんだなこれが。じょり家の事情。
スーパーで買った1kg入りの一番安い塩に卵白を2つ入れて、ひたすら手で混ぜる。塩は傷にしみるのでビニ手必須。ふわっとしてきたら準備万端。オーブンの天板に土台を作って、その上に水でもどした昆布をしき、鯛をのせる。なお、鯛の内臓部分はきれいに洗って、皮付きの生姜をスライスしたものをつめた。
この上にまんべんなく塩をかぶせる。白いとどうしても俺アートしたくなる欲をおさえつつ、お魚っぽくお絵描きなんかしてみたりして。
あとは200度のオーブンで30分くらい、焦げ目がつくまで焼くだけ。
そうこうしているうちに一丁上がり!
準備はととのった。お供はロゼのプロセッコ。
いよいよご開帳。綿棒で叩き割る。そういえば昔、Otto氏のカナヅチを使ったらその後使えなくなったとえらくご立腹だった。だから塩釜嫌い説。
上半身をまずいただく。
レモンをきゅっとしぼっていただく。ふっくらして塩加減もちょうどよい。シンプル一番!下手にハーブとかいれなくて正解だった。
生姜パワーでくさみが取れてよかったし、ほのかに昆布の香りが染みてほっとする味。
鯛のお茶漬け
翌日。残りの下半身をいただく。前々日の鴨なども一緒に。
あまりものだらけになりそうなので、なんとなく高野豆腐を煮付けてみたりした。
和風おつまみたち、ワインが進む。
締めはもう決まっている。リヨンからやってきた白米を炊いて、鯛茶!
炊き立てごはんに鯛の身をのせ、塩釜焼きで使った昆布の戻し汁を温めて上からかけるだけ。
例のぶっかけ海苔をのせたら完成。
するするっと流し込むと、胃もこころも実に整う。
鯛のアラ汁
私は「魚は食べられないところはない」との祖母の教えを脳裏に焼き付けている。身以外の余った部分ネギとともに煮て翌朝はアラ汁に。
鯛もここまで食べ切られたら本望ではなかろうか。知らんけど。
わ!気付いたら5000字こえてる。
それだけひとりごはんが楽しすぎるということだな。万歳!
さて後半戦は何食べようか。
おまけ
調理体制&飲食体制に入る物音を聞きつけては、OMTに俺用毛布を引っ提げてやってくるうちの俺。