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圧倒的に映えないのは、郷土料理の宿命なのか〜フラムクッシュ、またの名をタルト・フランベ

パリを離れてOtto氏の故郷、フランスは北部、ノール地方で過ごすお盆期間。

何もしていないのに謎の疲れがどっと出て、クリエイティブなことができなかったここ数日。数時間前、まどろみの中かろうじて書いた赤身肉の記事がその限界を物語っている。


そんなお疲れモードではあるが、夜風が気持ちよくなってきた頃、ふと、むくむくと元気が湧いてきた。こんなときこそ、しばらくおやすみしていた創作活動にとりかかることにしよう。

ということで、今日は、最終日にしてようやくその地方の郷土料理をつくってみようシリーズ。

ノールの郷土料理って、なに?

Otto氏に、このあたりの郷土料理とはなんぞや?と尋ねてみたところ、

まあ、とりあえずはフリット(揚げたじゃがいも。フライドポテトともいう)と、ビール


はいはい、ベルギー近いしね。わかる、わかる。

ちなみにこのあたりでは、ロードサイドに「friterie」(フリットリー)というフードトラック的なフライドポテト屋が点在している。ポテトと、肉を焼いたものとかハンバーガーとかを提供してくれるのだが、大体お客が列をなしている。

超絶ジャンキーなので、ああ、これを毎日食べてたら大変なことになるけれど、たまになら大大歓迎。揚げたてのフリットほど美味しいものはない。

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パリから北に向かう途中の村的なところにあるフリットリー

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北に向かう道中、私は助手席で寝てるだけ
そんな私にはビールを買ってくれる優しいOtto氏


次、タルト・マロワール

あの衝撃的にくっさいチーズね。こないだ意を決して作ったやつ。今回はいいや。

他には?と尋ねたら、

うーん、Flammekueche(フラムクッシュ)かな?

ん?あの読み方がいつもわからないパリパリとしたピザみたいなやつか。
2、3回レストランで食べたことがある。

「Alemannisch Flammekueche 」「 Flammwaie」「 Elsässisch Flammekueche」「 Lothringisch Flammkuche」など様々な呼び方がある。フランス語ではタルト・フランベと呼ばれる。
長方形(伝統様式)もしくは円形をした非常に薄いパン生地をフロマージュ・ブランなどのチーズもしくはクレームフレーシュ(サワークリームの一種)で覆い、薄くスライスした玉ねぎとラードン(英語版)をのせて焼いた、薄焼きピザに似た料理である。

ほうほう、ドイツ語っぽいなと思っていたら、やはりドイツとの国境・・・って、ドイツの国境って東じゃないの?

フランス語のサイトも色々と調べてみたけれど、これ、ノールの郷土料理じゃなくて、アルザス地方(東部)の郷土料理としか出てこないんだけども。

不思議に思って、昨日義母にお招きされたときにも、義母とそのパートナーに同じことを尋ねてみた。お二人とも、フラムキッシュは確かにアルザスが有名だけど、このあたりの郷土料理でもあるとおっしゃる。

呼び方はたくさんあるし、地元の方々はこの辺の郷土料理でもあるというし、もうなんだか意味がわからなくなってきたよ。ぐるぐる。。


ちなみに、他の郷土料理についてはこんな感じ。全体的に、茶色い。

上のサイトの最初の3つを紹介すると、

1、La Carbonade flamande(カルボナード・フラマンド)
北版ブッフ・ブルギニョン。ワインのかわりにビールで煮込むらしい。もちろんフリットを添えて。

2、Les Chicons au gratin(チコリのグラタン)
これは冬の定番。ゆでたチコリ(アンディーヴ)でハムを巻いてこーってりなベシャメルソースをどーっぷりかけてチーズかけて焼く。これは義母が何回か作ってくれたから覚えている。今年の冬に作ってみよう。

3、Les Moules-Frites(ムール貝のココット&フリット)
フランス全土でおなじみ。ムール貝を香味野菜とともに蒸して、フリットともに。お供は大抵ビール。

ここまでまとめると、とにかく、じゃがいも・ビールはまちがいなくポイントなのだな、ということが見てとれる。残念ながら、まったく驚かない。


郷土料理とは、結局のところ

アルザスでは、アルザスまたはドイツビールをお供にすることが多いらしいフラムクッシュ。

もしかしたら、このあたりでも地元もしくはベルギービールをお供にすることが多いから、知らぬまに郷土料理化しているのかもしれない。

ぐるぐるぐると考えながら、そんな推論をしてみた。

まあでも。生まれ育った土地での小さい頃の味は、誰になんと言われようと、wikiにどう定義されようと、そのひとにとっての郷土料理だよなあ・・・なんて思いながら、ビールをキンキンに冷やしつつ、調理開始。


さあ、つくってみよう

今日は、なんとなく見た目が素敵っぽいこちらのレシピを参考に作ってみた。アルザスの白ワイン合わせてるけど。


生地は、市販のピザ生地でもできるようだが、とにかく薄いのがポイントらしいので、簡単にできそうだし自作してみることにした。

【生地の材料】
・小麦粉:250g
・塩:小さじ1/2
・オリーブオイル:50cc
・ぬるま湯:150cc

ボウルに小麦粉と塩、オリーブオイルをいれて、ぬるま湯を少しずつ加えながらぐるぐるかき混ぜ、まとめていく。

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その後、5分くらい生地を打ち付けては伸ばしての繰り返しでこねて、ひとつにまとめ、ラップをして冷蔵庫で1時間くらい休ませる。

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意外にもとっても扱いやすい生地でうれしい

上にのせる具は、キッシュロレーヌ同様、玉ねぎとラードン(ベーコンみたいなややつ)。

・玉ねぎ:2個
・ラードン(ベーコン):1パック100g
・バター:20gくらい

玉ねぎを焦げないようにバターで炒め、玉ねぎが透き通ったらラードンを加えて火を通し、軽く塩胡椒をしておく。

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クリームソースを作る。

・クレーム・フレッシュ・エペス(生クリーム):100g。液体ではなくどろっとした、柔らかいヨーグルトみたいな形状の生クリーム。フランスのスーパーでは普通に売られているのだけど、日本では見たことがなかったような・・・と思ったら、一応あるけど高い。
・フロマージュ・ブラン:100g。水切りヨーグルトで対応可。

クレームフレッシュとフロマージュブランをボウルで混ぜて、塩、胡椒、ナツメグで味付けするだけ。

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これで役者は揃ったので、オーブンを最高温度(義母宅のものは230度)まで予熱しておく。

オーブンの天板にクッキングシートを敷き、休ませておいた生地を伸ばす。
めん棒が見当たらなかったので、ひたすら手でのばしたけれど、とても扱いやすい生地のため難易度は高くなかった。

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生地の上に、クリームソースをまんべんなくのせ、伸ばす。

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その上に、具をこれまたまんべんなくのせて、胡椒をふる。

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230度のオーブンで様子をみながら20分くらい焼いて、できあがり。

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うむ。ちょっと焦げたけどいい匂いはしている。


見た目が映えなくても、予想以上の美味しさ

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なにかしら緑っぽいものを足したい衝動に駆られるけれど、それじゃ本物じゃなくなるとOtto氏から勢いよく反論を受けた。

いつもの私なら強行突破して、シブレットをふりかけるかパセリを飾るか、はたまたルッコラをこんもりのせてみたりするけれど、今日は郷土料理なので本場の人の言うことを尊重しよう。ということで、このままでフィニッシュ。

Otto氏お気に入りの地元のビールとともに、いただきます。

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ちなみにこのビール、飲みやすいのだけど、アルコール度数8.5%もあって結構危険。


肝心のフラムクッシュはというと、予想していた以上に美味しくてパクパクいける。

ピザみたいなもんだろうと思っていたけれど、イタリアのピザとは明らかに一線を画す。上にのせるチーズの代わりに下にクリームが敷かれたと考えればいいのかな。

玉ねぎの甘み×ラードンの塩辛こってりな具を、クリームソースの若干の酸味がうまいこと中和してくれていて、パリッとした生地がこれまたいい。これはこれで大アリだ。

作り手としては、なによりピザより用意する材料が少なくていいし、簡単だし、お腹もふくれる。
Otto氏は言わずもがな、大喜び。パリでもまた作ろうと決めた。

見た目は地味でも、かなりのやり手とみた、フラムクッシュ。
色々な場所で郷土料理と呼ばれ、様々な呼び名があるだけあるわ、アナタ。


そんなフラムクッシュに敬意を表しつつ、ビール売り場@このあたりの普通のスーパーの様子の一部をご紹介して、ボンヌニュイ(おやすみなさい)。

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ザ・ビール天国


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ユイじょり
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