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夫の質問 ・ タンスの底
夫の心臓外科の定期検診の日だ。
朝から暑くなりそうな日で、白地のワンピースを着てついて行くことにした。ヴィンテージのショーウィンドーにあったのを衝動買いしたものだ。
その昔、ダイアナ妃がチャールズ皇太子の相手と騒がれ始めた頃、若き彼女の写真が流れ、メディアの関心をかい人々の口にのぼった。
ワンピースの下にスリップをつけていないのが、日差しの加減でわかってしまったのだ。
ダイアナ妃と比べるのはおこがましいが、この白地のワンピースのため買い求めたスリップを探した。
それで、たんすの一番上の引き出しをあけたがそこに見当たらない。
上から二番目の引き出しにもない。
そうか、ワンピースなどほとんど着ることもないので、ずっと下の引き出しにしまったのかと思い直し、三番目の引き出しも開けてみた。
四番目まできた時スリップが見つかった。
でもそれは
この春デパートで自分一人で買い求めたものではない。
すぐにわかった。
ああ、とおに忘れたはずの忘れたい人からの贈り物だ。
ハッとしたのに、口からはなぜか笑い声が出た。
それを聞いた隣の部屋にいた夫が「どうした?」と声をかけた。
さて、何と答えよう。
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つか子と「あの人」:プロローグ1〜6
エピローグ:つか子と「あの人」
長編:[完 ]つか子と「あの人」プロローグ・本章・エピローグ:編集中
最近の作品: 『夫90歳・妻77歳:フィリーは朝食の話』
『人[.を ]見たことのない土地』 『救急車のサイレン』 『夫の質問:タンスの底』 『外せないお面』
『みじか〜い出会い・三つの思い出』
『スイカと鳩:ひとりの小さな平和活動』 『昭和40年代:学生村のはなし』『クエーカーのふつうしないこと:拍手』
『アフリカ系アメリカ人:一瞬たりとも』 『明治の母と昭和の娘』
『本当の思いを云わ/えない本当の理由』
『伝統ある黒人教会のボランティア』
『スッキリあっさりの「共同」生活』
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