【日本一周 東北編5】 「遠野物語」の舞台へ行く
・メンバー
明石、尾道、釧路、宮島
・遠野は遠いぃのぉ 筆者:明石
日が傾きはじめた頃に、遠野到着。
なかなか長い道のりで、しかも高速は一車線で、無駄に神経を使わせる。しかもしかも、遠野はあくまで寄り道だから、一時間かけてきた一車線道路を馬鹿みたいに戻らなければならない。それを踏まえた上で遠野よ。その労力に足る魅力を秘めているのかい?
続石へ向かう山道は、おどろくほど急だった。西日を遮る杉木立は強風に煽られて、木枯らしのお手本みたいな音を奏でている。そのせいで僕たちの体温はぐんぐん奪われ、身を寄せ合う相手を持たない男子大学生らは、凍えた体を震わせ不器用なステップを踏むはめになった。
件の続石は、山の中腹辺りに鎮座していた。噂通り、いや噂に勝る超自然的なたたずまいに、図らずも感動した。
アーチ状の続石は、一見して2つの岩にまたがって1つの巨岩が乗っかっているように見えるが、その実、1つの岩にのみ重心を置いており、その物理法則を無視するかのような姿に魅力がある。巨岩の表面には、これまた物理法則を無視するかたちで10円玉が挟んであった。
(岩や泉があると硬貨を投じてしまう人間の性は、なにゆえなのだろう。寺社仏閣に賽銭を投ずる価値観が、アミニズムを有する自然へと意識かけるのだろうか。ともすれば、ディズニーのパーク内の人の手で造られた泉に投じられる硬貨はなにゆえ?)
くだらない思案はこれくらいにして、続石よりさらに高いエリアを散策すべく、尾道と宮島の「もう帰ろうよ」という視線を感じながら、釧路と共に、頂を目指してどしどし登っていった。
小学生のときに遊びふけった地元の裏山の思い出話に花咲かせながら、どしどし。滑落したら重傷を負いそうなほどには急な行程を進み、たどり着いた場所には巨岩がごろごろ。
柳田國男の「遠野物語」には、ある山の山頂の巨岩の上にて、天狗が金銀の取引をしていたとの話が収録されていた。そのような伝承があるのも肯ける光景である。続石、これにてどろん。
・巨石、続石。 筆者:尾道
恥ずかしい話、この旅行まで「遠野物語」を平安時代かなんかに書かれた紀行文だと思い込んでいた私だが、正しくは20世紀初頭に書かれた遠野地方に伝わる伝承をまとめた説話集であると、明石に教えてもらった。これから向かうは「遠野物語」第11話の舞台、続石である。
平泉から車で約1時間半。最初に我々を迎えたのは、生木でできた鳥居であった。その傍らには「熊出没注意」と書かれた警告看板。緊張感とともに鳥居をくぐり、先を進むと、思いのほか険しい道が続く。しかも結構上るじゃん。よかった、入り口の杖もってきといて。
熊に出くわさぬよう手を叩きながら、山道を進むことしばらく、巨石が視界に入ってきた。これが続石か。
山肌に並ぶ2つの巨石、その一方に横長の巨石が乗っかって、鳥居型を築いている。ご利益がありそうなソイツを背に記念の1枚をパシャリ。背景の木々と日光の具合とが相まって、神々しい写真が取れた。インスタ映えだね、クソが。
ところで、岩肌を間近で見ると、夥しい数の小銭が表面の窪みに埋め込まれていることに気付く。強引なお賽銭といったところか。これだけご利益ありげな雰囲気を醸しているのだから、なんとか試みたくなる気持ちは分かる。
想像以上のガチ登山、かなり疲れたけれど良いもの見れた。
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