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【日本一周 京都・滋賀篇17】 天龍寺の拝観料、俺たちにはちとお高いぜ
・メンバー
明石、尾道
・内容に見合う価格設定 筆者:明石
7時。アラームに起こされて寝ぼけ眼をこする。30分後に出発する予定なので、テキパキ準備を整えないと遅刻してしまう。昨夜は日付が変わるころには就寝したはずだが、それでも疲労は取りきれていないようで、体に気怠さが残っている。
ふと、明石に視線を向けると、未だ夢の中にいるようだ。じゃあもう少し寝ててもいいか。無理に起こすのも悪いし、自分もまだ寝てたいし。
こうして40分も遅れて宿を発った。
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本日一発目は天龍寺。駿台の日本史講師から聞いた話だが、かつて、元教え子同士がこの地でデートをしていたらしい。なかなか渋いチョイスだ。
「お前らも大学生になったらたくさん遊べるんだから、今は死に物狂いで勉強しろよ」的なことを言われた気がする。肝心の文化史はろくに覚えていないが、どうでも良い余談ばかり記憶に残っている。悲しいかな。
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入り口にある「世界文化遺産 曹源池庭園」と書かれた看板を見て、ふとこれまでの日本巡行企画でどれほど世界遺産を網羅しているのか気になった。
そこで記憶をたどってみると、るるぶを基に旅程を組んでいるだけあって、大方のスポットを巡っていることが判明した。
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京博の記事にあるように「括り」に目がない私にとって、「日本の世界遺産制覇」はそれはそれはよだれが出るほど手に入れたい称号である。本旅行で東寺や延暦寺に行けないことへの後悔を押し殺しつつ、人生をかけて達成する目標に据えた。
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お堂の玄関には達磨図という、大胆な筆致で描かれただるまの顔の絵が飾ってある。この絵の何が面白いかって、普通「だるま」と聞いたら顔と体が同化した一頭身を想像するが、この絵のだるまは人間と同じ姿をしていて、頭と体は別々になっている。
そしてコイツ、顔の形と言い表情と言いとても愛くるしいのだ。まず顎がこれでもかというほど引き延ばされていて紙に収まりきっていない。
真一文に結んだ口の両脇には、強調されたほうれい線が走り、目線は真上に向いている。思案に耽っているように見える表情はどこか間が抜けて、朝一の我々にシュールな笑いを提供してくれた(しばらくiPhoneの壁紙にしてた)。
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本堂から望む大きな曹源池は背景の森と2月の青空によく映え、その手前には枯山水が敷かれている。
ガチ水とニセ水という、稀有な組み合わせをしばらく眺めたあとは、畳が敷かれた回廊を進み広大な境内の奥を探索してみたが、迷路的面白さ以外に享受できたものは特になく、拝観料の800円に見合うなにかを見つけようと焦りが出てきた。
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本堂では特別に旧雲龍図が公開されており、だっだ広い畳の間の一角に、大きな龍の天井画(を剝がしたもの)が展示されている。上方向に睨みをきかす双眼と野太く長い2本髭をもつ龍が数メートル四方のキャンバスに描かれている。その迫力に飲まれ、しばらくの間釘付けになっていた。
最後の最後にいいものを見れたな、という思いで、天龍寺を後にしようとすると、本堂の隣で新雲龍図が見られるということで、旧雲龍図を越える画を期待して追加の500円を支払ったが、これが大失敗だった。
お堂内部は文字通りの伽藍洞で、本当にただただ、龍が天井にへばりついているだけだ。隅っこに立つスタッフさんは「はい、見終わった人から帰ってくださいー」と言わんばかりの様子で、我々の方を見ている。
値段に対してコンテンツが少なすぎるだろ、という不敬な文句をこぼしながら計1,300円の見学を終えた。