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【日本一周 北関東編6】 植物園は熱帯にかぎる


・メンバー

明石、尾道、釧路、宮島

・熱帯植物の誘惑  筆者:明石


 上野の国立科学博物館が有する筑波実験植物園は、キャンパスメンバーズの存在と一緒に「ここも無料で行けるんだ」と知って以来気になっていた。


*キャンパスメンバーズとは
 大学が国等にお金を納めることにより、生徒が一部の国立博物館の常設展等を無料で観覧できる仕組みのこと。


 国の運営する植物園と聞いて、どんな素晴らしいものがあるのだろうと期待して入園したが、屋外で育てられている植物は関東の気候だけあって近所で見られるものが多かった。


近所の林と似た景色


 たしかにそうか、植物は動物と違って自ら動くことができないから、分布はそれぞれにとって最適な環境に自然と落ち着くのか。関東の外気に適応できる品種となると、河原をはじめホームセンターとかですでに見ていてもなんら不思議はない。


 絶滅危惧植物が集められたビニールハウスもあった。彼らは特異的な性質を持つゆえの希少性ではなく、亜種のためにマジョリティに追いやられてしまったといった趣があった。


 そのため、絶滅が危惧されているにも関わらずあまり当事者意識はないようで、「あなたたちが別種としてわたしを見たんでしょ?」とどこ吹く風といった態度だった。


人目見て絶滅危惧種とはわからない、、、


 森林エリアはいよいよ新宿御苑のようだった。公園に散歩に来たと錯覚するほどである。でも、考えてみれば新宿御苑も入園料取るし、それでいえば大学生のうちならここは無料だし、近所に住んでいたらちょうどいい散歩コースになっていたかもしれない。


 家の近所の河川敷を散歩していても「この植物はなんて名前だったかな」と気になる性分であったから、すべての植物にネームプレートがついているのもありがたい。そうだ、この施設は散歩コースとして使うのがもっとも有効的で友好的な方法なのだ。


植物園にあった、釧路が幼少に近所で採って食べていたという実


 そう考えると、博物館としての意義を見出そうと躍起になっていた肩の荷が降りて、より純粋に空間を楽しむことができるようになった。何に対しても、期待しすぎるのはよくないね。


 そんなこんなで、アヤメとカキツバタの違いや、クレマチスの原種、あのかっこいい昆虫と同名の「ミヤマクワガタ」という植物なんかに小さく感動しながら遊歩した。そして、次のJAXAの予約時間が迫って入場口へと戻る道すがら、「熱帯資源植物温室」と邂逅する。


いまだに信じられない名前


 あ、これはまずい。温室に入るやいなや、そう思った。どう考えても面白すぎるのである。


 蒸し暑い温室には、普段の生活には絶対に紛れ込むことのないヴィヴィッドな色遣いかつ奇天烈な様相をした植物がひしめきあっている。これはシビアな立ち回りが求められるぞ。


デザイン性が高すぎる


 ピクミンのチャッピーみたいな斑点のまとった緑の葉っぱの裏が、真紅に染まっている予定調和に感激したり、中学理科で習ったコダカラベンケイソウみたいに葉の縁から新芽を生み出すタイプの単子葉類に新鮮味を感じたり、、、


 アボカドの発芽を当事者比30倍のダイナミックさで再現したようなココヤシの発芽に目を奪われたり、生々しいまでのしっとりとした艶と紅を兼ねそなえ、本当に生命活動に都合のいい造形であるのか疑いたくなるような蕾に悩まされたりした。


色も形もエキセントリック


 やはり、植物園は“熱帯”植物園に限る。普段の生活ではお目にかかれない植物に謁見する機会が与えられることによって、非日常のわくわくも得ることができるらだ。


 思えば今までの旅行でもそうだった。交通の便が発達したために遠い場所でも数時間で行くことができる現代では、旅先まで来たという実感がなかなかに湧きづらい。その中で実感を与えてくれるのが、生態系の変化である。


植物園の真骨頂「熱帯」


 自分の暮らしている街と歩く動物、飛ぶ鳥や虫、泳ぐ魚、揺れる植物が異なっていると、一気に「遠くまで来たものだ」という興奮をまとった悟りを得ることができる。


 中でも、能動的に探さなければならない動物と違って、地面に根を下ろす植物は自然と目に入ってくるためイニシエーションを担う存在となる。


 九州で街路樹として連なるナツメヤシ、北海道の白樺の林と熊笹やフキで構成された下草、屋久島のタコノキやガジュマル、、、。そのため、これらの特別な植物が目の前で一堂に会していると、条件反射的に胸が沸き立ってしまうのだ。


 とまぁ、こんな感慨にふけるのも束の間、JAXAが僕たちを待っているというフレーズに酔いながら駐車場へと急いだ。


・ボタボタニー  筆者:尾道


 2日目の頭を飾るは、筑波実験植物園。


 正直なところ、植物園に興味があったわけではないが、旅程を組んでいた際、私も明石もキャンパスメンバーズで無料の見学ができると判明したので、寄ることに決めた次第だ。営業開始の10時とともに、チケット売り場に向かい、まず初めに明石と2人で入場する。


みどり


 先の経緯があるから、宮島と釧路に気づかれないように、素知らぬ顔で入ってしまいたかったが、こういう時に限ってしっかりと(宮島に)バレてしまい、「ちゃんと説明して」と朝からちょっぴりヒリついた、ごめん。


 が、宮島の所属大学は提携に加入しており、結局は釧路のみが料金を支払う形に落ち着いた。(もちろん共有財布から出しました)


*共有財布とは
 旅行中の割り勘作業の手間を軽減するために、あらかじめまとまった額を1つの財布に納めて、ガソリン代等の共通費をそこから払うものである。


みどりどり


 初めて植物園に来たのでどんなものかと楽しみにしていたが、その道の造詣が皆無な自分は、「あ~緑が茂っているわね」以外の感想が抱けなくて、軽く絶望した。


 また同時に、芸術に興味のない人が美術館に行った時の気持ちも、今なら手に取るように分かり、「興味ない人を誘うのは絶対に止そう」と肝に銘じた。


 何を見てもピンとこない。宮島と釧路も同じ調子に見えたが、対して、溢れんばかりの知的好奇心を持つ明石は、植物も守備範囲内なようで、既にある知識を強化しているように見えた。知識の幅に差がありすぎる…


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