『東京珈琲パンデチカ』あの時代の話
『コロナ禍を、思い出に。 珈琲を淹れながら、様々なお客さんと語り合いましょう。』
『東京珈琲パンデチカ』をクリアしました。
コロナ禍の東京のとあるカフェが舞台のゲームです。
プレイ時間は全実績解除含めて4時間半ほどでした。
カフェの店主として、来店するお客さんたちと話しながら珈琲を提供していくゲームです。
喫茶店系のゲームとしては、3Dであること、提供する珈琲がハンドドリップコーヒーであること、などの特徴がありますが、特に大きな特徴は「コロナ禍の東京が舞台であること」です。
来店するお客さんたちは皆、それぞれコロナ禍特有の悩みや苦しみを抱えています。
■"あの時代"
2020年、コロナ禍の始まり。
緊急事態宣言による外出自粛やイベントの中止、外食産業へのダメージ、医療従事者への大きな負担など、社会経済や個々の生活に大きく影響する出来事が沢山起きた時代です。東京オリンピックも1年延期しました。
コロナ禍も今は過去になりつつありますが、当時の閉塞感や閑散とした雰囲気はそれまでに無い仄暗いものでした。"冬の時代"だったと言えます。
その中でも、数少ない良かったと思えるもの。
それは"インターネットを介した人々の繋がり"です。
外出自粛やイベントの中止があるなかで、数少ない他者との交流の場がSNSを含むインターネットでした。
私自身SNSで他者と交流したり、何名かの配信者の配信に入り浸ったりするようになりました。今でもあの数年間は一つの記憶として残っています。
そういったコロナ禍特有の記憶、思い出、というのは誰しもが少なからず持っているのではないでしょうか。
『東京珈琲パンデチカ』ではそういった記憶や思い出を「コロナ禍のノスタルジー」として切り取っています。
■コロナ禍の"苦しみ"と"再起"
『東京珈琲パンデチカ』の登場人物は各々コロナ禍特有の悩みを抱えています。
当時の医療従事者としての苦悩を感じている看護師や、大会が中止になり目標を失ってしまったアスリートや高校生。
リアルイベントが中止になり自身の作品を公表する場を失ってしまった同人作家(主人公のカフェでアルバイトをしている少女)、など。
皆、コロナ禍で目標を見失ったり、コロナ禍により業務の負担が大きくなったりなど、当時特有の苦悩を抱えています。
本作ではそのような状況からの再起や再挑戦までの過程が少しずつ描かれます。
そうして登場人物たちが希望を持って再起する姿は"冬の時代"を乗り越える美しい姿に映りました。
■ハンドドリップコーヒー
『東京珈琲パンデチカ』ではハンドドリップという方法で珈琲を淹れます。
コーヒーミルで挽いた珈琲豆をペーパーフィルターに入れて、お湯を注いでコーヒードリッパーに淹れる方法です。
ゲーム中では何度も珈琲を淹れる事になりますが、いくつか変化が入る要素があり単調にならないところが良いです。
例えば、珈琲豆が3種類あり、それぞれの使用量によって珈琲の"苦味"、"甘未"、"酸味"、"コク"のパラメータ(以下、"各種パラメータ")に影響が出る事。
他にも、プレイヤー操作による豆の挽き方やお湯の注ぎ方で各種パラメータに影響が出る事や、珈琲スキルを入手していって各種パラメータが上がり易くなっていく事、など。
ゲームクリアまで耐えうる成長要素や変化要素があるので飽きることはありません。実績解除の為に各種スキルを集めていくのが楽しかったです。
■コロナ禍の"用語集"
作中ではメニュー画面からコロナ禍の"用語集"を参照する事が出来ます。
「緊急事態宣言」や「Go To トラベル」、「三密」など、当時によく耳にしたワードの解説を読む事が出来ます。
今では聞かなくなったワードがいくつかあり、「そういえばこんなことがあったな」とか「そういうことだったのか」と当時を振り返る良い資料になりました。
■後記
『東京珈琲パンデチカ』、コロナ禍当時の状況を思い出すには良いゲームでした。
私自身、コロナ禍の思い出というものはあるので完全に嫌な時代だったというわけではないんですよね。もちろん、作中の医療従事者や官僚さんの話のように大きな被害があった時代なのは間違いないのですが。
コロナ禍特有のその時代の雰囲気、というのは確かにあったと思います。
過去のものとなりつつある時代ですが、今もコロナ自体は残っていたりなど、私たちの生活から完全に消えたわけではありません。
現代は現代で多くの社会課題がありますが、本作の登場人物たちを見ていると辛い時代の中でも強く生きていきたいな、と思わせる内容でした。
■余談
ちなみに東京ゲームダンジョンなどのリアル展示イベントでは『東京珈琲パンデチカ』のブースに、実際のコーヒーミルを回すとゲーム内のコーヒーミルを回すことが出来る、というコントローラーがあります。
制作者さんの電子工作スキルを感じます。
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