不登校離職という社会課題【私たちNPOが、無料でLINE相談をする理由】
みなさん、こんにちは。
NPO法人キーデザインの土橋です。
突然ですが実は今、法人の借金は800万円になります。
昨年、一昨年と銀行から融資を受け、事業を運営しています。
公に話したことはないので、驚かれる方もいらっしゃると思います。
ですが、これは紛れもない事実です。
そんな中でもキーデザインでは、無料LINE相談窓口「お母さんのほけんしつ」を運営しており、全国から3,700名を超える保護者の登録があり、常時50名ほどの方とやり取りをしています。
栃木県内:県外=2:8、で県外のほうが相談は多いです。
この窓口は、子どもの不登校・行き渋りに悩む親御さん専用の窓口です。
支援員は
・仕事で日常的に不登校の子と関わる人
・ご自身のお子さんが不登校を経験したことのある方
など相談者の気持ちに寄り添えるスタッフを配置しています。
上で書いた通り、LINE相談を利用する方から一切料金はとっていません。
800万円の借金をしながら、です。
経営者や大人の方々からは
「何を考えてるの?」
「信じられない」
と言った声をいただくこともあります。
「料金もらわないと、いずれ潰れるよ」
「無償でやって、土橋は大丈夫なのか」
そうしたご心配をいただくこともあります。
そんなことを言われながら
窓口がスタートしたのは
2020年5月末なので、
もうすぐ4年が経ちます。
なんとか4年やってこれました。
長かったような短かったような。
借金を抱えてまで、どうして「無料」にこだわるのか。
今回はそんなテーマで記事を書きます。
1.他の事業はほとんどトントンです
キーデザインは主に3つの事業をしています。
①フリースクール
不登校・行き渋りの子どもたちが通う居場所であり、学び場
②ホームスクール
不登校・行き渋りで、外出も難しいもしくは個別の対応が特に必要な子ども向けの家庭訪問
③無料LINE相談窓口
子どもの不登校・行き渋りに悩む、お母さんお父さんのための無料LINE相談窓口窓口。「お母さんのほけんしつ」「お父さんのほけんしつ」そして「先生のほけんしつ」もあります。
ほかにもいくつか事業はありますが、今回は説明を省きます。
①②の収支はほとんどトントンです。
お月謝という形でご家庭から料金をいただいているからです。
それでも①②においては、最初の面談(家庭訪問)や緊急対応、施設外での支援にいたっては無償で行わざるを得ませんし、実際に細かく見ていくと月5〜15万程度の赤は出ています。私、代表の土橋が時間を使うことで、実質的には赤字が大きくならないように工夫しています。
箸休めにフリースクールの写真を何枚か。
2.そもそもなぜLINE相談を始めたのか
みなさんも覚えていらっしゃるかと思います。
コロナ禍がスタートした2020年の春。
学校が1〜2ヶ月ほど休校になった時期がありました。
2020年5月中旬
6月から学校再開となることがわかり、真っ先に思ったのは「不登校の子が増える」でした。
子どもたちが学校に行かなくなるタイミングで一番多いのは、長期休暇後です。ゴールデンウィーク明け、夏休み明けが年間の中で最も多いです。
これは「休み慣れして、学校がおっくうになった」のでは決してありません。
「元々学校に何らかの違和感や不和を抱えていた。長期の休みを経て、家にいることの安心を実感。一方で学校で感じていた違和感や不和が【不安】や【恐怖】に変わっていく。学校に戻ってしまったら、たくさん我慢や葛藤をするのではないか」
そんな感覚から、学校に行かない・行けないようになります。
大勢の子どもたちと出会ってそうした背景も知っていたため、コロナ休校明けに「不登校の子が増える」とすぐに考えました。
当時大人も「新型コロナ」に対して、得体のしれない不安感を抱いていました。そうした空気感で、子どもが不安になりやすかったのもあると思います。
なんとかそうした子どもたちのサポートができないかと、頭をこねくりまわしました。
普段の業務をしながら、数日間ずっと頭の中にはそれがありました。
「子どもたちは自分で声をあげたり、どこか支援先とつながったりするのは難しい」
「これまでフリースクールでも親御さんからの相談に始まり、結果子どもたちと出会い、こうしてみんな笑顔で過ごせるようになっている」
「子どもの一番身近にいて、なんとか子どものためになれないかと、血の滲むような努力と葛藤をする親御さん。そんな親御さんの涙を数多く見てきた」
そんなことが頭の中をめぐりながら
たどり着いたのが
親御さん向けの相談支援でした。
それもスムーズさや相談のしやすさにこだわろうと「LINE」を使うことにしました。
そんな声をよく聞いていたので
【困った今この瞬間に】
【手軽に】
【どこにいても】
【いつでも】
ということが大事なポイントでもありました。
3.早期相談で、親子のストレスは大幅減
A:子どもが不登校になってから1週間たっているとき
B:子どもが不登校になってから1年たっているとき
突然出しましたが、このAとBの2つの例。
みなさんはどちらのタイミングで相談窓口につながったほうが良いと思いますか?
言わずもがな、Aが正解です。
どんな分野でも「できるだけ早く」は当たり前のように言われますよね。
ですが、特にこの分野ではそのスピード感がとっても重要なんです。
ある相談の声を紹介します。
少し長いのですが、ぜひご覧ください。
ご覧になってみてどのように感じられましたか?
実はこの相談の声は、実際にあったものではありません。
これまで1000名以上の保護者の方から相談を受けてきた私が、よくある例を、1つの相談文として作成したものになります。
作成したものではありますが、おそらくお子さんが不登校を経験するお母さんお父さんは、この文章を読んで「うちと似ている」と感じる点が大いにあるのではないかと思います。
このケース、実はあるあるです。
人の悩みに重い軽いはあまり言いたくありませんし、それを評価することはできませんが、誤解を恐れずに言うのなら、10段階(軽い1→10重い)で考えたときの「4」くらいです。
かなり緊急を要する相談もありますし、3年、5年と数年以上経ってからの相談もよくあります。「もう誰も信用できない」「もう子どものことは諦めています」そんなことをおっしゃる親御さんも多くいらっしゃいます。
話を本題に戻します。
相談につながるスピード感がどれだけ重要なのかをご理解いただくためにこの例を出しました。
このケースは行き渋りが始まってから1年が経ったタイミングでのご相談です。
1年が経った今
・完全不登校からすでに10ヶ月ほど経っている
・親子感での会話はほぼない
・子どもは家族以外とのつながりはない
・お母さんは仕事を退職、外部とのつながりほぼなし
・子どもは親と話したくないと思っていると想定される
・夫婦間でうまく意思疎通がとれない(主人は理解してくれないと感じている)
・学校を頼ることはできない(親御さんの学校への不信感)
といった状況です。
もしこれが行き渋りが始まって2週間の頃であれば
・子どもも親も学校とのつながりはまだある
→スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーとのつながりをつくる可能性も見える
・親子で会話はできる
→子どものSOSを、親子の会話の中で聞ける可能性がある。
・夫婦間でもまだコミュニケーションはとっている
→夫婦間で今後の方針を話し合ったり、お互いにつらい時に話をできる可能性がある
・お母さんは仕事をしている
→家族以外とのつながりは、相談相手になりうるし、場合によっては支援期間とのつなぎをしてくれることも。つながり人の人数によって、頼れる先の可能性が大きく広がる
状況がこれだけ違うことで、今後の動きの可能性も大きく拡がります。
これが早期に相談先につながることが大切な理由です。
身をおく環境の変化
人との関係性の変化
心理的余裕の変化
といった部分で大きく状況は異なります。
相談先につながるタイミングが早いか遅いかによって、課題解決するためにできうる手立ての数が、何倍も変わります。
だからできる限り早く
相談先とつながることが
とてつもなく大切なのです。
5.”不登校離職”という新たな社会課題
ここで今回の記事の1番の軸の話になります。
介護離職
この言葉はみなさん聞いたことがありますよね?
ほとんどの方がイメージできると思います。
ですが、この言葉はどうでしょう。
不登校離職
みなさん、耳慣れない言葉かと思います。
「ん?」となった方もいらっしゃいますよね。
当然です、これは私の造語なので。
私は数多くの親御さん、特にお母さんからご相談を受けて行く中である時、ふと思ったことがあるんです。
「お母さんの休職、退職する率、かなり高くない?」
そう思った私はLINE相談窓口を通してアンケートをとることに。
これまで仕事をテーマにしたアンケートは
2度とっているのですが
今回は2回目のアンケート結果を共有します。
2024年2月にとったアンケート結果です。
どこにも出していないので、本邦初公開です。
※このアンケートは、LINE相談窓口「お母さんのほけんしつ」に登録する約3,500名を対象にとったもので、計376名の方からご回答をいただきました。設問によって回答者数に差はあります。(すべて不登校のお子さんを持つ親御さんで、回答者の98.1%が女性です)ご協力いただいたみなさん、ありがとうございました。
保護者の約7割の仕事に影響
アンケートをとると、退職だけでも2割近くで、休職と合わせると4人に1人という数字になります。遅刻・早退・欠勤が増えたのは約4割で、全体で7割の保護者になんらかの仕事への影響が出ていることがわかります。
子どもの不登校からこれだけ仕事に影響があることを考えると、会社自体への影響もかなりのものだということがわかります。
どうして休職・退職をしたのか理由を問うとこんな回答がありました。(全回答95件のうち5件抜粋)
仕事を続けたい、けど辞めざるを得なかった。
そんな葛藤する気持ちがひしひしと伝わってきます。
約4割の家庭で「収入が減った」
収入減と回答したのは37.8パーセントと約4割にのぼりました。収入がゼロ・ほぼゼロになったと回答したのは1.9パーセントと、数字としては小さく見えますが、家庭の約50に1つが不登校をきっかけに収入がなくなるということを考えると(今回は7つの家庭)、目を背けていい数字ではないことはおわかりいただけるのではないかと思います。
また収入減のご家庭にどのくらい減ったのか聞いてみました。
もちろんそもそも減ること自体が問題ではあるのですが、数字の大きめのところを追っていくと
80,001〜150,000円:18.9%
150,001〜250,000円:10.1%
250,001円〜:6.8%
月の収入が8万円以上減ったご家庭は35.8%にまでのぼり、不登校家庭の3つに1つがこれだけ収入に影響が出ていることがわかりました。これには驚きを隠せません。
また収入減にとどまらず、子どもが不登校になって「支出が増えた」という声もよく聞こえてくるので、具体的に項目を聞いてみました。
他にも「その他」の自由記述では
・公立高校から通信制高校への転学で学費負担増
・ガソリン代(不安症状のため車でしか外出ができなくなった)
・検定試験、病院棟キャンセルすることによるキャンセル費や、再度申し込みに金額がかかる。
・ガソリン代と高速代 まず、近くに適した精神科がなく、片道1時間半かけて思春期外来に通うため。
・食べ物へのこだわりが強くなり、それが少し高めのものでも購入しています。
・昼食代だけではなく、子どもの対応で疲れてしまい夕食が作れず、弁当などを買う機会が増えた
といった声も届きました。
子どもの不登校をキッカケにこれだけ家計への影響があることを、みなさんはご存知でしたか?
おそらく子どもの不登校を経験する親御さんであれば、うんうんと頷きながら読まれていることと思います。
こうした家計の状況もある中で、LINE相談において料金をとるというのは、相談のハードルをかなり上げることでもあるのです。
支出増のイメージを持っていただくために
もう一つ説明を付け加えます。
私たちも運営する「フリースクール」は全国的に増えてきており、月謝の平均は33,000円と言われています。きょうだいで不登校になっているご家庭も多くあることを考えると、33,000円×2人=66,000円の毎月の支出が急に出るようになります。仕事を休みがちになったり退職に追い込まれていたりする状況でこの支出増なんです。子どものためを思うと、本当に悩ましいですよね。
そんな状況での親御さんの心境をイメージしていただけたら、LINE相談で料金をとることが、どれだけ相談のハードルをあげるのか想像にやすいと思います。
実は相談料をいただくこと以外にも、相談のハードルを上げる要因がいくつもあります。
●相談疲れ
子どもが不登校になると、親御さんはさまざまなところに相談にいくようになります。まずは学校へ相談するご家庭が多いです。
でも学校の先生は、学校に来る子の専門家です。
学校に来ない子とどう関わって良いのかについて「わかります!」と自信を持って言える先生は、そうそういないのではないかと思います。
もちろん年に数回程度、不登校についての研修の機会もあるでしょうし、そもそも教員免許を取る際、授業内で不登校や子どものメンタルヘルスについて学ぶ機会もあるかと思います(あってほしいという願いも込めて)。
ですが、どこまでいっても学校の中での業務に割く労力のほうが圧倒的に大きいので、やはり不登校の子への関わり方はノウハウがなかったり、そもそも通常業務で手いっぱいで余裕がないということは明白です。
学校に相談しても解決することはなく、教育委員会に問い合わせても電話口での相談は不可、対面相談の予約も2ヶ月先。小児科医などかかりつけの病院に言っても、不登校に理解のある医師に出会えれば良いのですが、医師の仕事は基本は診察と薬の処方。子どものメンタル、それも学校に行くべきか否か、どう子どもと関わるかといった部分については専門家ではありません。
こうしてさまざまな場所を訪れて相談していく中で、どこからも解決策は示させることはなく親御さんは相談疲れしてしまうのです。そんな状況の親御さんの頭の中に浮かぶのは
●子どもの不登校は親の責任論
これは本当にやめていただきたいのですが、まだまだこの世の中には「うちの子どもが不登校になって」と話を聞いたときに「あなたが甘やかしているからじゃない?」「あなたのしつけがなってないのよ」なんて言葉を直球で返してくる方もいます。
これはママ友間でもありますし、会社内でも、学校の先生からも、親族からも、夫婦間でも起こることです。SNSを見ても、そんなことをよく目にします。
もうほんとにやめてほしい。
それを言って、誰が得するの?
それを言って、「あ、そうだよね。じゃあ私変わるね!私成長する!」とポジティブに受け止めて、新しい自分になれる人がいると思っているの?
ちょっと視点を変えます。
もし友人から
「私、仕事がしんどくてさ。最近行くのが辛くなってきていて、体調も良くないんだよね」
と相談を受けたら
「そんな甘えたこと言ってないでがんばりなよ」
なんて言いますか?
おそらく多くの方が
「どうしたの?」「何か職場で困ったことがあるの?」「もし本当にしんどいなら、休職するとか、転職するとかしてもいいと思うけどどう?」
そんな声をかけますよね。
これが子どもが不登校だとなると、やれ親の責任だ、子どもが甘えているだけだと急に退路を断ち、自己責任論になる。
これはなんなのだろうと私は不思議で仕方がありません。
日本は無宗教だなんて言われますが、あえて言うなら「学校教」に入信している人はほんと多くいると思う。
そしてそのほとんどが無意識に入ってしまっていて、入っていることにすら気づいていません。
話を戻します。
上の相談事例で紹介した通り、親御さんもたくさんの苦悩と葛藤と努力をずーーーーーっとしてきて、やっとの思いであなたに相談しているかもしれない。
それをそうした方の一言が全部ぶち壊してしまうんです。
そんなふうに思わせてしまうことが
より親御さんを孤立させてしまうんです。
周りを頼ろうという気持ちを削ぎ落としてしまうんです。
子どもの唯一のつながりだった親が孤立すれば
当たり前に子どもも孤立します。
親を否定するその言葉は
結果子どもの孤立を生んでいるんです。
かける言葉があるとしたら
そんな言葉です。
相談している親御さんが欲しているのは批判ではなく、理解です。
味方でいてくれる存在です。
ということで長くなりました。
これが、私たちが保護者の方向けのLINE相談を無料で運営する理由です。
できるだけ早く相談にたどり着かないと、事態は刻一刻と複雑化・深刻化し、取り返しのつかないことになる。
→早く相談にたどり着くためには、相談に行くための数多あるハードルを取り除く必要がある
→お金という面は、そもそも不登校離職(収入減・支出増)をする家庭が多くある中で、かなり大きなハードルである
→だから無料で運営している
ざっくりまとめるとこういうことです。
6.借金の理由
ですが
スタッフは無償ボランティアだけで
運営するわけにはいきません。
かなり心に負担がかかる仕事ですし
やはり一定のノウハウは必要です。
覚悟をもって関わる必要があります。
だからスタッフは有給で雇っています。
現在、常に30〜50名ほどの人数から
相談を受けていますが
4名体制で回しています。
そして支援員のバックには
公認心理師であり社会福祉士でもある
アドバイザーがつき、支援体制を整えています。
毎週ケース会議を行い、月1回程度、研修の機会も。
より良い支援をしていくことはもちろんのことながら、こうした機会をつくることで支援者であるスタッフ自身が孤立しないようにしています。
こうしたことを中心に、LINE相談は年間で200〜300万円程度の費用がかかります。
子どもが「死にたい」と言っているという相談は、毎日のように見ます。
ですが、LINE相談をしていると、子どもではなく親御さんが「死にたい」と言うんです。
お母さんが
そんなことを文字に残すんです。
突然重たい話をしますが
不登校から自死を選ぶ子もいます。
普段からフリースクールや相談窓口など
支援に携わる私としては
そんな情報が耳に入るたびに
「私にできることはなかったのか」と
強く、強く思います。
私が過去に関わったご家庭でもそんなことが起きたことが。
言葉にできない、複雑な感情に襲われます。
でももう失ったものを取り戻すことはできない。
できれば抗いたい。
でもこれはまぎれもない事実です。
だから私は「その子が頑張って生きてきた証を、その子が生きていたそのかけがえのない時間を無駄にしないように、今僕らにできることを頑張ろう」と思うようにしました。
そう思うしかありませんでした。
あえてここで説明を入れますが
自死を選ぶ理由は「不登校だから」ではありません。
「不登校であるその子を受け入れる社会の理解(寛容さ)がないから」です。
不登校であっても、他の学び場・居場所に出会うことができたら。
子ども達が学校以外の場に行くことを認める社会の文化があれば。
そんな社会の空気があれば、子ども達は生きることを諦めるまでに追い詰められることはありません。
現在、このLINE相談窓口には行政の支援は一切ありません。
行政内の一定の権限を持つところへ支援をかけあったこともありましたが、全くもってなしのつぶてです。
フリースクールについても同様に、行政からの支援は0です。
シンプルにお金稼ぎだけ考えるのなら、月謝を高くとって運営していけばいい話です。
でも私たちがしたいのはお金稼ぎではありません。
学びやつながりの機会を失ってしまった孤立する子どもたちに、安心できる学びと居場所を届けることです。
月謝を高くとることは、そのまま
経済格差=教育格差につながります。
私たちの目指すものを考えると、その選択はあり得ません。
そうした思いもあり、月謝は最低限に抑え、生活保護家庭やシングル家庭の場合は、免除・減免という形でフリースクールを利用できるようにしています。
ちなみに全国で見るとこうした行政の助成の動きもあります。
・茨城県では、年間100万円程度の助成が各フリースクールへ
・東京都は、各家庭に月々数万円の支援が始まるそう
・茨城県つくば市は、不登校家庭とフリースクールそれぞれに月2万円ずつの助成
・少し前に、市長の「フリースクールは国家の根幹をゆるがす」発言で物議を醸した滋賀県東近江市でも支援が始まると先日発表がありました(市民が声をあげた結果だと思います。社会は変えられるんですね。)
他にも全国を見ていくと、都道府県ではなく市町村単位で助成金を出しているところもちらほら見られます。(ちなみに宇都宮市はゼロです。大事なことなのでもう一度言います。ゼロです。全くありません。議員さんの力も借りて、補助をいただけるように全力で動いています。もちろんこの動きもどこからお金が出るわけでもないので、手弁当です)
LINE相談窓口は現在、個人・団体からのご寄付をいただいたり、民間団体からの助成金をいただいたり。
そうした地道な動きの中で、ご支援をいただき運営しています。
大勢の方にご支援いただき、やっとこのLINE相談窓口は運営できています。みなさん、本当に本当にありがとうございます。
ですが、全てを賄えているわけではありませんし、LINE相談に限らず、生活保護家庭(子どもが不登校)への支援や、緊急的な対応で手が必要になることもありますし、法人もだんだん大きくなってくる中で事務局運営についてはそもそも収入も何もあったものではないので、やはり組織全体で見ると支出のほうが大きいのが現実です。
そうした状況のために、800万円という借金をして、現在活動に取り組んでいます。
7.何を目指しているのか
ここまで課題についてずっと綴ってきました。
読んでいて疲れた方もいらっしゃると思います。
なんだかネガティブな情報ばかりで
気が滅入った方もいるかもしれません。
すみません。
ただこうした課題背景があっての私たちの今の取り組みであることをご理解いただければと思い、こうして丁寧に説明させていただきました。
ここで流れを変えて、LINE相談を利用する方から届いた嬉しい声の数々を掲載します。
ついつい、たくさん載せてしまいました。
たくさんの方のご支援・応援のおかげで、こんなにも多くの親御さんが笑顔になれているということが伝われば嬉しいです。
同時に、どれだけの親御さんが孤立し、ひとりで課題を抱え込んでいるかも感じていただけたでしょうか。
私たちが目指す社会は
ひとりにならない社会
です。
こと不登校という分野においては
子どもも親も孤立しやすい
今の社会があります。
その大きな要因の1つに
子どものトラブルは親の責任
というある種の自子(自己)責任論があると思っています。
核家族化が進み、当たり前のように家にいた
頼れる家族は減りました。
地域の人間関係の希薄化も進み
子どもにかける大人の目と手が減りました。
共働き世帯が増加し
シングル家庭も増加しています。
親が子どもに手をかけられる時間は
昔に比べてかなり減りました。
そもそもシングル家庭であれば
ゆっくりお茶する時間すら
取れないことも”普通”なのです。
子どもは困った時に声をあげずらくなりました。
「困ってるの」「助けて」と
声をかける相手もそもそも少ない上に
目の前にいる大人も忙しそうにしています。
困ったときに子どもの頭に浮かぶのは
そうした思考が癖になっていきます。
そうすると問題が起きても
誰にも相談できず
時間が経って気づいた時には
事が大きくなっていることも。
家の中では子どもは親に
「なんで言わなかったの!」
「どうして隠すの!」と叱られ
家族以外も巻き込んだ事柄の場合には
誰に責任の目が向くかというと
やはり親です。
子どもは頼れる相手がおらず
親も余裕がなくいっぱいいっぱい。
ではどうすればこの状況を打破できるのか。
それは
地域で子育てをしていくことです。
子どもが何か困ったとき
親が話をじっくり聞くことができたら
それでも良いと思います。
でも忙しくてそうそうゆっくり時間をとって
話をすることができないこともあるはずです。
そしたら隣の家でお茶しながら、話を聞いてくれるおじちゃんおばちゃんがいたらいいんです。
お兄さんお姉さんでもいいです。
別に話を聞くプロじゃなくていいんです。
ふとした時に「あ、あの人に話してみようかな」
そう思える誰かが身近にいることが大切です。
子どもが「学校に行きたくない」と
朝、突然泣き出したとき。
父親はすでに出勤している。
母親である私もこれから仕事だけどどうしよう。
そんな時、近所の田中さんの家に行き
「すみません、今日子どもがぐずってしまって。夕方まで預かってもらえませんか?」
そんなことができれば、だいぶ親も安心ですよね。
出勤し、仕事に集中して取り組む。
帰ってきてからご飯を食べながら
「どうしたの?」とゆっくり話を聞くことができます。
私は、学校に行かないことは一切問題だとは思いません。
学校に行かなかったとしても
例えば、学習塾で学んだり
フリースクールや子ども食堂で人とつながったり
学習以外のことは地域のクラブや習い事に取り組んだり。
学校の機能は他で代替することが可能なはずです。
学校に行かないことが問題なのではありません。
学校以外の選択肢を認めない社会の空気に問題があるんです。
例えば、教育だって地域で担うことができます。
フリースクールや寺子屋のような
小さな学び屋がいくつもあれば
それで十分に学びを続けることができます。
もしかしたら未来には
「今日は田中さんの家行ってくるね〜」
「今日は小林さんの家に行ってくる!」
と、曜日によって学び場が変わることも
出てくるかもしれない。
いえ、確実にそうなります。
自分で学び場が選べる未来が必ずきます。
夢物語だと言われる方もいらっしゃるかもしれません。
今はまだそうです。
今の日本社会の教育を見れば
まだまだ遠い夢物語かもしれません。
でも全国で不登校の小中高校生は約36万人。
病欠やその他の理由があり
長期休みをしている子の人数も含めると
なんと約50万人にまでのぼります。
もっとわかりやすく伝えると
中学生は17人に1人が不登校です。
つまりクラスの中に1〜2人はいるんです。
不登校の子の人数は10年連続で増加しており
今後も減る見込みはありません。
学校の中でも、精神面を理由に休職する教員は過去最多です。
学校ももう手いっぱいな状態なんです。
今後、教育というものが地域に開かれていくのは確実です。
いずれ、小学校入学時点で、学校に行くのか、フリースクールに行くのか、家で学ぶのか、それとも〇〇さんの家で学ぶのか、そんなことを選べる時代がやってきます。
でも私はこれは良いことだと思っています。
何より子どもにとって。
だって親や先生以外にも
たくさんの大人とつながっているんです。
たくさんの出入りできる場所があるんです。
つまりそれは困った時に
自分の居場所を選べるということ。
困った時に「助けて」と言える相手がいるということ。
学校がしんどいなと思ったら
家がしんどいなと思ったら
他に行ける場所があるんです。
そこで休息をとって
元気がたまってきたら
またチャレンジできます。
学び場と遊び場と休息の場を
自分で選べるようになること。
がんばることと休むことを
自分の意思で選べるようになること。
そしてそれを許してくれる
それを見守ってくれる大人が
身近にいるということ。
この”不登校の増加”という事象は
そうした未来をつくるきっかけになると思っています。
でもまだその社会は整備されていない。
だからまだまだ子どもも親もしんどい思いをしている。
孤立してしまっている。
子どもは
と、自分を受け入れられず、でも生きるためにもがいています。
親御さんは
と、ぐっと涙をこらえて、「子どものために」となんとか踏ん張っています。
まだまだ不登校を受け入れられない社会の不寛容さがあります。
間違えた理解が蔓延しています。
だから私たちは、そうした親子が安心して過ごせるように、笑顔で食卓を囲める日が来るように、全力で事業を進めています。
フリースクールにいる子どもたちは、本当に素敵な笑顔を見せてくれます。
親御さんも、学校の先生も「こんな笑顔、久々に見ました」と驚いてくれます。
100人いれば100通りの背景を持ちます。
それぞれ違った性格を持ち、価値観を持ち、好き・嫌い、得手・不得手があります。
でも彼らはみんな同じように求めているものがあります。
”今この瞬間”に集中できる環境です。
どんな自分であっても認められる
安心して自分を表現できる場です。
評価されない
制限されない
自分が自分でいられる
そんな場を必要としています。
私は悔しいです。
まだ生まれて10年15年の子どもたちが
自分の人生を諦めなければいけないこの社会が。
「どうせ自分は」と自分の可能性に蓋をさせてしまうこの社会が。
子どもが子どもらしく笑って過ごすことのできないこの社会が。
だから子ども達を全力で守っていきたいし、それを頑張って支える親御さんも全力で支えていきたいです。いえ、支えていきます。
借金を抱えながらも、今の取り組みをする理由
伝わっていれば幸いです。
これを読んでいる方で、お子さんの不登校・行き渋りに悩んでいる方はこちらから無料LINE相談につながってください。
ぜひみなさんの力を貸してください。
ここでみなさんにご案内をさせてください。
私たちは普段の運営費として「寄付」を1つの財源として大切に考えています。
「寄付って安定しないよね? 事業ちゃんと継続できるの?」
そんなことを思う方もいらっしゃると思います。
ですが、例えば毎月1,000円の寄付者が100名いたら?
1,000円×100名=10万円
この金額が毎月入るようになります。
企業からの単発100万円の寄付や、個人の方からの10万20万円の単発大口でのご寄付ももちろんありがたいです。
みなさんの寄付のイメージってそういうものかもしれません。
ですが上で述べたように
1,000円2,000円といった金額を
大勢の方から毎月ご支援いただけたら?
企業などの大口の寄付は、その支援者(企業)の財政状況によって、ご支援いただける時とそうでない時が出るリスクがあります。
経営的な視点で言うと、やはり安定して入ってくる収入がある、というのがとても大きな価値を持ちます。
そうした意味で、私たちは毎月のご支援(マンスリーサポーター)を募集しています。
2024年3月1日時点で107名のサポーターがいます。
みなさん、いつもありがとうございます。
それにより現在は毎月10万円程度の寄付収入があり
安定した収入として見込んで
事業に取り組むことができます。
ぜひみなさんもマンスリーサポーターになっていただけませんか?
毎月500円(コーヒー1杯分)からご支援が可能です。
ぜひご検討いただけますと幸いです。
もちろん単発の寄付も大歓迎です。
ぜひみなさんのお力をお貸しください。
ご支援よろしくお願いします。
また、SNS等での拡散も大大大募集中です。
ご支援・拡散の際は下のページをお願いします。
▼ご支援はこちらから↓
上のサイト上でのご支援の仕方がわからない方は
口座振込も対応しています。
その場合はこちらの口座へお振込をお願いいたします。
何か寄付についてご質問などある方は、こちらまでご連絡ください。
080-1853-6296
過去には、ジャーナリストの堀潤さんよりインタビューを受けたこともあります。
「実際、親はどんなことに悩んでいるの?」
「もし子どもが不登校になったときはどうすればいいの?」
そんなことが気になる方は、ぜひ普段発信しているYouTubeチャンネルをご覧ください。
書いていたらつい長くなってしまいました。
もう4時間近くパソコンに文字を打ち込んでいます。
思いを込めて書いた渾身の記事です。
最後まで読んでくださった方、ありがとうございます。
本当に感謝しています。
みなさんの今日1日が安心で満たされた日になりますように。
最後に、過去に書いた記事をいくつか共有させていただきます。よろしければご覧になってみてください。